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〔畜産会便り〕

飼料作物の外来雑草・ワルナスビの生態と除草対策について

社団法人 岡山県畜産会

1.はじめに
 近年,飼料畑や牧草地に従来からの畑地雑草とは異なった強害外来雑草が侵入し,飼料作物の収量・品質の低下,あるいは機械トラブルによる作業能率の低下など多くの問題が発生しています。特に,ワルナスビは地下茎と種子によって増殖しますので,一旦圃場に侵入すると根絶は極めて困難ですから,早期発見と早期駆除に努める必要があります。
 外来雑草の侵入については全国的に話題になっており,去る9月9日のNHKテレビのクローズアップ現代「謎の雑草が畑を襲う」でとりあげられ,皆さんが関心をもたれていると思いますので,なかでも強害雑草のワルナスビについて特性と除草対策について紹介します。

2.ワルナスビの特性
 原色日本帰化植物図鑑を要約すると次のとおりであります。
 北米原産でナス科の多年草で草丈は40〜70pになります。別名,ノハラナスビ,オニナスビと呼ばれています。
 茎は節ごとに「く」の字形に曲がり,黄褐色の鋭いトゲがあり,茎は両面とも星状毛をビロード状に密生し,中央脈上にはまばらにトゲがあります。
 花枝は節間部につき,数個から10個の花をつけます。
 果実は球形で直径1.5p,基部にがくが残存し,熟した実は橙黄色でつぶすと悪臭が発生します。花期は夏から秋で種子と地下茎で繁殖し,特に長い根茎があります。

3.除草対策
 ワルナスビは,強害雑草ですから現在のところ完全な除草技術が確立されていませんが,草地試験場,岐阜県畜産試験場,広島県畜産試験場等の技術対策資料を要約すると次のような除草対策が考えられます。
 飼料畑や牧草地で発生を確認したら早急に根まで掘り取ることが大切です。茎葉にトゲがあるので,手抜きは困難ですし,地下茎で増えるので,ロータリー耕をするとネズミ算式に増殖します。
 (1) 牧草地における全面茎葉処理法
 ハーモニー75DF水和剤(チフェンスルクロンチメル)を10а当り5g,100rの水に溶かして,雑草生育期に茎葉に散布します。本剤の散布後21日間は採草及び放牧を行わないでください。本草は強い地下茎でありますので,再生しますから,再度同量の薬剤散布を繰り返し,草勢を押さえてゆきます。
 (2) トウモロコシ,ソルガム畑における処理法
 トウモロコシやソルガムについては,作付けを一時的に休止し,牧草地に準じた除草剤を散布します。
 また,トウモロコシの刈取り後にバンベルD液剤(MDBA)を10а当り100pを100rの水に溶かし,茎葉に散布することによって次年度の再生力を弱めることができます。
 (3) 非農耕地におけるスポット処理法
 ワルナスビが繁茂した場合は非選択性除草剤のスポット処理が最も効果的です。
 ラウンドアップ液剤(グリホサート剤)かタッチダウン液剤を水10rに100p溶かし,雑草の茎葉に散布します。散布後,14日間程度(根に薬剤がいくまで)は雑草を刈り取らないでおいて下さい。また,葉から根に栄養分を盛んに輸送する生育盛期の頃に散布することが効果を高めます。

4.おわりに
 ワルナスビは,種子と地下茎で増殖する強害雑草ですから,一度圃場に蔓延すると根絶が困難です。したがって,まず,雑草を圃場に侵入させないこと,侵入を許した場合に初期のうちに駆除し,決して蔓延させないことが肝要です。
 今後,これらの外来雑草の侵入の機会が多くなると思いますので,圃場をよく観察し,早期発見と早期防除に努めることが大切です。