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〔広場〕

阿新局管内の肉用牛情勢

阿新地方振興局農林水産事業部 畜産係

1.はじめに
 阿新地域は岡山県の西北部に位置し,新見市,大佐町,神郷町,哲多町及び哲西町の1市4町で構成されています。
 この阿新地域は古くからの肉用牛生産地で,『千屋牛』の名でよく知られており,繁殖牛は県下の約1/4を占めています。

2.阿新地域の肉用牛の動向
 現在管内における肉用牛の飼養農家数・頭数の推移は図1のとおりです。
 肉用牛の主要生産地であるこの地域においても,飼育農家数・繁殖牛(成牛)頭数とも減少傾向がつづいており,平成9年はそれぞれ449戸,1,325頭と前年比90%強となっています。
 肥育牛では地域内繁殖肥育一貫経営の推進等により減少に歯止めがかかっており,平成9年は1,414頭と前年比110%と今後の増頭が期待されます。
 また,平成9年度和牛センサスによると飼養者の平均年齢は新見市の65歳を筆頭に一番若い大佐町でも61歳と全市町とも60歳を越え,飼養農家の高齢化が進んでおり,管理作業等が負担となっています。

3.共進会の概要
 阿新局管内では8月19日から27日にかけて,新見市をかわ切りに各市町の畜産共進会が阿新農業協同組合と共催で盛大に開催されました。
 飼育農家の減少・飼育者の高齢化等厳しい環境の中,哲西町畜産共進会の44回目を筆頭に伝統ある共進会が全市町で開催されたことは大変有意義なことと思います。
 表1は各市町の出品状況です。
 総頭数が減少する中で出品頭数は前年並みの173頭で,改良に対する意欲が伝わってきます。このうち62頭が阿新畜産共進会へ出品され,さらにその上位牛が県共進会へと駒を進めることになり阿新地域の改良の成果が発揮されることと期待されています。

表1 共進会出品頭数及び阿新畜産共進会出場頭数
 
出品頭数
阿新畜産共進会
8月19日
新見市

60頭

20頭

8月20日
哲多町

29頭

11頭

8月21日
大佐町

43頭

11頭

8月26日
哲西町

23頭

11頭

8月27日
神郷町

18頭

9頭

合計

173頭

62頭

 今回の一連の共進会において出品牛の約半数が但馬系の種雄牛の産子で,資質に優れ,藤良系の欠点である前躯等には優れたものが多い反面,後躯幅・腿等に物足りなさも感じました。
 出品牛は全体的に発育は良好で,ほぼ標準以上の発育をしており飼養技術の高さがうかがわれました。
 しかし,成牛の部では栄養度がオーバー気味のものが散見され,今後種牛能力が一段と重視されることを考えると一層の改善が必要と思われました。


4.おわりに
 管内の繁殖牛には,現在まで但馬系の種雄牛の血液が多く導入され,資質等の改良に寄与してきた反面,増体等岡山牛の特徴がやや薄れて来たように見受けられます。
 今後は戻し交配を行うなどバランスのとれた改良に目を向けていく必要を感じています。
 また,飼養農家の高齢化・婦女子化に対処し,作業労力の低減を図るため,和牛ヘルパー制度の活性化にも取り組んでおり,農家数・頭数減少の歯止めになることが期待されています。