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〔広場〕

香港での岡山ブランド牛肉の確立を

前岡山県香港事務所長 柴 田 雅 典

 香港では昨年の12月に新型インフルエンザが発生し,そのウイルスを鶏が媒介するということで,香港内の全鶏が処分され,お隣の中国広東省からの輸入も中止されました。2月初めに広東省からの輸入が再開されるまで,香港内の中華料理店や肉屋からは香港人の大好物の鶏が姿を消しました。
 鶏肉が再び入手できるようになった2月下旬に,香港内の日系デパートと地元スーパーマーケットで畜産物100グラム当たりの価格調査をしました。1香港ドルを17円で換算すると次のとおりでした。日系デパート(日本産サーロイン牛肉:2,040円,米国産サーロイン牛肉:612円,日本産鹿児島黒豚フィレ肉:612円,同カタ肉:425円,中国産豚フィレ肉:286円,同ロース肉:235円,日本産鶏ムネ肉:102円,中国産鶏肉:68円)。地元スーパー(オーストラリア産牛ロース肉:165円,香港産豚ロース肉:148円,中国産鶏肉:49円)。牛乳については,余りおいしくないパック入り牛乳が,1リットル400円もします。岡山県のデパートやスーパーでの価格と比較して香港の畜産物価格は,いかがでしょうか。 さて,岡山県産の牛肉は8年前から香港に輸出されています。香港の貿易会社を通じて香港内のデパートやホテルの日本食レストランだけでなく,中国広東省内の日本食レストランにも提供されています。価格調査した日系デパートでも売られていますから,100グラム当たり2,040円が,岡山産牛肉の香港での小売価格と考えてよいと思います。網焼きやしゃぶしゃぶなどの高級料理に使われています。「霜降り牛肉はたいへんおいしい」と中国の人は異口同音に話しています。しかし,霜降り以外の脂身は,中国の人は好まないようです。もうひとつ中国の人の嗜好で面白いのは,しゃぶしゃぶのたれは,酢醤油ではなく,圧倒的に胡麻だれの方が好まれることです。
 ところで,日本の畜産物では,鹿児島産の牛肉や黒豚肉が香港内ではブランドとして確立しているようです。日系デパートの肉売り場はもちろんのこと,鹿児島牛を専門に食べさせるステーキハウスも香港内に2軒もあります。また,香港内の高級ホテルの中の高級日本食レストランで人気のあるランチメニューが鹿児島黒豚の豚カツ定食(約3,500円)です。このように鹿児島の畜産物が香港で有名になったのは,長年しかも安定的に畜産物を供給し続けたからに相違ありません。
 岡山産の牛肉は,その輸出の歴史も短く,ひとつのデパートやレストランに年間を通じて安定的に供給していないためか,香港の消費者にはほとんど知られていません。鹿児島県に負けないような適当なブランド名を岡山の牛肉につけたらいかがでしょうか。それと牛肉以外にも味の良いロングライフ牛乳をこれも消費者の好みそうなブランド名をつけて輸出したらいかがでしょうか。
 香港や中国の経済発展に伴い,日本食を好んだり,おいしい牛乳を求める中国人はますます増加するものと予想されます。岡山県が長年培った付加価値の高い畜産物がブランド価値を持つようになれば,岡山県産の畜産物の輸出がますます増加することは間違いありません。