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(声)

「全共で優等賞獲得! 生産者の意気高し」
(−和牛の里成羽町のむらおこし−)

高梁地方振興局農業振興課畜産係

 成羽町の平川愛正さんの愛牛「なりしず7号」が第7回全国和牛能力共進会の「種牛の部」第6区(若雌の3)で優等賞13席を獲得した。
 成羽町にとっては町政施行以来初めての快挙であった。
 高梁地域畜産関係者にとっても久々のビッグ・ホットニュースで,新たな感動と興奮を呼び起こしている。
 平成8年6月総合畜産センターで開催した岡山県出品対策協議会出品委員会で,畜産課樋口参事は「岡山県和牛生産の命運を賭けた共進会である。各地区とも岩手県出場に向けて盛り上げていただきたい。」とあいさつされた。
 関係者の努力が実り今回の全共成績の結果は高梁地域和牛農家の「やる気」を起こさせている。
 ここに至るまでには紆余曲折はあった。
 高梁地区対策協議会を平成8年10月に発足し,候補牛の選抜,巡回指導と行い管内候補牛は順調に飼育管理されメキメキ岡山和牛らしさを備えてきて,関係者も岡山県代表牛に選抜される夢を持ち始めた平成9年3月の終わり頃になって突然「育種価を正式に算出するとどうも不足する。」の一声で仮申請の候補牛7頭は全頭落選した。
 茫然自失,指導の甘さに自戒の念にさいなまれる日々であった。
 しかし,幸運にも今回全共の優等賞を獲得した成羽町の平川愛正さんの愛牛が町内に残っていた。
 すでに候補牛として巡回指導は行っていた牛で,平川さんは毎日引き運動をされておりその「なりしず7号」は途中立ち寄る神社で,平川さんがお参りする間,じっと神社に向けて頭を下げて待っている「神社参りを毎朝行う」という逸話の牛であった。
 町内育成家の今西久夫さんは育種価不足から自分所有候補牛の落選したショックにもめげず,すぐさま応援,調教指導に駈けつけた。
 また,町内和牛改良組合の顧問を務める石原獣医師も成羽町和牛が全共に出場して優等賞に入賞するという成羽町和牛界の夢を達成するため,育成指導に熱心に当たられた。
 その後,幸運にも岡山県代表牛に選出されると,すぐさま町内の和牛改良組合,農協,成羽町役場等から自発的に声が上がり,「全国和牛能力共進会出品・平川愛正氏を励ます会」が結成され,地域内で募金運動が行われた。
 横断幕の作成,応援団バスツアーの対応,応援団のユニホーム,「のぼり」の作成等限られた短い時間内ではあったが迅速に準備された。
 また休止していた「第25回成羽町畜産共進会」が2年振りに復活し,8月終りの晴天のもと秋岡町長,高梁地区全共出品対策協議会長JA川上町武田組合長出席のなか盛大に開催された。
 併せて,第7回全国和牛能力共進会出場を記念して「成羽町全共壮行式」が行われ,平川愛正氏の快挙をたたえるとともに本番での健闘を祈念したのであった。
 いまや,成羽町の和牛は全国区となっている。
 ひとつはもちろん平川愛正さんの全共優等賞入賞である。
 もうひとつは成羽町布寄の和牛農家沖島浩三さん調教の愛牛が演ずる「碁盤乗り」の妙技である。これは沖島さんが岡山県千屋種畜牧場で習得された調教技術を正確に継承するもので,その大ワザはテレビのワイドニュースに,全国版週刊誌の巻頭見開き1ページを堂々と飾るなど,全国ネットのホットな話題となっている。愛牛の「第五きよたに五号」とともに地域の名士となっている。
 聞くところによると,岩手県から帰りの応援団バスツアーの車中で,次回開催される「岐阜県第8回全共」へ向けて力強い出場宣言の決意発表もあったと聞いています。
 燃え上がった和牛飼育者希望の灯火をそって絶やさないで,明るい話題を糧に,5年後,10年後の大会出場に向け関係者一丸となって岡山和牛の振興に取り組んで行きたい。