岡山畜産便り97年11・12月号 〔特集〕第7回全国和能力共進会の反省と今後の指導方針

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〔特集〕

第7回全国和能力共進会の反省と今後の指導方針

岡山県総合畜産センター

 第7回全国和牛能力共進会が9月11日〜15日まで岩手県滝沢村で開催されました。岡山県の成績は前回号で紹介しましたが,第2区(若雄)で全国1位,第5区(若雌)で後躯特別賞を受賞するなど,種畜生産県として優秀な成績を修めました。
 今回は,「育種価とファイトで伸ばす和牛生産」のテーマが示すとおり,出品牛は産肉能力の優秀であることが保証されたものでの共進会であり,和牛の経済能力である種牛性と産肉性の両面で評価するという新しい和牛能力共進会でした。

〈種牛の部〉

 本県の育種価評価の取り組みは,全国的にも早く昭和63年度から枝肉データを収集し,平成5年3月に第1回の評価をおこなって以来,関係者が全力で実施してきました。今回の共進会の出品条件は,平成8年12月に評価した第7回育種価が用いられました。この時点での供用中雌牛の育種価判明率は約50%で全国1位を争う状況でしたが,出品牛の選定には関係者の皆様が大変御苦労されたことも事実です。
 こうした御努力のかいあって,出品牛はほとんどの区で優等賞上位を獲得し,中でも若雄の2区出品牛が優等賞主席,若雌の5区出品牛が特別賞(後躯賞)に輝くなど,種畜生産県岡山の名声を博しました。
 どの出品牛も栄養度・発育とも良好で,体積に富み・体伸・後躯の充実は抜群のものを持っておりました。全国的に兵庫系種雄牛の血液が濃くなり,体積の減少・後躯の貧弱さが危惧されている中で,体積豊かで後躯の素晴しい経済性の良い岡山和牛は,キャラクターの良さを発揮し,今後に明るい希望がもてると全国から熱い声をいただきました。
 なお,さらなる上位入賞を目指す改良点としましては,全国的に改良が進んでいる被毛・皮膚・輪郭の鮮明さなど資質・品位に関する点と,前躯の体深・体幅の充実の力を入れていきたいと考えます。また審査報告の中で栄養度がオーバーし輪郭が不鮮明なものが散見されたとあることから,今後とも栄養度については注意していただきたいと考えます。
 種牛の部では,岡山和牛の優点を遺憾なく全国にアピールすることができました。次回は,さらに育種価による出品条件が強化されることが考えられますので,育種価を基本とした改良を進めると共に,若雌牛の初産牛は性別に関係なく肥育し,早期にその枝肉データを収集して,育種価を早く判明させることが肝要であると考えます。

〈肉牛の部〉

 第10区(肥育父系牛群)は,同じ種雄牛産子で種牛能力をみると7区との連動区であり,その産肉能力を同時に評価する新しい区でありました。
 第11区(父系去勢肥育牛群)は,全国的な産肉能力の遺伝的向上と各県の肥育技術の進歩を評価する区でありました。
・出品牛の各枝肉形質の肥育成績


枝肉重量
ロース芯面積
脂肪交雑
(BMS No.)
10

411.3

45.7

5.67
(No.7:2頭、No.3:1頭)
全国平均

418.7

51.5

7.15
11

414.3

44.7

5.00
(No.6,5,4:それぞれ1頭)
全国平均

418.3

51.5

7.06

 肉牛の部につきましては,上記のとおりで十分なものとはいえませんでしたが,前回の共進会より肉質等級は向上しており,関係者の努力の成果と考えています。
 第10区の成績は2等賞でしたが,脂肪交雑の成績では優等賞8席の島根県と差はなく,少ない肥育素牛で選抜が困難な状況であったことなどを考えますと健闘したといえます。
 第11区については,この区の評価目的を考えた取り組み方(肥育素牛を作出するための交配方法,24カ月齢出荷に適した岡山和牛の肥育方法など)を,今後十分に検討していく必要があると考えます。
 次に,今回の共進会で実施した肉牛の部の対策状況と反省及び次回に向けての対策をまとめてみました。

(1) 肥育素牛確保のための雌牛対策

 ・実施状況:
   H6年度に,第2回育種価(判明率約30%)の脂肪交雑が上位10%の雌牛の繁殖状況を調査した結果,61頭しか活用できなかったことから,育種価の条件を下げ,ET技術も活用して肥育素牛の確保を実施した。
 ・反省点:
  1)最終比較審査3年前(平成6年度)からの対応であったため,繁殖状況などにより育種価トップ10%から十分な肥育素牛が確保できなかった。
  2)肥育素牛の生産頭数が少なく,さらに産子の中に(特にET産子)肥育素牛として適正に発育していないものがみられた。
  3)雌牛選定に際し育種価は脂肪交雑のみを考慮したため,岡山和牛の優点である枝肉重量・ロース芯面積の点で問題があった。
 ・次回対策:
  1)育種価の判明率を高める。
  2)判明率が高くなっているので,脂肪交雑育種価をトップ1%に高めつ枝肉成績に実績がある雌牛を厳選し,さらに枝肉重量・ロース芯面積の育種価も考慮して,十分な肥育素牛確保に努める。
  3)次回(平成14年度)は,平成10年度(4年前)から対応し,繁殖の状況で活用できない育種価優秀雌牛には,受精卵の確保対策をとっていく。
  4)肥育素牛確保のための指定交配期間は,1カ月間とする。
  5)受精卵移植は,和牛中心に乳牛移植も実施する。
  6)特にET産子については,3カ月齢までの発令が問題となることが多いので,哺育技術の向上に努める。
  7)肥育素牛頭数はできる限り多く確保し,肥育状況をみながら選抜できるよう努める。

(2) 種雄牛対策

 ・実施状況:
   今回は平成6年度に,間接検定が終了していなかった2頭の新しい種雄牛(第2富藤号・藤花号)を選抜し実施した。
 ・反省点:
  1)種畜生産県としては,新しい種雄牛でチャレンジする必要があったため間接検定成績がでる前に種雄牛の選抜をおこなわざるをえなかった。
  2)10・11区とも種畜生産的(系統を固める)な交配で臨んだが,肥育技術を競う11区では雑種強制的効果をねらう交配が必要であった。
 ・次回対策:
  1)平成10年度中に,育種価・枝肉成績優秀な種雄牛を選抜する。
  2)すでに兵庫系を取り入れた「稔糸茂」「利花」を作出しており,これらの肥育技術を集積していく。

(3) 肥育技術対策

 ・実施状況:
   24カ月齢出荷の指標マニュアルを作成し,関係者による指導を実施した。
 ・反省点:
  1)飼養管理マニュアル等で実施したが飼料給与について,全農家で統一できなかった。
  2)出品牛選抜のために,超音波肉質判定機器(スキャナー)の活用等をおこなったが,技術的に確立できていなかった。
 ・次回対策:
  1)飼料給与・管理など,県下トップレベルの肥育農家と平素から定期的な技術の集積を図って,統一的24カ月齢出荷マニュアルを作成する。
  2)現地指導は,少数精鋭での実施をおこなう。
  3)出荷牛選抜のために,ポイント月齢での選抜指標を確立すると共に,超音波肉質判定機器(スキャナー)の技術確立をおこなう。

〈まとめ〉

 以上のように種牛の部は優秀な成績をおさめました。また育種価評価からみた岡山和牛の改良は,脂肪交雑・枝肉重量・ロース芯面積の産肉能力主要3形質において順調に進んでいます。このことは,種牛性と産肉性を同一種雄牛で競う連動区の第7・10区の成績からも明らかで,岡山和牛は種雄性優秀で,肉質(特に脂肪交雑)の改良も進んでいるといえます。
 前回の第6回全国和牛能力共進会(大分)の反省を基に,農家・関係機関が一体となって取り組んできた育種価を活用した岡山和牛の改良方針は間違っていないと考えます。
 今回の第7回全国和牛能力共進会成績は,改良目標の「質量兼備の岡山和牛」作りへの取り組み中間報告として受けとめ,謙虚に反省した上で,素晴しい岡山和牛に自信と誇りを持ち関係者が一丸となって,第8回全国和牛能力共進会に向け万全を期していきましょう。