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〔特集〕

「我が職業養豚に思う」

奈義町 黒 藪 富 吉

 「私事にて恐縮ではありますが,少なくとも20年できる事なら定年期迄勤めあげたいと思っておりました。しかしこれも古き名残りに絡む長男の宿命かと諦め郷里にて父の後を継ぎ養豚業に専念することと致したしだいです。」これは,私が昨年まで約18年間勤めていた東京の上司,同僚に宛てた退職の挨拶状に書き添えた一文です。
 祖父の時代から養豚をしていた家の長男としていずれは自分もという覚悟はできていました。しかし18年間地方公務員として安定した生活を送っていた私にとって40歳を過ぎての転職は勇気がいりました。
 養豚を始めて一年半が過ぎ,父をはじめ養豚仲間の方々の指導のお陰で仕事にはようやく慣れてきたものの養豚家としてはまだまだ勉強不足の未熟者です。そんな私が将来も養豚という職業を続けていかれるだろうかと不安に感じていることがあります。
 祖父が現在の地で養豚を始めた頃は,周囲は田畑ばかりで,付近の農家では土間を隔て農耕牛が同居している時代でした。ところが今では豚舎の直ぐ近くまで農業にも畜産にも関係のない一般住宅が迫ってきています。
 養豚を職業にしているからには経営面での数字を上げ利益につなげれなければならないのは当然ですが,この職業を現在の地で存続させていく為には環境保全という問題を考えない訳にはいかない時代になってきていると思っています。
 労働者の立場で汚い・きつい・危険の「三K職業」という言葉が流行ったことがありましたが,その反対の立場である付近の人々に「汚い・臭い・きがわるい(岡山弁)」の三Kを感じさせないようにしなければならないと考えています。
 現在,糞尿は町内の糞尿処理施設に搬入処理するようになり,自動給餌器により給餌待ちの鳴声騒音もなくなるなど以前に比べれば改善してきていますがまだまだ対策を講じていかなければならない点も数多くあります。私が子供のころ見てきた養豚施設から思うと現在の設備は驚く程進歩しています。それから考えると環境保全対策に関しても研究開発されていくものと信じていますが,自分自身も環境面に気を配り養豚という職業に理解を得られ,養豚という職業にも自信と誇りをもてるよう努力していくつもりです。
 纏まりのない文になりましたが,現在の地で親子三代に亘り続けてきた養豚業を私の代で廃めるような結果は出したくありません。何年先になるか分かりませんが,私の後ろ姿を見て育った子供が私と同じように養豚を職業にしたいと考える時が来るのを楽しみに頑張っていきたいと思います。