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〔特集〕

畜産環境問題について

岡山県農林部畜産課

 今日の畜産を考える場合,畜種を問わずもっとも重大な課題の一つが悪臭を中心とした環境対策である。悪臭の発生によって,近隣住民からの苦情が寄せられるにとどまらず,場合によってはやむなく移転や廃業に追い込まれるケースも増えてきている。今後ますます厳しく問われるであろう地域の環境保全という面からも,関係者にとっては頭が痛いところである。
 畜産関係の苦情の中で最も多いのは悪臭である。悪臭はもちろん気体であるから,空気中を漂い近隣住民に迷惑をかける。この場合,空気中で拡散希釈されていくので,被害の及ぶ範囲はそれほど広くないのが普通であるが,周囲の地形や建造物等の配置,あるいは風向・風速・気流や温・湿度といった気象条件によっては,相当広範囲に被害が及ぶことがある。例えば,環境庁の調査では,鶏ふん乾燥場からの悪臭で7qの範囲にわたって2千世帯に迷惑(吐き気,食欲不振,不愉快)をかけている例が報告されている。
 また,悪臭は家畜へも大きな影響を及ぼす。家畜に対する悪臭の主因であるアンモニアの影響としては,増体・産卵など生産障害及び病原体に対する感受性の増大などがある。
 例えば,豚では,100ppm以上のアンモニア存在下で飼育すると1日当たりの増体量が低下すると報告されている。また,採卵鶏では飼料摂取量と発育の低下,性成熟の遅延及び産卵率低下などの悪影響が認められている。ブロイラーでも増体の遅延等が見られる。(アンモニアの影響については,表1のとおり)
表1.アンモニアの影響
濃度
区分
影  響
5ppm

10ppm

20ppm

30ppm

40ppm


50ppm


100ppm

200ppm

400ppm









牛・豚


家畜

家畜

家畜

アンモニア臭を感じる

アンモニア臭を強く感じる

呼吸器系の不快を覚える
呼吸症状が出始める
目の不快を感じる場合がある

角膜炎が起こり始める
肺炎、飼料効率の低下が起こり始める
頭痛、吐き気、食欲減退等が起こり始める
採卵鶏の産卵率の低下がひどくなる
生成熟の遅延
アンモニア臭に耐え難くなる
飼料効率、増体重の低下の悪化

病気の多発

人の窒息致死濃度

 畜産経営においては各種の臭気が様々な場所から発生するが,その発生源の大半は,家畜が排泄したふん尿である。特に,ふん尿に含まれている有機物が微生物の作用によって分解され,様々な悪臭が発生する。
 一般に,好気性微生物による有機物の分解は速やかに進行するため,悪臭の発生は比較的少ないとされている。したがって,悪臭は嫌気性微生物の活動が活発となる条件,つまり,ふん尿の水分が多く,内部が嫌気性になり,時間が経過するほど悪臭発生量が増えることになる。要するに,悪臭の発生は家畜ふん尿の嫌気性発酵によるものであるといえる。
 したがって,悪臭対策の基本は,嫌気性微生物の発生を押さえることに他ならない。畜舎内でもふん尿分離,畜舎からの早期搬出,好気性微生物による早期処理,畜舎の床や通路,特にふんの乾燥などが基本である。
 このように畜舎における臭気対策としては,こまめな清掃が最も重要であるが,舎外においても清掃は重要である。悪臭苦情は目で見た際の不潔感による心理的なものによる場合が極めて多い。花を植え,美化に努めている農家では,畜舎内外の清掃にも細心の注意を払っているので,苦情は少ない。このように美観と目隠しと臭気対策を兼ねた畜舎周辺への植樹も大切である。
 最後になるが,畜舎内外の清掃・美化に努めるとともに,近所付き合いに対する心配りが大切ではなかろうか。