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〔声〕

「今思うこと」

浅口郡里庄町 酪農家 平 野 耕 平

 今日,国際競争が求められる中,厳しさを増す酪農。収益性の維持・拡大を図るための方法として「大規模化」「高泌乳牛群保持」へのレールばかりが目を向けられています。
 大規模化は,資金力・労力・牛の管理能力・ふん尿処理対策・等々,これら全てをクリアーしてはじめて成り立ちます。クリアーできるすばらしい方々もおられますが,この壁を乗り越えられず断念する者,大規模化に魅力を感じない者もいます。従来の低コスト・高品質・牛乳の持ち味を大切にしてきた中規模農家も見直して欲しいのです。
 現在,生産されている牛乳は中規模農家が支えています。今後も,大規模農家だけで日本の農業が成り立つとは思えません。もっと地域になじんだ,家族経営を中心に据えた農業構造を目指すべきで,行政も大規模化ばかりを目標とするのではなく,「これからの中小農家のあり方」を考えていただいて,援助・保護・指導をお願いしたい。
 行政といえば,先日青空知事室で石井知事とお話する機会に恵まれました。知事の積極的・進歩的態度には感服します。
 その時申し上げたことが笠岡湾干拓粗飼料基地のことです。現在,岡山県が経費赤字まる抱えで一手に牧草を作っています。この財政難の折,節約のため二つの問題点の改善を求めます。一に,牧草は適期いっせい刈りが必要で(一部の入殖者には委託していますが)労力不十分のため,早刈り,刈り遅れの粗飼料ができます。二に,永年牧草を中心に作付けしていますが,笠岡は暑く夏枯れしやすい。
 改善策として夏は長大作物を作付け,冬は大麦等の作付け,ホールクロップサイレージに変えることで,増収穫・高カロリー飼料の確保・作業日の分散等,メリットも多いと思います。私自身,干拓で十五年以上試験栽培を続けてきた経験から,自給飼料の低コスト生産を可能にしています。そして,周辺の作業可能な酪農家にも作物をつくらせ,作業をもっと分散させることで,大きく赤字削減にならないでしょうか。イギリスでは,公共性や本来の目的を逸脱しない範囲で民間委託が行われていて効果をあげているときいています。
 一般県民より,税の無駄使いとして笠岡湾干拓農道空港と互にあげられている粗飼料基地……井笠の酪農家にとっては,なくてはならない重要なものです。九州諫早干拓では,一部の政治家・団体により反対の声があがっています。今後の世界的な食糧需給を考えると食料自給率の低下傾向に歯止めをかけなければいけない時,干拓地は,有効的且つ経済的に利用したいものです。我々干拓農民としても,非難の声に負けない勢いを身につけられるよう,がんばりたい。