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「岡山畜産便り」の500号を祝す

社団法人中央畜産会   
会長 山 中 貞 則

 「岡山畜産便り」500号記念号の刊行,誠におめでとうございます。本誌が創刊されたのが昭和24年11月とお聞きし,いまさらながら,岡山県の畜産振興,就中,わが国畜産の振興に半世紀わたって,本誌が果たされた役割の大きさに敬意を表したいと思います。
 創刊当時の畜産を巡る情勢といえば,戦後の混乱がまだ尾を引き,食糧の確保が大きな命題であった時代であります。この中から,敢然と畜産の必要性を説き,その将来性を見抜いて本誌を創刊された諸先輩方の炯眼に,改めて敬意を表するものであります。これに呼応するように,翌25年には飼料や生産資材の統制緩和が行われ,さらに食糧増産計画の策定,飼料需給安定法の制定という,統制撤廃の時代へと移ってまいりました。
 この背景には,食糧事情の落ち着きと国民生活の安定があり,畜産物に対する需給規模の拡大がありました。畜産は有畜農業の創設という副業的流れから,徐々に専業化の路を歩みはじめますが,今日の畜産の基盤は,この時代に築かれたものと考えます。このような情勢に応じて,畜産経営の技術指導の重要性が認識され,国の畜産指導を補完する民間の指導体制整備の必要性が叫ばれ,昭和30年に岡山県をはじめ,全国に畜産会が設立されました。本誌は設立と時を同じくして,貴会が発行を担うこととなります。また,昭和36年の農業基本法の制定による選択的拡大を経て,畜産は飛躍的に,急速な発展を遂げてきました。そして40年代後半の第1次石油ショックなどを経験しながらも着実に成長してきました。しかし,その後はガットウルグアイラウンド体制下での国際化の進展とバブル経済の崩壊,さらには,最近の金融不安など経済情勢自体が厳しい状況になっています。
 わが国畜産は,このような激動を乗り越え,いまや農業粗生産額は米に匹敵するものとなり,農業の主要な地位を占めるまでになりました。岡山県の畜産はその中でも,常に先進県としての役割を担ってこられました。まず,肉用牛生産では古くから有名系統を作りだして,わが国肉用牛の改良に果たしてきた役割は大変大きなものがあります。また,酪農では,戦後にいち早くジャージー牛の導入を図り定着をさせるなど,古い産地としての伝統を重んじるなかで,進取の気概をもって畜産に取り組んでこられた関係各位の熱意が「岡山の畜産」誌を産み,500号を達成するみなもととなったと言っても過言ではありません。
 今日,畜産のおかれた状況は厳しいものがありますが,このような時こそ,的確な情報の提供と利活用が必要であります。このため畜産会組織をあげてその体制の整備に取り組んでいるところであり,いまや一般化しつつあるコンピュータの活用についても,貴会はいち早く取り組んでこられました。本誌はその先駆として一貫して畜産の指導誌としての役割を果たして参られました。畜産情報の重要性はいまさら申すまでもなく増していくものと思います。今後とも多くの読者とともにますます発展されますことを祈念いたし,お祝いの言葉といたします。