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「特集」

環境保全型畜産経営を目指して(畜舎での悪臭対策)

農林部畜産課

 近年,畜産経営の規模拡大と畜産農家の減少,さらには農村地域の都市化,混住化が拡大するなか,悪臭,水質汚濁等に対する畜産環境対策を抜きにしては,畜産の健全な発展はあり得ません。そして畜産環境問題の根幹は,家畜ふん尿の適切な処理にあることはいうまでもありません。家畜ふん尿処理法は,各種の方式が考案され,それぞれの地域で実績を上げています。しかし,飼育管理条件,自然条件,社会的条件が多種多様であり,それらを総合的に判断して,各個の経営体に合った家畜ふん尿処理体系を取り入れなければなりません。
 畜舎内では,家畜からふん尿が常時排泄され,不適切なふん尿処理により悪臭が発生します。臭気が発生すれば,衛生害虫なども発生しやすく,ますます非衛生的な環境となり,悪循環に陥ります。このような状態では,家畜に対して,生産性低下,生産物の品質低下等の悪影響を及ぼすことは勿論のこと,作業を行う人に対してもその影響が大きく,畜産環境保全の第1歩は畜舎環境整備にあるといえます。
 悪臭の原因となる臭気の主な発生場所は,畜舎,ふん尿処理施設,通路や放牧場等があげられ,特に,牛,鶏ではアンモニアの発生が多く,豚では低級脂肪酸がよく発生します。また,ふん尿に水分や温度の上昇が加われば,急速に臭気が発生するので注意が必要となります。
 畜舎内の悪臭発生の抑制対策は次のとおりです。

ア ふん尿分離の徹底
 排泄直後の家畜ふん中の窒素は,ほとんどが蛋白質の形で存在し,臭気の発生には相当の時間を必要とします。また,尿についても無臭の尿素の形で存在するため,悪臭はほとんど問題になりません。しかし,ふんと尿が混合されると,ふん中のウレアーゼにより尿素が分解され,さらに,ふん中の微生物による分解を受け,急速に臭気が発生します。これらのことから,バーンクリーナー,スクレパーなどにより早期にふん尿分離を徹底する必要があります。

イ 除ふんと清掃の励行
 ふん尿の搬出が遅れると,畜舎内でふん中蛋白質等が分解され,硫黄化合物や低級脂肪酸が発生し,これらの臭気は微量でも強い悪臭として感知されます。このことから,新鮮ふん尿早期分離とふん尿処理施設への早期搬出を徹底する必要があり,さらに清掃の徹底を図ることにより,臭気の低減が期待できます。

ウ 敷料による臭気成分の吸着
 畜房への敷料使用は家畜に快適な居住性を提供するとともに,ふん尿中の水分を吸着してふん尿処理を容易にし,さらに臭気成分の発生を抑制する等の効果があります。

エ 乾燥,換気の促進
 給水器からのこぼれ水や雨水などの混入は,畜舎内環境を悪化させるばかりでなく,ふん尿中の水分含量を増加させます。この結果として,ふん尿の嫌気的発酵が促進され,硫黄系化合物等のいやな悪臭が発生しやすくなります。そこで,ウェットフィーダーやニップルドリンカーを利用して,こぼれ水の防止に努める必要があります。ウェットフィーダーを用いれば,粉塵の防止にも効果があり,飼育環境の改善にもつながります。
 また,畜舎内の通風,換気をよくして,臭気の滞留を防ぎ,畜舎内の乾燥を促進することも重要です。通風,換気の促進には,各種の送風ダクトやファンが用いられていますが,中にはふんの乾燥を主目的としたケージファンなどもあり,特に,豚,鶏に対して有効です。

オ 臭気の拡散防止
 排水溝や貯留漕等密閉できる部分は密閉し,臭気の拡散防止を図ることが必要です。また,畜舎周囲にサザンカ等を植裁することは,周囲美化に加えて,樹木の悪臭成分吸着作用により,悪臭拡散防止効果も期待できます。

 以上,畜舎内での悪臭発生の基本的抑制対策を述べましたが,環境保全の第一歩は畜舎内の整理整頓でありますので,今一度畜舎内をチェックし改善すべきところは改善して,地域住民から理解される環境保全型畜産を目標としなければなりません。