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〔技術〕

高泌乳牛における飼養管理技術T

岡山県総合畜産センター

(飼養給与回数によるルーメン性状,乳量,乳成分について)
 現在,酪農家に要求されていることは,消費者に好まれる「おいしい牛乳」,そして「安全な牛乳」を生産することです。酪農家にとっては,乳量を維持,向上させながら,乳質アップをはからなければならないわけですから,高泌乳牛の飼養管理が特に重要となってきています。
 高泌乳牛の栄養供給量を高めるためには,給与飼料の質的改善と採食量を増大させる給与技術が必要となります。そのための方法として,分離給与の場合,飼料給与回数を増加させる方法とか,すべての飼料を混合して給与するTMR方式が検討されてきました。
 今回,平成9年度総合畜産センターでの試験結果を踏まえて,高泌乳牛の飼料給与法としての多回給餌がルーメン内の恒常性に及ぼす影響について検討した結果,次のような点が指摘できました。
 TMR給与に比較して,分離給与の場合は飼料の給与回数によりルーメン液pHの変動が大きくなります。濃厚飼料を4回給与した場合と8回給与した場合のpHの変化を比べると………。

 8回給与と比較して,4回給与の場合は夜中から朝にかけて高くなり,昼間から夜にかけて低くなる傾向を示しています。また,1日の変動幅も大きく乳牛にとって決して好ましい状態とは言えません。
 これは,夜間は空腹状態にあり,ルーメンの活動が低下し,反面昼間は濃厚飼料多給状態になっていると考えられます。
 次に,乳量,乳成分を比較してみると,乳量,無脂乳固形分率には給与回数による明確な差は現れませんでした。しかしながら,乳脂肪率については,8回給与区が有意に高い結果となりました。

乳量
乳脂肪率
無脂乳固形分率
4回給与区
22.35±1.24
3.88±0.20
8.79±0.12
8回給与区
21.58±3.12
4.03±0.31
8.79±0.15
表1.飼料給与回数による乳量・乳成分

 一般に,飼料の給与回数を増加させると,乳量,乳脂肪率が増加すると言われています。
 これは給与回数の増加により,ルーメン内pHの変動が少なくなるとともに,内容物の通過スピードが速まり,結果的に乾物摂取量が増加することによります。ルーメン内pHの安定は,乳牛にとって最も重要なことで,栄養吸収が効率的に行われ,乳量,乳成分が相対的に増加してきます。
 急激なpHの変動はルーメン微生物へ悪影響を及ぼすと言われており,特に多くの濃厚飼料を給与する必要のある高泌乳期には,飼料給与回数を増やすことによりルーメンの恒常性を保つことが,高泌乳牛飼養管理のポイントとなります。