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500号記念座談会

「岡山畜産の現在と未来について」

出席者
横溝  功 岡山大学農学部助教授
安富 正史 酪農(岡山市足守)
花房 芳視 肉用牛肥育(農事組合法人伍協牧場 勝田郡奈義町)
黒籔 光廣 養豚(㈲協和養豚 勝田郡奈義町)
坂本 克彦 養鶏(㈱坂本産業 笠岡市走出)
赤木 三夫 社団法人岡山県畜産会専務理事

(赤木)皆さん本日は,大変忙しいところご出席して戴き誠に有り難うございます。今日はご案内のとおり「岡山畜産便り」が昭和24年11月に創刊されまして,ちょうど今年の7月号で500号という節目を迎えましたので,この500号を記念して,特集号を発刊することとし,先般,県及び関係団体と編集会議を開いたところ,県内の先進的な畜産経営者に集まっていただき,座談会を開いて将来の畜産のあるべき姿を語っていただければと云うことになり,今回お集まりいただいた次第であります。
 今日は,これから座談会に入りますが,司会進行を務めさせていただきます赤木でございますが,よろしくお願いします。
 まず最初に,現在の畜産について,皆様が県内もしくは全国規模でどのように思っておられるのか,また,今後岡山県の畜産をどのようにしたら活性化できるのか,この2点に絞りまして話していただきたいと思います。また,それぞれにおいて問題点や課題が浮かび上がってきましたら,それについて横溝先生に,経営指導や全国の事例を踏まえて,ご助言をいただけたらと思います。
 それでは,安富さんからご意見を伺いたいと思います。

(安富)私が酪農を始めたのは昭和47年からということで,親が2~3頭飼っていたあとをやろうということになりました。そのころは,田中角栄が所得倍増計画で無茶苦茶をやっていても経営になっていた恵まれた時代でした。そのころから規模拡大とか設備投資とかして,駆け足で今日までやってきたわけです。振り返ってみますと,60年ぐらいから下降線をたどってきました。右肩上がりであがってきたのが,ウルグアイラウンドのころからメーカー主導型で,販売店,メーカーといったところが主導権を握ってしまいました。現在に至っては,生産者は生産調整をするので精一杯というところです。夏暑かろうが,病気が増えようがどうしょうもない。販売においてメーカーが宅配を止めてしまったことにより,販売店に行ったらいつでも買うことができる。現在においては,打つ手がない状態である。
 そこで,今年から息子が一緒に酪農やるということで,それを契機にアイスクリームを作るのを始めたわけです。このままでは給料を払うのも,おぼつかなくなくなり,このままでは酪農はとんでもないところに,追い込まれてしまうんじゃないかと危機感があります。
 私のところには幸いにも後継者ができたので,自分で乳の加工を始めようと考えました。ポピュラーで安い商品ということで,アイスクリーム,ソフトクリームの加工をしようと,去年から計画して試作品を作って自分の味を模索している。息子が主体でやっています。酪農では自分で値段がつけられない。やっぱり,自分で値段をつけるんだということ。私の考えですが,売れるものは生産していかないと行けないでしょう。生産者が楽しみながら生産していきたいと思っています。

(黒籔)現状分析は難しいのですが,私も昭和46年から始めまして今日に至っています。先般,農業関係畜産関係の会合の中で,Uターンされて農業・畜産をされている方の成績が非常に良い。しかし,学校を卒業して親の後を継いだ方の中では,成功されている方が少ないといったことも聞かれます。Uターンしたから,良いということではなく,あの当時と今日とでは環境がずいぶんと変わっている。私が,小学校,中学校のときは,「おまえ,頭が悪いけえ,百姓せえ。」といった時代に育ったので,今の畜産や花を作っておられる方も,大学行けるぐらいの能力がないとなかなか経営が難しいのではないのだろうかと思います。馬鹿でできる畜産や農業ではない。そういう点ではかなりレベルが上がってきている。将来日本の畜産どうなるのかとよく聞かれるが,法人化して,経営内容もどんぶり勘定じゃあだめで,若い後継者ができるようにするには,最低1週間に1回は休みを与える。そういった一般サラリーマンでは常識で週休二日制,農業や畜産ではなかなか週休二日制のは非常に難しいけれども,雇用労働力がないとなかなかできない。そうしよう思ったら,法人化しなければいけない。そこである程度の規模にもっていく,そうして経営の安定を図っていく。だから馬鹿だからやれと言っていたのでは生き残れんといった時代になってきた。これから先も,大型畜産,企業も参入してくるので,農家では新規にはやれないのじゃないかと思う。それは養豚にしても酪農にしても養鶏にしても,今後やっていこうとするならば,基盤や既得権がないとなかなか受け入れてもらえないのじゃないだろうか。たぶん酪農にしても肉にしても,地元の人でもなかなか受け入れてもらえない。それが町外や県外からではとてもじゃないができる状態でない。そういう時代でやっていくためには,一般企業並みのセンス,考え方をもって,これからの畜産を挑んでいかないと,「ただ自分だけよければええ」といった考え方では駄目だろう。

(坂本)実は私も二代目で,父親は飼料と卵の集荷業者であった。そういった仕事をしているとき,勤めを辞めて入っていった。丁度,昭和40年代の初めですから,養鶏も日本の高度成長も軌跡が同じで,養鶏も相前後して,企業化していきました。卵を取り扱う施設を持っていたため,スーパーもそういった業態ができたと思うんですが,流通のほうから,その当時,これからは単に量的なもの,物量を間に合わせただけではだめですよと,高品質なものを,市場に届けていかないとだめですということから考えてきました。取り扱う卵の半分は自家生産することによって,市場の要請,品質的な要求に答えていこうといった考えを持ってから,問屋業から養鶏業に転換していくといった過程をとったわけです。
 30年経過して,養鶏についていえることは,飼養戸数の減少,私たちの若いころは何十万戸といった飼養戸数が,現在では,岡山県では確か1千戸を割っていると思います。飼養戸数が減って,その代わりに飼養規模が拡大してきた。例えば,行政上のリードとかいったことではなく,市場原理で落ち着くところに落ち着いたんだろうかと考えています。1戸当たりの規模拡大して,少数化して,特に,流通消費において,卵についても,もともと殻をつけた卵も安心安全といった強く市場から要求されることになっている。昨年末から新聞で報道されましたが,卵にも賞味期限の標示について,義務化が求められてきている。これに対応していくということは,単なる生産を考えていくだけでは,とてもそういった要求に答えていくことができないということで,やはり,消費者のニーズを的確に捉えて,要求する水準に,意識的にも,生産構造などのハード面からも,卵の場合は洗浄してグレードに分けてパックに詰める。かつては分業していたが,全部一貫して,生産から流通に至るまでやらざるを得ない形態が,主流の形態になっていています。そういった生産流通のハード面の確立,商品の運営するソフトを確立していかなければならない。青果物でも農販同盟という言葉で,アメリカのドール社が日本の市場機構,そういった流通を経ないで簡潔な方法で,生産者消費者を満足させる同盟,生販同盟に対する農販同盟といったことがありました。卵についてもそういった形を打ちたてて,消費者の信頼,量販店なり,大手加工業者なり業務筋に評価を得られる生産体制を整えることが,この養鶏業界における今日の最大の課題ではないだろうかと思っています。

(花房)肉用牛肥育を始めましたのが父の代で昭和48年から農事組合法人で始めたわけです。昔は牛肉といったら手厚く保護されていたので,正しい飼育方法をすれば何円儲かるといった経営だったんですが,自由化して相手が国内だけでなくアメリカ,オーストラリア相手に競争しなければならなくなりました。それまでも零細な農家はどんどん止めまして,奈義町でもホルスタインの肥育は草分けであって50~60戸あったんですが,現在では伍協牧場関係しか残っていません。非常に減って少数精鋭になってきた。そのなかにあって,農協関係で不良債権で合併できないなどの良くないニュースを良く聞きます。何故そうなるのかというと畜産の中で,肥育は畜産の中で一番資本の回転率が低いのが問題です。和牛では40万ぐらいの素牛を導入して,最低1年半から2年肥育しなくてはならない。
 その間の利子若しくは沢山のお金が必要になってくる。気づかないうちに,それらが不良化して利子が利子を生む悪循環が,経営を圧迫する。それをうまくのりきるために内部留保の充実とか経営診断を受けるとか自分の経営を判断することが大切だと思います。これからやっていくためには,いままでのように規模拡大,薄利多売をするか,若しくはグレードの高いものを作るかであろう。牛肉の場合では,良質のものと良くないものでは倍半違うので,良いものを作りさえすれば利益が出てくる。そのかわり難しいけれど,肉質を向上させることが大事なことかなと思います。それから,販売方法では,牛肉の場合にはいろんな業者を経ていくので,流通の簡素化が今後の課題かなと思っています。

(横溝)非常に貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。私,岡山へ参りまして8年目ということもあって,現在色々な畜産経営を見させていただいています。そのなかで,感じた事をお話させていただけたらと思っています。
 まず,大家畜としての酪農部門ですが,岡山の場合は,大きく分けて大河川流域水田酪農,蒜山でみられる草地を利用した酪農に分かれると思います。その他に中山間地域における畑作酪農という展開もあります。それぞれ地域の特性を生かして展開されてきていると思います。中山間での畑作酪農につきましては今後展開していくためには外部支援機関が必要になってくると思います。例えば堆肥センター,安い飼料を提供できる共同センター,(TMRセンター)ができれば理想ではないかと思っています。そういうことによって,個々ではなかなか資源がうまく回転しないんですけど,外部支援機間を設ける事によってうまく地域の資源がうまく流れる,そういうシステムができれば耕種農家と畜産農家の連携がうまくいき,コスト低減,もしくは糞尿処理等が克服できるんではないかと考えています。肉牛につきましては,岡山は昔から和牛の産地であったということで,高度成長以降衰退していっている。それは繁殖素牛を供給していたということ。高齢農家に依存した経営であった事に問題があったと思われます。しかし,例えば奈義町のほうでは繁殖牛センターを持つとか,県内に繁殖素牛を提供できる体制ができれば,県内一貫のシステムができればおもしろいと思います。受精卵移植を酪農家と連携してやっていく事ができれば,素牛の提供という事に関しても,ある程度目安が立つんじゃんないかと期待感を持っています。
 中小家畜の方なんですが,皆様のお話にもありましたように,点在化しているというお話でありました。しかし,残っておられる経営というのは,経営センスをもたれた法人経営が残っておられるので,これからは法人経営の展開を期待しています。法人の場合のメリットとしては,規模の経済が一つはあると思うのですが,もう一つはわたしは学習の経済を追求しても良いのじゃないかと思います。学習の経済とはどういうことかといいますと,個々人がジェネラリストになるんじゃなくて,それぞれの作業の専門家になる。それぞれが能力を発揮する事によって,全体として利益を稼ぐというような方向で法人化を考えてもらいたい。
 例えば,愛媛県の有名な有限会社なんですが,毎年調査させていただいているんですが,そこでは非常に学習の経済を発揮させています。例えば,従来は肥育部門だけだったんですね。だから250~260kgの肥育素牛を買ってきて,700kgまで肥育して出荷するするという形態だったんですが,そこではそれだけでは水揚げが薄いという事で哺育育成を始めたんです。ところが哺育育成はなかなか技術的に難しい。今まで技術だけでは子牛を殺しています。そこで,そこに昔養豚をやっておられた方をパートで雇う。その方は的確に哺育育成をやられる。だから事故率は極めてゼロに近かった。ひとりの人を雇う事によってボトルネックをなくした。もう一点工夫があります。昔家畜商だった人をパートで雇うんですね。従来は農協を通じて家畜を買っていたんですが,家畜商の人を入れる事によって,的確に良い牛をリーズナブルな価格で導入する。そういう仕入れの工夫をやったわけなんです。良い牛をリーズナブルな価格で,哺育育成では絶対事故率を落さない。それでいままでの肥育技術は持っておられるので,そういう形で出荷される。トータルな形で見れば,経常利益を上げるという経営なんです。わたしはそこから学ぶ点といえば,単に頭数を増やしていくだけではなく,組織を変えていくとつなげて行っていただきたい。
 一点のことに集中してしまった訳ですが,生産面からは安富さんのお話にありましたように,単なる生産から,付加価値を高めるために加工部門を導入されようとしているのですが,その時にはその部門でプロを育てていただきたいと思っています。時間はかかりますが,そういう形で全体で利益を上げることが大事じゃないのかなと思います。
 他県の事例で紹介させていただきました。

(赤木)ありがとうございました。それぞれの立場からひととおり意見を伺ったところです。今度は,これからはどのような経営感覚でやっていったら岡山の畜産が進展して行けるのかそれぞれの立場で伺いたいと思います。ある程度夢的ものでも結構ですので,現状を踏まえてこういう風にしたら良いのではないかとようなことを伺いたいのでよろしくお願いします。

(安富)私は,後継者ができまして,それまでは夫婦2人とパートでやっていました。まあ自分の思うままできたということで,子供とはいえ筋の通らん事を云うと親父の威厳にかかわるということで,気を使いながら仕事をさせようと思っています。今は給料を払っていますが,そのうち自分が給料を貰うようになりたいのですが,そういう中で,具体的にはアイスクリームの加工をしている。大学を出ているとはいえ応用が利かないというんですか。単純な道具を持って行く基準が,なにか規定されているマニュアルのようなことはできるんですが,そっからこういう風にこうやってもっていくんだという事ができないです。従って,マニュアルのない社会に放り出されたら,耐えられないじゃないかと思うんです。自分で基準を作ってやる。親の経営を取ってくれれば良いのですが,渡すにはとてもじゃないできない。黒籔さんからお話があったんですが,他の道から入ってきた人の方が差がある,やる気があるのは勿論ですが,基準がいっぱいこしらえることができる,どういう状況におかれても,支点がもてて,そこを軸に判断できるんだという後継者を社会全体,もしくは産業が育てていく事ができれば,後継者ができるんじゃないかなと思います。

(黒籔)後継者ができんできんと言われるが,親がある程度儲けないと後継者はできない。借金で苦しい苦しい,返済ができないと言っていたのでは後継者はできない。後継者ができている経営は,それなりの経営はできている。後継者ができないと言っているところは,やはり経営内容が良くない。私ごとで申し訳ないが,私の子供も大学行っていて,サラリーマンになると勝手に決めていたんだが,私は,一千万かけて大学にやっているんだ,他人の会社を儲けさせるために大学にやった訳じゃないんだ。行くのは行っても良いけど,財産とか資産とか権利を主張するんじゃないぞと一切放棄しろよと。変な話だけど,私一代で止めるつもりだった。確かにえらいとか汚いとか,特に畜産は多いところなんですが,なんか罪人と言うか,養豚は嫌われる産業のなかに入っている。悪いような事をしているように見られる。確かに20何年やってきて,実際迷惑をかけたことも事実だし,そういう時代だったんだけども,そういうこともあったから近所から養豚がかなり毛嫌いされている。その中で,何も子供に継がせなくても良いと思っていたし,止めたら全部売るつもりでいた。その過程の中で,子供もやる気なったので,馬,ダチョウ,鶏を飼育するなどして,閉鎖的ではなく,オープンにした見せる養豚経営に方向転換した。従来養豚経営は衛生問題を盾に,立ち入り禁止にしたり,汚いところを見せたくないと理由もあった。現在は,保育園から見にきたり,おばあさんが来たりしている。ずっと人の出入りが絶えない。昔は奈義町でも鶏を飼ったり,和牛を飼ったりしていたのが,極端に減ってきた。例えば養豚では1町村に1戸切るくらいになってきた。そういう時代において,養豚,畜産を続けていくには,特に街のほうでは鶏も見た事がない。確かにそこでは鶏を飼っているんだけど,見せてもらえない。牛も飼っているんだけど見せてもらえない。それを逆にとって,いつでも見にきなさいよ。そのためには,豚だけでは,臭い汚いと言われるので,ダチョウだとか馬だとか飼って,馬乗せてといったら,日曜日だったら馬に乗せたり,そのようなやり方に切り替えた。これからの若い人間がやっていくためには,一代目はたいへん無理してやっているから,二代目はある程度ゆとりが出てこないと本当ではない。そうすると貯金も大事なんだけど,労力的なゆとりとプラス中身,外観,花を植えたり,動物を飼うなどして,方向転換をしていきながら地域と溶け合い,受け入れられる畜産を続けていく,儲ければ儲けるほど孤立していく。特に儲けたもので,税金も大切なんだけど,地域になんらかの関係ある,地域に貢献していく。そういう方向転換をして現在に至っている。
 儲からん儲からんと言う前に,自分の所得がいくらだと妥当なんか,例えば酪農でもなんでも,給料がいくらだったら良いのか。30歳のときはいくらだ,40歳の時はいくらだ,50歳のときはいくら残ったら良いのか。儲からん儲からんと言っていても,結構遊んでいる人がいる。乳代でも,豚でも,卵でも同じだけど,定価がみな違うんだな。ある人は100円もいたり,90円もいたり差がある。儲からん儲からんと言いながら,結構使っている。例えば,豚だったら100頭飼っていても,50頭飼っていても,同じように飼う費用がいるし,同じように生活費を使っている。本当なら,それなりに応じて使わなくてはいけないのだが,そうではないといったのが現状だろう。日本の畜産が簡単に滅びる訳はないだろうと思うのだが,問題は自分のレベルがどの位置にあるか,的確に自分で把握するのが一番だと思う。うちの場合,これが妥当かどうか分からないのだが,売り上げに対して人件費が10%を超えた事がない。豚価が高ければ,人件費が下がってくる訳で,10%以内が目標です。暴落して,人件費が15%になるときがあるかもしれないが,経営が危機になる。儲からんというより,自分でいかに儲かる努力をしているかということを子供にも言ってある。自分の給料は自分で決めれるんだと。自分の給料は自分で決めろと「26歳だったらいくら要るんだ。いくらが妥当と思うんなら。」そういうやり方で,共同経営者的に移行してきて4年目になるんかな。親子と言えども共同経営者的に移行しながら,いずれ取ってくれるか,譲るか,ともかくそういう段階がくる訳だ。自分で自分の給料を決めと,休みにしても自分で決めと,ただし1週間に1回とか基本的な事をやっていけば自然に後継者はできるんじゃないかと思う。いつまでたっても親離れができんとか,子離れができんとか,ずっとやってたんじゃあなかなか子供も張り合いがないだろう。今,豚の導入なんかも,半分以上は任せてあるし,そうしないと分からんだろう。自分で損して自分で得しないと分からんだろう。そういうことで,将来畜産は自分のレベルをどれだけ知っているかが大事な事だと思う。

(坂本)先ほど話しましたように,養鶏はものすごく戸数が減っている訳ですね。わたしもかれこれ30年近く,この業界に入って,まだ若手といって,地域参入が少なかったということは逆に後継者がいない。極めて少ないということになるんですが。基本的には,先にやっている親が「これは良い仕事だ」と言わなければ,態度にも出さなければ後継者がやるはずがない,というふうに思うわけなんです。どうしてこんなに少ないんか考えると,比較の問題だから,今まで良い仕事が,後を継ぐよりもあったことが一つの事実ではなかろうかと思います。いずれにしても,少ないということで,養鶏について言いますと,皆さんご承知のとおり,養鶏というのはあまり土地の制約を受けないわけですね。草地も要らないし。輸入飼料で,特に最近は立体的な畜舎構造で坪当たり非常にたくさんの鶏が飼える。そういう意味では,確かに,畜産は生き物を扱う仕事なんで,農業畜産に入るんですが,基本的に農業は農地に結びつくのが,土地に結びつくのが農地だとすれば,そういうところから見ると,(養鶏は)農業的ではない。ある種の1.5次産業的な位置づけになるだろう。そういうことになると,私は先ほど(横溝)先生がおっしゃいましたとおり,中小家畜について学習の経済ということをおっしゃいましたが,はじめての言葉なんで,十分理解できてないと思うんですが,個々の能力を有機的に組み合わせて,活力のある組織を考えなさいよということだったと思うんですが。とくに中小家畜のなかでも,我々がやっている養鶏というものは,特に必要な畜種ではないのかなあと思います。一農家が資金の手当から,生産から販売までというのは新規参入は極めて難しい時代に入っているんじゃないかと思っています。やはりみんな自分が社長だということではなくて,協力するところでは協力して,有機的な組織を作っていく。特に我々のやっている養鶏というのは,そういう形で必ずしも親が鶏を飼っていたから,後継者だ。というふうに限定せずに,例えば,電気工事店に勤めていたと,生き物を扱うという生産組織に入って,この分野を担当する。先生のおっしゃるとおり,今,鶏の飼育も非常に電気や機械の知識が必要ですから,そういう人が参入すれば鶏を飼う飼養管理の技術はある。(飼養管理は)こちらでやる,そういう人が入れば,それをうまく活用すれば,そういう生産組織というのは,生き生きとしてくるように思う。そういう意味で,われわれは受け皿を目指していく。それで参加してくるものが増えれば増えるほど,広義の後継者が増えたというふうに私は思っています。養鶏は土地に立脚しないだけに,やっぱり他の畜種と違う面があると思っています。

(花房)私は後継者なんです。後継者になるっていうことはみなさんがおっしゃったように,儲かっていなければいけないとか,暇がある程度なければいけないとか,もちろんです。僕が思うのに,どっちにしても畜産というのは,たくさんのお金を投資して,膨大なお金が必要になってくる。皆さんおっしゃったように,他人では,出来なくなってくるんじゃないかと思っています。今,残っている人たちが,次の世代の畜産農家とならなければ,無くなってしまうのではないのかなと思います。そのつもりで,ぼくらも子供たちにいろいろと話しているわけです。僕らが,伍協牧場の代表理事を僕の代に,もらってから3,4年しか経っていないんです。僕らが頼りないからという理由もあったんですけど,僕らも頼っていたということもあって,あの人に任せておけばやってくれるだろうという気持ちがあって,僕らも真剣でなかったということがありました。案外,後継者が頼りなくても任せてもらえば,必要なときに忠告を与えてもらえば,それはそれでまわっていくんかなと,早めに放してくれたほうが良かったなあと今では言っているんです。今では若い者の中の結束というものも前よりも増しているかなという気はしています。今後は直販体制に取り組みたいと思っていますが,この場合,市場と直販の比率は半々が理想じゃないのかなと思っています。私の個人経営では和牛肥育に変えたんですが,それが一つの転機だったのかなと思います。追込まれるということがあるんですけど,一生に一度や二度は転機を追込まれた状況で,頑張るということが必要かなあと思いますので,なんとか早いうちにアンテナショップみたいなものを作りたいなと思っているところです。それから,うちはそうやって,昭和48年から農事組合法人でやっているんですけど,農事組合法人といいますと,構成農家が結局全部社長扱いですから,私は便宜上代表理事にやってますけど,その,誰もが一つの意見を持っていますので,そうなってくると,皆の意見が一致しないと何もできないということがあったり,法人としてのメリットデメリットがあるかなと思うところです。その辺,どうやって解決していくかなと,また新たなることを始めるとしたら,別会社を作るとか,そういう方法しかないかなと思っています。

(赤木)ありがとうございます。それでは今後の展開として伺ったんですが,横溝先生のほうから,ご助言なり,お伺いになりたいことがありましたらよろしくお願いします。

(横溝)非常に皆さんから,大切な点を指摘していただいたと思います。まず,経営者の役割,もしくは機能が随分広がってきたという印象を持ちました。従来は生産面だけ,家畜飼養面といったところが中心だったわけですけれども,それが,流通面,財務面からも考慮していく必要があると,いうことで経営者の役割が広がってきたと思います。
それから,後継者の育成ということでいろいろな示唆を与えていただきました。例えば,安富さんのほうからは,後継者というのは,マニュアルを単に使うんじゃなくて,マニュアルを作るように教育していく必要があると,ご指摘いただきました。それから黒籔さんのほうからは自分で自分の給料を決めなさいと,帝王学といいますか,次期の経営者としてやっていくための教育をされているように思います。坂本さんのほうからは,むしろ後継者というよりも,新規参入面で,受け皿を作ると,そこにいろんな業態から募っていって,全体としての有機的な結合を目指して,経営を展開していくというユニークな,養鶏といいますか他の畜種と違う側面があると思いますが,そういう話をしていただきました。それから,花房さんのほうからは,後継者ということで,早い段階で経営委譲していただいたと,それで創意工夫して取り組まれているという話ですね。現在はホルスタインから和牛に転換されるという,精神的なプレッシャーを感じつつ,克服していくこと。経営形態面では農事組合法人ということを選択されて,そのメリットデメリットを話していただきました。確かにみんなが社長ということで全員が経営に参画できるという良い面と,全員の合意が得られなければなかなか大きな経営の変革ができないとそういう点をいただきました。そういうような皆さんのほうからご意見をいただいたわけですが,若干私のほうから質問といいますか,聞きたい点は
「経営面で,確かに,生産面だけでなくて流通面,財務面ということで,流通面ではいろんな販売面の工夫とか教えていただいたんですが,財務面で皆さんのほうでこれが大切ですよと,経営をやっていく上でこの点が大事ですよということがございましたら,教えていただけたらと思っています。」

(安富)私個人経営ということでやっていますが,財務面のほうが,どうしても何か新しいことをするというと,借入れをしないとできない。そのなかで制度資金等最近かなり充実してきたんじゃないかなと思います。やる気さえあれば手を施して,自分なりに整備すれば,内部の保留が出来るんじゃないのかなと。満足しているほうではないんですけど,だいぶ優遇されてきたんじゃと思います。

(黒籔)私の持論なんですが,年間売り上げに対して,半分以上の借入れが出来たときには止めたほうが良い。わたしは昔からずっとそういう風に思ってやってきました。といって,税金を払うのは馬鹿げているので,馬を買ったり,自動車買ったりするけど,それぐらいの借入金を持っていたぐらいのほうが,規模拡大するときに便利が良い。利益が上がっても,税金で持っていかれると朝から晩まで働くものにとって,働く気がしなくなる。財務的に,バランスのとれた衛生費の問題でも,飼料費の問題でも,今年の実績を検討して来年の計画を立てるときに,厳重にどこがはみ出しているか,どこが欠陥があるか的確に把握して,もとに戻すというか,修正するということが一番大切である。子供にも良く言っているのですが,売り上げは自分の金じゃないんだぞと,支払いをした残りが自分の金なんだぞと,それは自由にしていいと言っている。先に使うなよ,払うもの払ってから使うんだぞ,というのがわたしの考えているやり方です。

(坂本)昔から良く言われるように,事業は人・物・金ということで,金ということを考えれば財務は三大要素の一つで,これも充実していないことには仕事というのは上手くいかない。財務の技術的なことといえば,得意分野ですが,特に雇用ということを考えていくと,家計と経営の金の分離が,畜産経営においてまず第一に肝心なところであろう。逆の言葉で言うと,金においても公私混同を省くことが社員あるいは金融機関を含めた関係者から信頼を得る大きな要素だろうと思います。今,税制の問題で,国際的に比較して,法人税も個人の所得税も,高すぎるという議論が新聞なんか見ると,国全体でも。例えば我々のような同族法人でありますと,大体60%ぐらい課税をうけます。金融機関から見ると,所得をあげて納税をして,あと定期準備金を詰んでいくとバランスシート(貸借対照表)では,詰めば詰むほど評価が高くなって,金融の調達も容易なるのですが,黒籔さんが言われたとおり,同族法人の60%課税というのはきついんじゃないかと思います。なかなか,資本蓄積をしなさいと言われても,毎年儲かることが補償されていれば別ですが,特に畜産価格というのは浮いたり沈んだりと,成り行きといったら無責任になりますけど,そうなるとわからんところがありますからね。財務を充実するということは,余程いろんなことを考えてやらないと,難しいし,一朝一夕にできない。財務政策といったら言い過ぎになりますが,そういうポイントを押さえて,やっていかないと金融機関を含めた周りから評価を得るような財務内容にはなっていかないではないかと思っています。

(花房)うちは農事組合法人として,税理士さんに頼んで月に1回バランスシートを作成しているんですけど,そういうふうに個人も合わせて自分の経営というものをどんぶり勘定ではなく,数字として表す必要があると思います。畜産会にお願いすれば経営診断もしてもらえるんで,それらを十分利用して,自分の経営を数字として知るということが大事かなと思います。牛の場合は税制の問題がありまして,出来るだけ内部留保して,今のうちに力を付けておきたいと思います。これは,畜産全体ですが,三代にして成るというのが持論でして,一代目結局建物を建てたり,基盤を作るのが精一杯で,収益というところまで行かないと思います。畜舎等建てても減価償却20何年というということですので,それがぐるぐる回りながら余裕が出てくるまでには三代ぐらいが必要なのかなという気がします。これを言ったように何代も続けて,日本の農業を支えていかなきゃという気持ちです。財務については,借金をするというのですが,税制の問題とか,いろんな問題があると思うんですけど,金利が安いからといって,借りるというのはなかなか(できないし),できれば自己資金で回していくほうが,腰の強い農業になるんじゃないかなと思っています。

(横溝)それぞれ立場といいますか,経営形態の違いから明確な戦略というものを教えて下さいました。財務面というのは非常に大事で,やはり自分の経営が今どの状態にある実態を知る上で,非常に大事。えてして財務諸表を作ることで終わってしまうケースが多い分けなんですけど,皆さん,それを元にして,自分たちの経営がどのような状態にあるのか的確に把握されている。花房さんの場合ですと,税理士さんを利用されたり,畜産会でコンサル(経営診断)を受けておられたりということで,それを生かしておられるのではないのかなと思っております。
 皆さんにお伺いしたい点なんですけど,先ほど安富さんのほうからは,付加価値を高めるということでアイス(クリーム)というお話をいただいたわけです。今後の展開ということで,経営規模ならびにアイスクリームのような新しいもの,(今は)個人経営なんだけども法人化とか,ということでお話いただけたらと(思います)。だいぶ重複する点があると思いますが,お話していただけたらと思っております。

(安富)アイスクリームを何故やったかといいますと,自分で加工して販売というのは,個人では採算が合わないですね。けど,これをやらないでほっといたら,いつまで経っても水面から首が出ない。我々働くだけが農家じゃないんだ。畜産,酪農はずっと良かったから,今になって言うのは,波のかぶったときに何をいうかということもあるんだけど,今の輸入自由化が始まってきた形から言うと,昔の良い時代はないと考えると,このまま行ったらだめだ。何も処理加工しているメーカーが全部の権利を握っているわけではない。生産者もそんなところに入っていけるんだぞと。アイスクリームについては個人の生産者が処理加工するというのは,岡山県では始めてなんですが,岡山県酪連の中でも,そういうマニュアルも作っていかないといけないと酪連の方からもお話を伺っていますが,私もそう思っています。生産者も必ずそうい希望というんですか,トンネルでもいいですから明かりの見える希望がもてる分野にも入っていけるだと,僕みたいな個人がやれるんだから,だれでもやれるんだぞというような,ひとつの例としてなっていけば良いなと思っております。ただ生産するだけ,原料供給に終わるだけの酪農でなく,先生の言われました中山間地といいますか,草地があったりもしくは放牧地があったり,中山間地もしくは都市近郊型という酪農における,公害面でも厳しいところで,(その)中でのマイナス面でなくって,有利な部分を,自分のほうへ引き寄せたというやり方もできるんではないのかと思っています。

(黒籔)例えば野菜を作っている人でも,朝市とか無人市とか販売されているという実態がある。わたしも何年か前からハムとか,ソーセージとかやっていて,人が思うほど楽ではない。やっぱり,それで儲けようと思うと,こっちがおろさかになる。こっちが儲かれば,あっちが駄目になる。一応,付加価値をつけて売るんだという気持ちはあるんだけど,中途半端にやると,所詮遊びに終わってしまう。ゆとりとしてやるんだったらやればよい。けど,儲けたらそのくらいのゆとりがないとおもしろくない。豚の場合,手作りハムとかたくさんやっておられるが,わたしが知っている範囲でもほとんどが駄目で,なかなか両立しない。例えば,豚舎があるようなところではハムとか何とか,あまり立地的に売れるところがない。そういう関係があるんでなかなか難しい。まったく遊びなんだけど,黒豚のハムとかベーコンとか,シールも風の村牧場と名づけたものを作ったりして,歳暮とか中元とか配っている。注文があったらやっているが,採算にはとても合っていない。所詮これは,協和養豚もこんなことをしてますよと,肩書きみたいなもんで,一応何とか経営ができるようになったんで,ゆとりの一貫だと思っている。直接ハムやソーセージでなくても豚飼いをやっているからこんな事ができるんだと,そんなものを自分なりに見つける。誰も豚を飼っているからハムを作らんといかんのではなくて,豚飼いがチーズ作ってもアイスクリーム作っても逆に言えばかまわんのじゃないかと思う。

(坂本)卵の場合は,家庭で消費されるテーブルエッグとわれわれは称しているのですが,大体(売り上げの)55%,残る45%が加工用,こういったケーキの原料,業務用外食・レストランといったところで消費される。やはり,その向き向きにあった販路を確立するということが大事である。そういう評価を得ながら,生産の規模を決め,その努力によって決まってくると思う。私の理想は,大勢の人,学習の経済というのがいたく共感するんですけど,組織,小さくても会社,やっぱり多くても参入者,構成員の増えることが一つの生きがいというのか目的ではなかろうかと思うので,その坂本産業という組織に参加して,組織を大事にしながら,われわれはこれによって生活の基盤の大きな部分を占めているように思う。みんなでこの組織を担ごうと,こういう人を増やすことによって,増えれば当然生産規模が増えてくるわけで,また,それは市場の評価してもらわないとやりますやりますといっても買ってもらえない。そういうふうに市場の信頼と会社を構成する人のやりがい,満足が常に良い状態になるように,そういう方向で,やっていきたいと思っています。

(花房)私たちは百姓というか農家の集まりなんです。もちろん財務もしてもらっていますし,従業員もいるんですけど,基本的には企業ではない。今度は,これ以上新たなことを考えようとすると,増頭するにしても,新たないろんな小売りということまでするにしても,農家というのから離れて,企業のような形になっていかないと,一つの転換点になるんじゃないのかなと思っています。私は,アンテナショップを持ち,大阪市場などに評価してもらえるような,レベルの製品を,安定的に供給していきたいと思っています。中央の市場と小売り,自分で販売すること。牛に関しては,ほとんど生食用で,加工品というのはまず無いと思います。ローストビーフとかあるんですけど(ほとんど無いと思います)。それも,できたら,すぐ食べなければならないようなもので,方向としてはレストランとかそういうものしか,自分で売るとしたら無いと思います。ずっとまえから,お金を掛けないでやる方法はないかなと,思っていたんですけど,インターネットを使って小売りをしたらどうかなと考えております。

(赤木)最後に横溝先生からまとめとして,何か。

(横溝)皆さんのほうから,交易条件を厳しいのは厳しい訳なんですけど,創意工夫を凝らして,なおかつ積極的にチャレンジされようとして,ぜひ皆さんに,地域農業のリーダー的な存在として,期待を持っております。
 今日は本当に皆様方からいろんな示唆をいただいたように思っております。これを取りまとめとるということは到底私の能力ではできないわけなんですけど。これから勉強させていただきまして,皆さんから教えていただいたことを一般化できればということを考えています。それが,これからついてこられる畜産農家のために,少しでも役に立って,地域として発展できればと考えておりますので,今後とも皆さんから,ご示唆なり,ご教授いただけたらと思っておりますので,どうかよろしくお願いします。

(赤木)予定の時間が参りましたので,これで座談会を終了したいと思いますが,今日皆さん方から,お話を伺ったわけですけど,最近特に国内の自給率が下がってきているということで,当然岡山県も,農家が減っているので,これ以上減らないために,どうあるべきかというようなことも示唆していただきたいと思いますので,我々も関係団体として知恵をしぼりながら,また,一生懸命勉強して努力してまいりたいと,考えておりますので,今後ともよろしくお願いします。
これから勉強させていただきまして,皆さんから教えていただいたことを一般化できればということを考えています。それが,これからついてこられる畜産農家のために,少しでも役に立って,地域として発展できればと考えておりますので,今後とも皆さんから,ご示唆なり,ご教授いただけたらと思っておりますので,どうかよろしくお願いします。