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〔畜産センター便り〕

肉質向上と低コスト肥育技術

岡山県総合畜産センター     
大家畜部 部長 塚 本 章 夫

 外見は同じようでも枝肉品質の等級が一つ違うだけで数十万円もの差がつくのが肉牛です。特に和牛の場合,その差は大きく,枝肉格付け等級の高い,すなわち,4等級以上に格付けされる肉牛の出荷割合をいかに高めるかが,儲かる経営の最大のポイントと言われています。また,4等級以上率はどうしたら高くできるか,肉牛肥育農家にとって最大の関心事で,素牛の血統,エサ,飼い方から空気,水なども含めた環境条件など,様々な要因の中で血統とエサが重視されているのが現状です。牛が管理する人に伝えるシグナルをきちんとキャッチしたり,エサの微妙な調整にはキャリアや勘が重要なのは確かですが,肉牛にも「統計的手法」が導入され,誰もが理解しやすく,納得できる飼育法や経営管理法,さらに選び方が普及し,その成果も目に見えて出てくるようになっています。
 肉質改善での「統計的手法」は次のことがあります。
 育種価,枝肉情報から導き出された,父牛や母牛の遺伝的能力を示す,このデータ(育種価)は繁殖はもちろん肥育農家にとっても非常に重要な指標となっています。しかし,育種価,枝肉情報から導き出された優秀な情報も,飼育者が,この優秀な情報を導き出す飼養管理と産肉性について理解した管理を実施することが重要なことです。
 そこで,当センターで開発した「まきば飼料」での,試験及び実証試験から肉質向上と低コストについての成績を得ましたので紹介します。

1.濃厚飼料の構成と組成
  各肥育期毎に7種類の単味飼料を調整し配合します。(表1)

表1.濃厚飼料の構成と組成

 
育成期
肥育前期
肥育後期
仕上期
穀類

21.7

43.4

62.2

80.4

そうこう類

72.1

47.8

34.5

16.3

植物性油脂

6.0

8.2

2.7

2.3

動物性飼料

0.1

0.3

0.3

0.7

その他

0.1

0.3

0.3

0.3

DCP

12.8

12.1

9.8

9.0

TDN

67.7

71.1

74.4

75.6

2.肥育牛への飼料給与
  導入1週間程度を馴致期間とし,その後,肥育期を育成期(84日間),肥育前期(112日間),肥育後期(140日間),仕上げ期(204日間)に設定し,全肥育日数540日間の18カ月間とします。
  濃厚飼料は,フスマ,麦等の安い飼料を基本にし,粗飼料は,育成期,肥育前期に十分に喰い込ませること,肥育後期を重点にした飼料給与量です。(表2)

表2.肥育牛の飼料給与量 (日・kg)

区分
育成期
前期
後期
仕上期
全期間
84
112
140
204
540
濃厚飼料 392 770 1,334 1,868

4,374

稲ワラ 112 140 151 143

546

乾草 168 168    

336

3.目標増体重の設定
  目標1日当たり増体重(以下,DG)は,早くからDGが高くなり,以後,急激に下降する場合,また,緩やかに上昇するが,仕上げ期で,下降しない場合等は,枝肉格付け成績が低くなっているため,目標DGを育成期0.76s,肥育前期0.88s,肥育後期0.96s,仕上げ期0.68sと肥育後期を最大になるよう管理します。(表3,表4)

表3.目標1日当たりの増体重(DG)(月齢、kg)

 
開始時
育成期
前期
後期
仕上期
月齢 8.5 〜11.3 〜15.0 〜19.7 〜27.0
DG   0.76   0.88   0.96   0.68    

表4.1日当たりの増体重(試験成績)(kg)

区分 通算DG
26ヵ月齢仕上げ(試験) 0.77±0.05
28ヵ月齢仕上げ(試験) 0.79±0.05
28ヵ月齢仕上げ(実証) 0.70±0.10

4.肉質成績
  試験牛10頭,上物率80.0%,実証牛43頭,上物率58.1%で,実証牛と同時期に出荷された一般牛127頭の上物率25.2%に比較して高い値です。

表5.肉質成績(kg,cm2,cm,%)

区分 枝肉重量 ローズ芯 皮下脂肪厚 BMSNO 上物率
試験 430.5 57.6 1.9 6.6 80
±32.7 ±5.3 ±0.6 ±1.4
実証 422.2 50.5 2.2 5.1 58.1
±39.7 ±7.3 ±0.7 ±2.2
一般 416.9 48.8 2.4 4.2 25.2
±51.3 ±7.5 ±0.7 ±1.8

5.飼料費
  飼料費は,基礎飼料を配合し購入した場合は,濃厚飼料で,189,963円,単味飼料を購入して,自家配合した場合,141,805円,実証試験を基準にして比較すると,20%程度の低減ができます。(表6)

表6.飼料費(日,kg,円,%)

  肥育日数 飼料 給与量 金額
自家配合

593

濃厚飼料 4,787 141,805
稲わら 626 31,300
乾草 322 9,660
    182,766
実証配合

583

濃厚飼料 4,759 189,963
稲わら 576 28,800
乾草 336 10,080
    228,843

まとめ
 厳しい枝肉価格競争にうち勝つ技術を要求されるなかで,飼育試験,更に実証試験を実施した結果,管理についてはまず第1に,生後15カ月齢頃までの,育成期・肥育前期は,十分に粗飼料を喰い込ませること,第2に1日当たりのDGは,緩やかに上昇させ,生後16カ月齢から20カ月齢の肥育後期に最高とし,その後の,仕上げ期は緩やかに下降させる発育パターンにより脂肪交雑の向上,胸最長筋面積の増大及び皮下脂肪の薄い成績を得ています。
 また,低コスト生産では,フスマ,麦等の安い飼料を基本にした配合飼料の給与により低コスト化が実現可能と思われます。