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「高泌乳牛における飼養管理技術U」

岡山県総合畜産センター

(飼料中の粗タンパク質(CP),エネルギー(TDN)と乳量,乳成分について)
 前回は,飼料給与回数によるルーメン性状,乳量,乳成分について述べましたが,飼料給与以外にも,ルーメン発酵に影響を与えるものがあります。

1.飼養中の粗タンパク質(CP)とエネルギー(TDN)のバランス
@ 粗タンパク質(CP)が不足すると

 微生物タンパク合成の原料が不足するため,ルーメン微生物の活動が低下し,採食量,微生物タンパク質合成量が減少します。その結果,乳量は減少し,乳タンパク質率も減少します。
A エネルギー(TDN)が不足すると
 微生物合成のエネルギーが不足するため,粗タンパク質が十分でも微生物タンパク質合成量が少なくなり,給与した飼料タンパク質が無駄になります。
 その結果,乳量は減少し,乳タンパク質率も減少します。
 また,余ったタンパク質は,ルーメン内でアンモニアに変換され肝臓で尿素へと変されますが,このときエネルギーが無駄に消費されます。
B 粗タンパク質とエネルギーが不足すると
 ルーメン発酵が弱くなり,微生物タンパク質合成は少なくなります。
 飼料養分摂取状況の変化による乳量,乳成分の変化を以下にまとめてみました。

1)乳量,乳成分の養分摂取による影響

 
乳量
乳死亡率
無脂固形分率
エネルギー不足
↑または→
エネルギー増加
タンパク質不足
→または↑
タンパク質増加
↑または→
→または↑
注:↓(減少),↑(増加),→(不変)

  飼料による乳量の増減と無脂乳固形分率の増減は,ほぼ平行して変化します。
 乳脂肪率は,乳量,無脂乳固形分率と反対の動きをします。
 乳量,乳成分が同時に減少する場合には,気温の上昇,乳房炎などの給与飼料以外の要因が影響している場合があるので原因の究明を行う必要があります。

2.飼料中の粗タンパク質(CP)とエネルギー(TDN)の分解性のバランス
 飼料中の粗タンパク質(CP)とエネルギー(TDN)の関係をもう少し詳しく見てみると,ルーメンの中で,分解され微生物に利用されるものを,分解性エネルギー,分解性タンパク質といい,それぞれの給与飼料中の割合もルーメン発酵に影響を及ぼします。
 1)ルーメン内エネルギー過剰の場合

 2)ルーメン内窒素過剰の場合

 ルーメン内エネルギー過剰であっても,ルーメン内窒素が過剰であっても,小腸で吸収されるタンパク質量(□+■)は同じ量となっています。
 しかし,ルーメン内エネルギーが過剰な場合は,余ったエネルギー(2つの○−デンプンや糖分)がルーメン内のプロピオン酪農度を高め,過肥牛を生み出すこととなります。
 また,ルーメン内窒素が過剰な場合は,余った窒素(アンモニア−2つの△−溶解性,分解性タンパク質)が長期にわたると肝臓障害を起こすこととなります。
 どちらにしてもルーメン発酵のバランスが崩れることとなります。

ま と め
 以上のことから,飼料給与の現状と照らし合わせてみると,コーンサイレージを主体で給与している場合は,それだけではルーメン内エネルギーの過剰が予想されるので,過剰な分解性エネルギー分だけの分解性タンパク質を加えてやれば微生物体タンパク質となり生産性の向上につながります。そのためには,分解性の高いタンパク質(大豆粕等)を補足する必要があります。なお,分解性の低いものは小腸等の下部消化管で消化されるため,ルーメンバイパスという考え方が最近導入されています。
 また,アルファルファやグラスサイレージを主体で給与している場合では,ルーメン内窒素の過剰が予想されるので,分解性エネルギー(圧ペントウモロコシや大麦)を給与することにより,微生物体タンパク質が増加し,乳量や乳タンパク質の向上が図られることとなります。
 乳牛の能力を最大限発揮させるためには,ルーメン内微生物の能力を十分引き出すことが必要であり,微生物生産にあった,エネルギー,タンパク質のバランス,分解性のバランスを考える必要があります。