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牛の受精卵移植におけるクローン技術と応用

岡山県総合畜産センター 経営開発部

 イギリスにおけるクローン羊のドリー以来,受精卵いわゆる胚による家畜生産から,体細胞をコピーした体細胞クローンが注目されるようになってきました。それまでは,卵子と精子の受精による胚を発達(分裂)する段階で分離して複数の胚を作出する技術がクローニング技術と言われていました。この胚によるクローニングでは,既に全国で380頭の牛が誕生しています。当センターでも新聞報道などでご存知のとおり,この胚クローンと体細胞クローンの受胎を確認しています。
 このクローニングは,農林水産省の畜産試験場における研究員の長期研修期間中に農林水産省と協力して実施したものを使用していますが,本年度から地域先端技術実用化研究として本格的に受精卵のクローニングに取り組むこととしています。体細胞クローンについては,石川県の「かが」,「のと」以来マスコミに注目され,また,その後の報道では生存率が低いことへの疑問を論調としたものが多くなっているように思えます。
 畜産センターでは,PCR卵(雌雄鑑別卵)の供給の次のテーマとして,胚クローンの供給へ向けた技術実用化と体制づくりに努めていくこととしています。現在取り組んでいる先端技術の研究は,平成14年までとしていますが,早期の実用化へ向けて努力しています。一方,クローン和牛は登録が不可能など現在の制度,仕組みにもまだまだ整備の必要な点があるように感じます。そこで,受精卵利用の実例を上げながら,本県における受精卵移植及びクローン技術の応用法について述べてみます。
 ここに取り上げる愛知県の例は,優良応用例として取り上げたものです。愛知県西尾市は,酪農と和牛繁殖経営が混在化し,岡山県全域と同様の家畜飼養形態と言えます。同市のM氏は,家畜繁殖農家と分類される経営で表に示すような飼育形態です。受精卵を専門とする開業獣医師や酪農家20戸とグループを組み図のような仕組みで,約60頭を子牛市場で販売しています。    M氏の経営では,採卵用の未経産牛は,採卵成績が低下してくると未経産肥育に仕向けています。単純に成牛3頭で,年間50頭以上の子牛販売経営が成り立っています。経費の負担は,図に示していますが,獣医師の成功報酬6万円を含めて7.5万円程度です。したがって酪農家は,1〜2ヶ月ほ育育成することで10万円程度の収入が期待できます。また,M氏の子牛販売収入は,年間2,100万円くらいになっています。

表 M牧場の和牛飼養頭数
種類
頭数
備考
経産牛

 
未経産牛

21

供卵牛
育成牛

55

ET和子牛

80

 

 幸い,本県は西日本有数の酪農県であり,おかやま和牛という立派な和牛産地です。また,和牛繁殖農家では育種価の高い繁殖牛に対する関心が強くなっています。このような時期に,M氏の例までもいかなくても,一定レベルの育種価を有する「おかやま和牛」の繁殖牛群の整備に受精卵移植技術とクローン技術の活用が重要な時期になっていると痛感しています。