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〔特集〕

「北の大地・北海道桜野牧場だより」

岡山県畜産公社北海道桜野牧場 場長 中 山 敏 之

 八雲町の歴史ある開拓の地「桜野の里」を譲り受け岡山県が6桜の牧場を開設してから20数年が過ぎようとしている。
 あらためて,時代の移り変わりと,時の流れの速さに深い感慨を感じる。 牧場周辺は,野田生岳,砂蘭部岳を背景に足元にはヤマメ,イワナ等渓流魚の宝庫野田生川のせせらぎを聞きながら,イチイの馬頭観音,桜野の里「自然温泉郷 熊嶺荘」,赤いとんがり帽子の桜野牧場事務所,ももたろう桜温泉,北海道酪農の象徴タワーサイロ,緑の絨毯を想わせる広大な草地らを背景に,北海道生まれのホルスタインとおかやま和牛が悠然と草を食んでいる姿は,今では八雲桜野にはなくてはならない牧歌的な風景として北の大地の自然にとけ込んでいる。

「桜野の桜」
 北海道には日本一の桜の名所がある。
 静内の「二十軒桜並木」である。
 二十軒とはそんなに長いことはないだろうと思って歩いたら,道路の幅が二十軒ということで,桜並木の長さは4キロメートルあった。
 今年は岡山の桜と北海道の桜を二度見た。
 桜が北海道で咲くことすらあまり認識がなかった私にとって望外の喜びであった。
 今「桜野牧場」には敷地のほぼ中央を貫通している道道(岡山県の県道のこと,幅8メートルの二車線,国道並の道路で将来は八雲町から日本海沿岸の乙部町に抜けることが決定している)の両側に約1キロメートルにわたり桜並木を八雲町の協力で造成している。
 まだ,7,8年生で咲く花も少ないが将来はさぞかし立派な桜並木になることであろう。

「桜野のキタキツネ」
 桜野牧場では草地を約100ヘクタール管理して年間約500トンの粗飼料を収穫し,乾草又はロールサイレージで保存しています。
 今年の雪解けは早かったが,5月〜7月の低温が影響して牧草の生育は遅く,一番草の刈り取りが遅れ,ようやく7月の終わりに終了した。
 約100ヘクタールの草地の反転作業は例年牧場長の役目になっており,一区画の草地の反転が約2時間ぐらいかかり,その間,北の太陽とはいえじりじりと照りつけるため,「あっ」という間に真っ黒に日焼けした。
 長い反転作業の中,楽しみもある「キタキツネ」が出てきて食物をあさる姿が時々見られることである。この時期のキタキツネは北海道旅行パンフレットに載っている写真のような姿ではないが,(この時期がちょうど脱毛の時期に当たる)「キタキツネ」特有の歩き方で,他の野生動物と違って,人間や機械の近くに姿を現すことが多い。 トラクターで作業をしながらシャッターチャンスを狙っていたら,うまい具合に現れたのが別掲の写真である。現像したら「キタキツネ」は豆粒のように小さく写っていた。

「八雲祭りとおかやま和牛肉」
 桜野牧場では毎年6月の第3週に行われる「八雲祭り」に岡山特産品の展示販売を出店している。 「八雲祭り」は今年も6月21日快晴のもと八雲町商店街で盛大に開催された。
 備前焼の「ぐい呑」,ジャージーヨーグルト,おかやま和牛肉の串焼きは飛ぶように売れました。
 なかでも,和牛肉の串焼きは八雲祭りにはなくてはならないものとして定着しており,「柔らかい,ジューシー,美味しい」と言っては2回,3回とビール片手に買いに来てくれる八雲の人達に大人気であった。
 八雲祭りのめいんはなんといっても行灯山車行列である。
 高さ約2メートルの山車のうえで,大きな太鼓にまたがって,太鼓をバチでたたくあでやかなサラシ姿の娘若衆には,八雲の港に生きる女性の豪快さが強く印象に残った。