ホーム岡山畜産便り > 岡山畜産便り1997年8月号 > 岡山南部家畜診療所紹介

〔共済連便り〕

「岡山南部家畜診療所紹介」

岡山南部家畜診療所  
所長 小 崎 直 一

 “今年の夏は冷夏になるでしょう”という長期予報はどうなったのか,7月初旬の梅雨時期だというのに,このところ暑い日が続いている。昨日は一日四頭の乳牛が廃用となった。そして,今日も廃用予備軍と格闘中である。
 岡山南部家畜診療所は,夏の猛暑時“10日連続で35度超える”という見出しと共に“乳牛搾乳量5%減,熱射病のため乳牛○頭死ぬ,農家の対策「焼け石に水」”と紹介される県南の旭東地区,岡山市西大寺を拠点として,藤田,小串,上道,邑久郡,玉野市,灘崎町,そして,東備振興局の家畜診療ならびに損害防止に当っている。
 平成8年度の家畜共済加入状況は,乳用牛156戸,4,669頭,肉用牛20件203頭でした。
 家畜診療は,獣医師7名で365日24時間体制で対応しており診療件数の98.7%が乳牛の診療となっている。乳牛の診療件数は4,947件で加入頭数に対する割合は106.0%となっている。
 その内訳は,繁殖障害でおきかえられる生殖器病28.6%,乳房炎が主となる泌乳器病20.8%,第四胃変位を含む消化器病15.6%,関節炎で代表される運動器病11.2%,難産,ダウナー症候群(産前産後起立不能症)を含む妊娠,分娩,産後の疾病10.0%,ケトージスで代表される代謝疾患5.3%,呼吸器病3.8%となっている。
 乳牛の死亡廃用事故は395頭で加入頭数に対する割合は8.5%となっている。内訳はダウナー症候群62頭,関節炎50頭,熱射病41頭,第四胃変位33頭となっており死廃事故の上位を占める疾患には暑熱の影響が大である。
 家畜診療は管内を6地区に分けて,地区ごとに担当獣医師を置いている。第四胃変位等の手術時は2名1組で事に当っている。昨今の畜産状勢の厳しい中,牛の更新も円滑にいかない現在,家畜診療へのニーズは高まっており,診療を通じて酪農経営に貢献していると自負している。
 損害防止は,特定損害防止事業のほかに,連合会および各組合等が行う一般損害防止事業を行って,死廃事故低減に努めている。
 従来から事故多発農家の個別指導を実施し,特に,乳牛の関節炎による廃用事故を減少させるため,関節炎防遏パトロールにより,関節炎の早期摘発,早期治療,削蹄指導を実施している。
 また,管内で削蹄をされる削蹄師の方々とも互いに連絡をとりあい,蹄病処置を主とした蹄病治療を行っている。
 冒頭に述べたとおり,当地の夏期の暑さは格別であり,暑熱による損耗について警鐘を鳴らすのも重要な指導となっている。人医界でも,暑さによる,老人の死亡率の高さが話題になっている今日,乳牛飼養も暑熱対策抜きには語れない。
 平成9年度,家畜診療所として繁殖パトロールを強化したいと考えている。繁殖障害は担当獣医師により個々に検診が行なわれていたが,各農家を定期的に巡回し,繁殖台帳の再整備等,乳牛の生産性を向上させ経営安定に寄与したい。
 この原稿が掲載されるころには,予報どおりの冷夏になっているだろうか,エルニーニョ現象は農作物等に多大な被害を及ぼすというが,乳牛にとっては,まさに天然のクーラーとなる。牛乳の消費も暑さに左右されるが防暑対策さえ万全なら暑熱もまた心地よいのだが。