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〔声〕

「現代を生き残る大作戦」

水島酪農農業協同組合

組合長 千 田   宏

 昭和26年2月に誕生した水島酪農農業協同組合も今年47年目を迎え4代目の組合長として,平成9年5月に就任いたしました。
 当組合も時代の流れには勝てず,多い時には300余名も居た組合員が,今では30名余りと,10分の1となっております。
 周囲の状況の厳しい中を生き残る作戦を,人工授精師を職業として40年ほど続けてきた私の目を通して,見たり,聞いたり,読んだりして頭に入れたことを書き綴りたいと思います。もし納得できれば実行してほしい,納得できない人は,一酪農家の戯れ言と,見逃していただきたい。

 ◎一頭当たりの乳量を1万sにする。
 ◎経産牛の産次数を5産以上にする。


 現在の,乳牛の泌乳能力はかなりの力があると思って間違いはない。ただその能力を引き出す経営者自身の能力と言うか,技術とか意識が7〜8000sのまま進歩していない人がほとんどである。この能力を1〜1.3万sに変えることが出来れば,搾乳量は一気に増加することでしょう。この意識改革の中に,乳牛は草食動物であるということを忘れないこと。取りあえず胃袋の中を餌で満杯にしてやり,2時間ぐらいの間隔で餌をほしがるので,喰べられるものが常時有るようにすること。能力の有る牛には,餌の中身を能力に応じて濃厚にしてやればよい。
 次は実行についてですが分娩直後から2回搾乳をしている農家が多い。目一杯張り切った乳房の内圧は血圧以上にはならない。当然ここで牛乳の生産は止まるし,ストレスが溜まり食欲が落ちる。これを防ぐには搾乳回数を増やすという簡単なことで解決する。
 餌給与に関しては,次回の受胎にも影響するので非常に重要なことです。リードフィーディングもなしで,急に濃厚資料の増給や,逆にいつまでも不足のままでもだめ,この飼養方法が多くの農家に見られる。餌不足は乳も出ないし,支給の回復が遅れる。
 TDNが不足すると,脂肪肝,ケトージスの要因となる。DCPが不足すると蹄は蛋白質で出来ている関係から足が悪くなる。逆に餌が多い場合は,分娩後のオリモノが鮮血に近い赤色となり,この状態を続けると乳量は多いが,子宮壁肥厚,子宮内膜炎の元となる。せいぜいピンク色までで透明なら最高です。リードフィーディングを含めた分娩前後の飼養管理を完全に自分のものにすることです。
 最近ルーサン乾草を与える人が多くなってきましたが,分娩直後のルーサン乾草の給与には注意してほしい。濃厚飼料にも匹敵する力があるので様子を見ながら増やしてほしい。
 ビタミン剤投与にも一言。これも最近投与量が増えてきているが,定期的に与えるものなので分娩直後の投与はひかえた方が良い。痩せた牛ではほとんど問題はないが,肥えた牛では心臓壁にカルシウムが沈着し,呼吸困難とか起立不能の原因となることがある。以上のことは分娩直後の飼養管理です。
 人工授精で農家を回って見て,直腸検査の結果で,餌が不足しているかなと思える農家では,「充分与えているのにまだ不足か」と言われる。逆に少々餌を減らした方が良いと思える家では「そんなには与えていない」と言われることが多い。このような農家の考え方が今ひとつ良くわからない。
 長々と思いのまま書いてみましたが,自分の仕事量限界の頭数よりも少し減らして,分娩後の60日は3回搾乳をして,乳量及び糞の状態は1頭ごとのチェックを忘れず,十分に目のとどく管理をしてほしい。F1の生産だけでなく,自家産牛を共進会に出品するような余裕を持った経営をしたいものです。