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〔特集〕

平成10年度畜産施策の推進方針

岡山県農林水産部畜産課

 最近の畜産を取り巻く情勢は,畜産物輸入量の増大と価格の低迷,国内における産地間競争の激化,担い手不足などによる農家戸数の減少など,厳しい状況が続いている。
 このようななかで,本県畜産の安定的な発展を図るためには,生産性の向上と低コスト生産による内外価格差の縮小を基本として,本県の特色を生かしながら活力とゆとりある力強い経営体を育成し,高品質な畜産物を安定的に供給することが求められている。
 このため,「岡山県酪農・肉用牛生産近代化計画」に基づき,(財)中国四国酪農大学校における後継者の養成をはじめ,飼料基盤の整備,家畜改良の促進,価格安定対策の強化を図るとともに,総合畜産センターや家畜保健衛生所を中心に新技術の開発・普及に努めるほか,畜産物の集出荷及び処理加工施設の整備による流通の合理化や,本県ならではの畜産物の銘柄化,畜産の6次産業化の推進等,一連の施策を積極的に推進し,国際化に対応した畜産構造の実現を目指すことにしている。

1.酪農対策
 平成7年度からすべての牛乳・乳製品が関税化されたことにより,生乳の低コスト生産と高品質化が求められていることから,優良牛の導入や受精卵移植による牛群改良の促進,自給飼料の増産や省力管理によるコストの低減,意欲ある後継者の規模拡大や公共育成牧場の活性化を推進するほか,生乳の集出荷及び検査施設の整備等による高品質生乳の効率的生産に努める。また,地域の特性を生かしたチーズ等乳製品の開発などにより,生産から加工・販売に至る6次産業化を推進する。さらに,(財)中国四国酪農大学校の充実強化により優れた担い手を育成するとともに就農を推進するほか,ヘルパー組織を充実強化しゆとりある酪農経営を推進する。
 平成12年度に本県で開催される「第11回全日本ホルスタイン共進会」については,県実行委員会により基本設計の策定や出品対策の強化等本格的な準備に取り組む。

2.肉用牛対策
 関税率の引き下げにより牛肉輸入量が年々増加しているが,品質面で優位性のある和牛肉については,将来にわたって安定的な需要が期待できることから,育種価や全兄弟検定の活用による,肉質を重視した種雄牛づくりなど改良の促進をはじめ,小規模農家の集団化や大規模な繁殖経営体の育成,乳牛への和牛受精卵の移植による子牛の生産拡大,地域内繁殖肥育一貫生産体制の確立による県内肥育の推進,新しい肥育技術や中山間地域を活用した生産技術の普及などにより,低コスト生産と高品質な牛肉の安定供給を推進する。
 また,「おかやま和牛肉」のPR強化による銘柄化の推進,県産牛肉の学校給食への利用促進や和牛肉の海外輸出による消費拡大,さらには,部分肉流通の進展に対応した食肉流通体制の整備など,生産から流通に至る一連の施策を積極的に推進する。

3.養豚対策
 関税率や基準価格の引き下げにより,価格低下が予想されるなかで,生産性の高い養豚経営を育成するため,優良な系統造成豚を活用した肉質の向上と斉一化を推進するほか,精液供給体制の充実強化と人工授精による低コスト生産,繁殖肥育一貫生産及び適切なふん尿処理など耕種部門と連携した団地化の推進,価格安定制度の強化等に努める。また,養豚生産の基盤強化を図るため,「生産振興計画」を策定するとともに,優良種豚(バークシャー種)の海外導入による「岡山黒豚」の銘柄産地づくり等を推進する。

4.養鶏・養蜂対策
 採卵は,需要に見合う計画生産体制を維持しながら,低コスト生産を基本として価格安定制度の充実や効率的かつ衛生的な飼養管理による生産性と品質の向上に努め,低温流通体制の整備と消費拡大対策も推進する。ブロイラーについても低コストで,衛生的な飼育管理により生産性及び品質の向上を図るとともに,「おかやま地どり」の産地化を推進する。
 養蜂については,レンゲの作付け拡大などの密源増殖対策と円滑な転飼調整に努め,安定的な密源の確保と生産の拡大を推進する。

5.飼料対策
 大家畜の経営安定を図るためには,経営規模に見合う自給飼料の確保が極めて重要であることから,山林原野等を機械利用できる飼料基盤として開発するとともに,既存草地の効率的な利用を促進する。また,耕種農家の転作田等を有効に活用した飼料生産を推進するため,飼料生産請負組織(コントラクター)を育成し,畜産農家の労働力軽減や家畜のふん尿の土地還元等を通じて経営の安定を図る。

6.家畜衛生対策
 近年,家畜伝染病の発生は減少しているものの,台湾では口蹄疫が,香港では家禽ペストが発生するなど,国際化の進展や国内流通の広域化に伴い,海外悪性伝染病等の侵入や不明伝染性疾病の発生が危惧されるため,国の家畜衛生試験場等関係機関と連携して迅速な診断に取り組むなど,防疫体制を一層強化する。また,経営規模の拡大による疾病の複雑・多様化に伴い,集団衛生対策の強化が課題となっていることや,動物がかかわる人の疾病が多発していることから,関係団体と家畜保健衛生所が一体となって,農場単位の衛生検査や飼育管理指導など,HACCP方式を目指した高品質で安全な畜産物の生産指導に努めるほか,先端技術等新たな技術の普及を推進する。

7.環境対策
 経営規模の拡大や市街化・混住化の進展に対処し,地域社会や自然環境にやさしい畜産経営を構築するため,耕種農家との連携による家畜ふん尿の有効利用と土作りを基本に,市町村圏域を対象とした大規模・広域的な家畜ふん尿処理利用施設から,集落単位の畜産農家と耕種農家をリンクした小規模な施設整備まで,総合的な畜産環境対策を推進する。

8.技術開発と指導対策
 本県の特徴を生かした高品質畜産物の安定生産を図るため,バイオテクノロジー等の先端技術を活用し,雌雄判別卵凍結技術の確立,家畜改良へのDNA利用に取り組むほか,低コスト生産技術など畜産農家の生産性向上に直結した試験研究や,消費者ニーズの動向に沿った畜産物加工および技術開発に努める。