岡山畜産便り97年2月号 管内における和牛子牛の生産現況と繁殖管理について

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「ひろば」

「管内における和牛子牛の生産現況と繁殖管理について」

真庭家畜保健衛生所 池 田 克 美

 真庭郡内の和牛子牛生産状況は表に示したとおりです。生産基盤である繁殖農家戸数,繁殖成牛頭数は平成5〜7年頃に比べれば年間減少率こそやや鈍化していますが毎年確実に減少しています。なかでも農家戸数は最近5年間で半減し平成8年8月調査で331戸となり,繁殖成牛頭数も1,000頭となっています。これに伴い真庭郡からの子牛市場出荷頭数も平成7年度896頭にまで減少しています。繁殖牛の減少による子牛生産頭数の減少はやむを得ないとしても,繁殖牛頭数に対する子牛出荷割合(便宣上次式で算出:翌年度子牛上場頭数/繁殖成牛頭数)が平成4年以前の約80%から70%近くまで下がっており,子牛生産率の低下も懸念される状況となっています。子牛生産率の低下を防ぎ,限られた繁殖牛からより多くの子牛を生産するために和牛繁殖牛の飼養管理上の留意点を幾つか挙げてみたいと思います。

@ 飼料給与,栄養状態態等
 育成牛,成牛とも給与飼料は粗飼料主体として少し痩せ気味にみえるくらいの栄養状態が良く,痩せすぎ,太りすぎに注意してください。特に過肥牛には繁殖障害の発生率が高いとされているので要注意です。また,育成期に過度の発育をさせると生涯生産頭数が減少するが逆に育成期の多少の発育の遅れは生涯生産頭数に影響しないと言われていますので育成牛の発育は押さえ気味の方がよく,特に肥りすぎに注意が必要です。

A 分娩前後の管理
 発情回帰を早め,良い発情をさせるためには妊娠末期,授乳期の増し飼い,制限ほ乳,早期離乳等が効果があります。また,分娩後の運動は子宮回復を促進する効果があります。

B 空胎期間の短縮対策
 分娩後2ヵ月経過しても発情しない場合は放置しないで獣医師の診療を受けるようにする事,また,人工受精後2ヵ月以内に必ず妊娠鑑定を行い受胎を確認する事が大切です。人工受精のあと発情が来ないので妊娠したと思いこみ分娩予定日近くになって空胎に気づくという例も案外多いようです。
 また,最近では発情微候の微弱,不明瞭な牛に対し針,お灸などの利用も行われています。
 以上,真庭家保管内の和牛子牛生産の現況と繁殖管理上の基本事項について概略を述べましたが,子牛生産の減少が続くなか,繁殖管理を見直し少しでも多くの子牛生産に努めて頂きたいと思います。
表 和牛繁殖農家戸数・頭数及び子牛市場上場頭数
(真庭郡)
                     (単位:戸,頭,%)
区   分 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8
戸    数 732 670 609 548 445 371 331
対前年比 93.7 91.5 90.9 90.0 81.2 83.4 89.2
成牛頭数 1,643 1,656 1,575 1,459 1,233 1,044 1,000
対前年比 98.6 100.8 95.1 92.6 84.5 84.7 95.8
子牛上場頭数 1,363 1,394 1,357 1,254 1,051 896 -
対前年比 102.1 102.3 97.3 92.4 83.8 85.3 -
子牛出荷割合 84.8 81.9 79.6 72.0 72.7 - -
(参考)
久世市場合計
子牛上場頭数
対前年比


5,797
101.6


5,737
99.0


5,501
98.9


5,022
91.3


4,351
86.6


3,782
86.9

-
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(注)
* 戸数・頭数は家保調べ、上場頭数は経済連調べ
* 子牛出荷割合は次式により算出:子牛出荷割合=翌年度子牛上場頭数/成牛頭数