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〔畜産センター〕

地球環境と調和ある畜産経営をめざして
「乳酸菌を利用した食品廃棄物の飼料化技術の開発」

岡山県総合畜産センター 企画情報課 谷 田 重 遠

 最近の畜産経営は,国際市場における穀物の高等と円安から生産コストが著しく高くなっています。購入飼料価格は,昭和60年以降で平成7年が最低となっています。これは,1ドル:87円と空前の円高であったことと,国際的に穀物市場が安定していたことによります。すなわち,「畜産のバブルは,平成8年にはじけた」と考えることもできます。
 バブルがはじけた日本経済同様に,我々畜産においても,安い購入飼料を大量に使って生産量(販売量)を伸ばすと言った経営戦略がもてはやされた時代は,ある面では過ぎ去ったと言えるかも知れません。
 このような,畜産経営の背景と産業廃棄物が社会問題になっているなかで,岡山県総合畜産センターでは,昨年度から国の助成を受けて「酵素等による食品副資源の有効利用技術の開発」に取り組んでいます。この試験の一環として,昨年9月テクノサポートで関係者の協力を得て,「未利用資源および低利用資源の飼料化」に関するシンポジウムを開催しました。
 「粕」といってもビール粕などは一般に畜産農家に利用されています。しかし,ヌカやオカラは保存性の問題,安定的な確保が困難なこと,一方では畜産物の品質管理の面などから次第に利用されなくなってきました。また,食品産業でも,これら廃棄物(粕)の一部は産業廃棄物として経費をかけて処理している実態があります。そこで,畜産センターでは,蒲ム原生物化学研究所と共同で保存性,飼料品質,コスト及び生産性などを課題とした研究に昨年から取り組んでいます。

(1) 県内の実態調査
 昨年は,県内の食品産業95社を対象に飼料原料として利用可能な粕(食品副資源)の実態調査を行い36社から回答がありました。これら食品副資源の種類は延べ43種類で,酒造等の醸造関連,園芸加工果皮及び動物性副資源等がありましたが,約60%は業者委託による処理形態でした。また,成分分析を行った90%の副資源で飼料としての有用性を認めました。

(2) 保存性
 保存性が劣る副資源として,「オカラと返品豆腐」を対象に蒲ム原生物化学研究所と共同で乳酸菌を添加した保存試験の結果では,機密性を保つことで25℃で10日間の保存性を認めました。このように乳酸発行を利用することでこれら副資源を混合した飼料も一定期間の貯蔵が可能なことを確認しました。

(3) 配合モデルの検討
 次に,県内で産出する副資源を利用した混合飼料の配合モデルを作成しました。なお,豚と鶏のでは,配合資材として原則的に副資源のみを利用したモデルで試作すると同時に給与試験を行いました。

(4) 給与試験
 給与試験は,肥育豚及び肉用鶏(おかやま地どり)を対象として実施しました。乳酸菌による発酵は,サイレージの発酵と同様に順調な発酵が進むと家畜の嗜好性は良好で好ましい芳香臭で作業環境も良好でした。肥育豚の前期発育は,ほぼ期待したとおりの結果でした。しかしながら,肥育後育の増体は悪く,おかやま地どりについても同様な結果となってしまいました。
 これは,混合資材に菌床粕(エノキタケの粕)などを加えたことからエネルギーが不足したこと,特に消化性との関連から採食量が減少した影響が大きいと考えられました。
 以上のような昨年度の経験を生かし,本年度は食パンの粕(サンドイッチ用パンのミミ部分)を加えエネルギー成分の改善を図り,肥育後期におけるD.G.も順調で昨年度の問題は,解決の見通しが立ちました。
 また,本年度は乳酸菌のもつ二次的効果の検討も行っています。乳酸菌には,整腸作用があることから,昨年のO−157騒ぎでは乳酸飲料が人気があったと言われています。今回の発酵飼料を給与した豚で,整腸作用として腸内異常発酵抑制効果による糞の脱臭作用が認められています。また,一部で言われている免疫扶養効果などを含め家畜の生体に対する乳酸菌のプラスの効能をより詳細に検討する予定です。
 購入飼料の高騰と資源リサイクルの意識が高まるなかで食品廃棄物(粕)を利用した飼料製造の動きが全国的に注目されています。また,昨年度のシンポジウムの参加者から見ても県内の食品産業界の関心は,我々畜産関係者以上に強いということがうかがえました。
 総合畜産センターでは,来年度もこの研究を継続するとともに,農家での実証を検討しています。実際の取り組みは個々の畜産農家では,労力やコストの面から無理だと思いますが,地域ぐるみの積極的な取り組みを期待しています。