岡山畜産便り97年3月号 烏骨鶏の薬膳料理

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烏骨鶏の薬膳料理

総合畜産センター 三 浦 まどか

はじめに
 健康ブームを背景に烏骨鶏の人気が高まっており,岡山県内でも現在約4,000羽が飼育されております。
 烏骨鶏の卵は高血圧,糖尿病等によいとされ,高価な額で流通していますが,久米郡旭町では平成7年より商工会を中心として「旭町ウコッケイの里」づくりに取り組んでおり,酢卵セット(烏骨鶏卵,酢)を地域特産物として同年9月より販売しています。
 しかし,烏骨鶏は年間60〜100個程度しか卵を産みません。また,中国・韓国で珍重されている骨・肉は,日本ではほとんど普及していません。このためオスは淘汰の対象となっており,飼育には経済的に多くの問題があります。そこで,総合畜産センターでは,平成6年度から産卵率の調査,卵質・肉質の検査などを行ってきました。現在は,産卵率の向上,肉用鶏としての肥育技術の確立をテーマに,産卵率の高い個体の選抜,オスの肥育効果などの研究を続けています。
 この先も,烏骨鶏の需要は緩やかに増え続けると思われます。そこで今回,この鳥の特徴および卵・肉の調理法を紹介します。

烏骨鶏とは
 原産地はインド,インドシナとするものから,中国江西省とするものまで様々で,詳しいことは不明ですが,中国では古くから唯一の薬用鶏として飼育されています。日本には江戸時代の初期に中国から渡来し,主に愛玩鶏として飼育されてきました。
 外観上の特徴としては,美しい絹糸状の羽毛で覆われており,白色種と黒色種の2種がいます。頭部には暗紫色のクルミ冠,その後方には豊かな毛冠を持ち,耳朶は透き通るような藍色を呈しています。くちばし・脚は鉛色を呈し,足の指は5〜8本と多趾で,脛は絹糸状の脚毛で覆われています。また,「烏骨鶏」という名前が示すとおり,皮膚・骨は黒色で,筋肉も黒みを帯びており,これは全身の結合組織にメラニン顆粒を貯えた色素細胞が多数存在するためです。体重は1s前後と小型で,大きすぎないものがよいとされています。

烏骨鶏の薬効
 多くの漢方薬がそうであるように,烏骨鶏がどういう薬用成分を持つのかは明らかにされていませんが,中国の古い薬学書によると体のほどんどすべてに薬効があるとされています。事実,中国には烏骨鶏の肉・血・骨・内臓・卵・羽毛等すべてを使った漢方薬「烏鶏白鳳丸」があり,これは,滋養強壮,不妊症によいとされています。さらに最近では,その免疫作用・抗癌作用が注目され,漢方薬の中でも最高の傑作とされています。
 日本では薬として扱われていませんが,卵を使った酢卵は成人病に効果があるといわれ,普及しつつあります。また,中国・韓国では薬としてだけではなく肉や骨が薬膳料理として利用されており,古い伝統があります。その文化の基本には医食同源という考え方があり,食べることによって病気を予防し,かつ,若さを維持しようとしているわけです。

烏骨鶏を使った薬膳料理
【烏骨鶏湯】

 韓国の代表的鶏料理,烏骨鶏の『参鶏湯』。強壮・鎮静作用により,疲労回復,不眠症の改善に効果がある。また新陳代謝を高めるため,冷え症の人にも最適。
〈材 料〉
烏骨鶏1羽,薬用人参1本,もち米1/2カップ(洗って水を切っておく),生姜1片,長ネギ1本,ニンニク5粒,なつめ・松の実・栗各100g,清酒(または焼酎)1/2カップ
〈作り方〉
 烏骨鶏の中抜きと体をきれいに処理し,もち米と適当な大きさに切った材料をすべてお腹の中に詰め,たこ糸で切り口を縫う。鍋に約2リットルの水と清酒を加え,初めは強火,沸騰したらとろ火にして,アクを丁寧に取りながら肉と骨が離れるまで数時間煮る。塩・醤油・コショウをほんの少量加えて味を調える。
【鍋焼烏鶏翅】
 烏骨鶏を使った唐揚げ。滋養強壮,健胃整腸作用がある。
〈材 料〉
烏骨鶏1羽,ネギ・生姜少量,丁香・甘草・八角・桂皮・白シ・三艾各8g,醤油2.5カップ,砂糖大さじ8,落花生油少々
〈作り方〉
 烏骨鶏を解体処理し,熱湯を通してアクを取る。鍋に約1.3リットルの水を注ぎ,沸騰したらネギ,生姜を加え,薬草は布袋に入れて煮出す。醤油,砂糖を加えて味を調え,その中に烏骨鶏肉を入れて30分ほど煮て味を含ませ,取り出す。水分を取った後,きつね色になるまで油で揚げる。
【木犀湯】
 滋養強壮,咳止め・せんそく発作の緩和に効果のあるスープ。
〈材 料〉
烏骨鶏の卵2個,ネギ5センチ,キクラゲ(水に戻したもの)30g,生姜3片,醤油大さじ1
〈作り方〉
 卵を油で炒めておく。ネギは小口切り,生姜はみじん切りにして中華鍋できつね色になるまで炒める。醤油を流し込み,卵とキクラゲを加えてさっと炒め,水を適量入れて沸騰したら水溶き片栗粉を加えてややとろみをつける。
○酢卵の作り方
 食用酢1合を広口ビンに注ぎ,よく洗った烏骨鶏卵1個を殻のまま静かに浸します。2〜3日すると卵殻が溶け,卵は薄皮だけに包まれた状態になります。薄皮を箸で取り除いてよくかき混ぜ,これを5〜7日で飲みます。そのままで飲みにくい場合は水で薄め,ハチミツを加えると飲みやすくなります。

 今回紹介した以外にも様々な調理法があり,薬膳料理でなくてもふつうの鶏肉と同様に調理してみるとよいでしょう。烏骨鶏の肉は黒みを帯びているため,外見では抵抗があるものの,歯ごたえがよく,こくがあります。畜産センターで行った官能検査においても大部分のパネラーがおいしいと答えました。特に烏骨鶏のガラでとったスープは和風・洋風いずれの料理に用いてもおいしく召し上がれますのでお勧めできます。

まとめ
 今後,畜産センターでは,烏骨鶏の卵,肉のアミノ酸・脂肪酸などの成分を分析することによって,その特徴を明らかにし,薬効成分の科学的解明を目指すとともに,卵だけでなく肉の利用も普及させていきたいと考えています。

参考文献
 「神秘の鳥 烏骨鶏のすべて」
      深尾 正俊著 三水社