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あなたの身近で「おかやま地どり」を・・・!

岡山県総合畜産センター       
中小家畜部 養鶏科 和 田 和 正

 「おかやま地どり」は,養鶏科が養鶏試験場と言っていた昭和63年当時,試験場で飼育していた鶏種を基礎として作出した肉用の鶏です。銘柄が出来てからこれまで,「おかやま地どり」の生産・流通は,県内の生産,処理,販売などの関係者でおかやま地どり振興会を組織し,精肉,加工品そして鳥料理の提供などを行っています。秋田の「比内地鶏」,「名古屋コーチン」など各地の有名な地どりに決して劣らない美味しい地どりと多くの方の評価を得ています。
 今では,農家でも卵や鶏肉はスーパーで買うのが普通になっていて,生み立ての暖かい卵やブロイラー以外の鶏肉を知らない子供がほとんどです。卵や鶏肉は,安い代表的な食料品となっていますから,自家生産の経済的なメリットはほとんどありません。しかし,「かしわ」の歯ごたえやとり肉の味に懐かしさを感じる消費者が,年々増えてきています。グルメブームから全国的に「地どり」がもてはやされた一時の風潮とは違って,おかやま地どりの飼養羽数は,着実に増加してきました。
 畜産センターでは,養鶏ゾーンで市販のビニール製簡易車庫をリサイクルしておかやま地どりの平飼いを行っています。最近,何も作付けされず荒れている農地を見かけます。これらの遊休地を利用して,少ない羽数でもおかやま地どりを飼ってみようと思われる方のために,畜産センターの実例をまじえて簡単な平飼い方法について紹介します。

「おかやま地どりの飼育方法」
1.餌付けから3週齢
 a 総合畜産センターでは初生雛として,1羽税込み131円で定期的に配布しています。
 s 初生雛は3週間,温度管理のための飼育箱が必要です。具体的には古い電気ごたつの利用や40〜60Wの白熱電球を使って25〜30℃に保つようにします。ただ,冬季は,温度が低いと雛が重なり合って圧死することがありますので特に注意を要します。
 d 最初は,餌付け用の飼料(幼雛用)を使います。エサや水の容器はヒナが小さいので,鉢受けなどの浅い容器が良いでしょう。

2.3週齢以降
 a 4週齢から放飼場に出すこととなります。放飼場の広さは15羽当たり3.3u程度あれば十分です。ただ,できるだけ水はけの良い乾いた場所が望ましいでしょう。また,飲水容器は直接地面に置くと雛が中に入り周りが湿ってきますから容器を台の上に置いて下さい。
 s 放飼場ですから,当然雨を避けるための小屋が必要となります。畜産センターでは,先ほどのとおり簡易車庫を再利用していますが,ビニールハウスでも使わなくなったテントでも良いと思います。また,留まり木を作ってやれば留まるようになってきます。
 d エサは,4〜9週齢は中雛用,それ以降は大雛用の飼料を不断給餌します。エサがこぼれて無駄にならないよう成長にあわせて容器の大きさを変えて下さい。
   また,この時期は家庭の野菜くずや残飯を与えるとゴミの減量と経費の節約になります。

3.野害獣,カラスからの保護
  放飼する場合,高さ1.5m程度のフェンスが必要となります。市販の六角金網を利用すれば比較的簡単に設置できます。キツネや野犬には20〜30p程度を地下に埋める対策が必要となります。出来れば掘り起こし難いような対策をあわせてとれれば一層効果が上がるでしょう。
  また,雛のときは上空のカラスの被害にも注意が必要です。簡単なネットを張るなどして被害を防ぐ工夫が大切です。

4.病気の対策
  同じ放飼場で,何回も飼育するとコクシジウム原虫による病気が発生しやすくなります。サルファ剤で比較的簡単に対応できます。
  詳しくは,岡山県総合畜産センターか近くの家畜保健衛生所の指導を受けて下さい。
  また,岡山県総合畜産センターでは,雛をお渡しするときにはマッレク病と鶏痘のワクチン接種を済ませていますが,その後ニューカッスル病のワクチン接種が必要となります。

5.おかやま地どりの食べ頃時期
 a オスは,14週齢くらいから美味しい時期に入ります。長く飼うと肉がやや硬くなってきます。メスは,16週齢くらいからが良いでしょう。卵肉兼用種を母方に交配していますから,メスはこの頃から卵を生み始めます。卵の色は赤玉ですし,オスがいれば有精卵となりますから,卵も楽しみながら計画的に処分してゆけば良いでしょう。
 s 卵を生み始めたら成鶏用のエサを与えますが,大雛期と同様に残飯や野菜くずの積極的な利用を考えたいと思います。

 以上,おかやま地どりの簡易な飼育方法を説明しました。20〜30年前,秋祭りで庭先の鶏をおとしてごちそうにしたといった懐かしい「鶏のいる風景」が,再び見られるよう,鶏がもっと身近な存在になっていくことを願っています。