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〔広場〕

「家畜の疾病とワクチンの正しい使い方(牛編)」

岡山県家畜畜産物衛生指導協会

 酪農及び肉用牛経営の安定をはかるうえから疾病,特に感染症による損耗を防止することが重要です。
 牛の感染症は,ウイルス,細菌,原虫などの病原微生物が体内で増殖することにより発病します。
 また,その発病の誘因としては,飼養管理の失宜,環境不良,密飼,輸送等のストレス,初乳給与不足などがあります。
 したがって,感染症の発症についても,病原微生物側と牛側のいろいろな条件及びこれらをとりまく環境等により非常におおきな差があります。
 それぞれのワクチンには,それぞれ異なった使用方法があり,ワクチンを正しく使用することによって,その目的とする感染症を確実に予防することができます。
 使用にあたっては,次のことを必ず守ってください。
○ ワクチンは必ず2〜5℃の冷暗所に保存しますが,凍結には注意してください。
○ 使用前には使用説明書をよく読んでください。
○ ワクチン接種の時期(生後日令,妊娠の有無,季節)を間違えないでください。
○ 一度開封(溶解)したワクチンは,できるだけ速やかに使用してください。

1.牛流行熱
 ウイルスによって起こる疾病で,一過性の発熱,呼吸促迫,筋肉の震戦,皮温の不整,関節痛等の症状を示す熱性の感染症で,一般的に夏の終わりごろから晩秋にかけて流行します。
 生ワクチン2pを皮下注射,さらに4週間後不活性化ワクチン3pを筋肉注射します。

2.イバラキ病
 口内炎,嚥下障害を主徴とするウイルスによって起こる疾病で,発熱,結膜の充血,浮腫を起こし,初期には流涙し,その後膿様の目やに等の症状がみられ,8〜11月下旬にかけて流行します。
 生ワクチン1pを皮下注射します。

3.牛伝染性鼻気管炎
 ウイルスによって起こる疾病で,一般的には生後2〜16週以内の子牛に発生率が高く,死亡率も15%以上にもおよび,急性の感染症で,発熱,鼻漏,流涙,呼吸困難,咳等を特徴とします。
 生ワクチン1pを筋肉注射します。
 なお,ワクチンは3〜5種混合ワクチンがあります。
 3種混合(IBR,BVR,P13)  
 4種混合(IBR,BVD,P13,RS)
 5種混合(IBR,BVD,P13,RS,AD7)があり,これらは2pを筋肉注射します。

4.アカバネ病
 ウイルスによって起こる疾病で,特に妊娠牛が感染すると流早死産,子牛の関節湾曲,大脳欠損など約1/3の牛に異常産が起こり,大きな被害をもたらします。
 特に胎令の若い胎児では流産に気付かないこともあります。
 蚊やヌカカなどの吸血昆虫により伝播すると考えられ,牛が感染するのは夏期から晩秋に限られていることも本病の特徴の一つです。
 生ワクチン1pを皮下注射します。

5.炭 疸
 炭疸菌によって起こる急性敗血症型の法定伝染病で,人にも感染する人畜共通の感染症です。
 この菌は空気に触れると芽胞を形成し,土中で長く生存する土壌菌の型を取り,感染経路は消化管,呼吸器,皮膚などの傷口から侵入し発病し,敗血症死をとげる場合が多く見られます。
 生ワクチン0.2pを頚側または,背側に皮下注射します。

6.気腫疸
 気腫疸菌の感染によって起こる疾病で,無痛性の気腫を主徴とする急性熱性の伝染病で,高熱,食欲減退,反芻の廃絶,浮腫等の症状が現れ,時間の経過とともに浮腫部を圧すると本病特有の捻髪音を発します。
 不活化ワクチンを子牛には5p,成牛には10p皮下注射します。

7.牛RSウイルス感染症
 ウイルス感染によって起こる急性熱性伝染病で,主な症状は呼吸器障害と発熱です。
 生ワクチン1pを筋肉注射します。

8.牛ヘモフィルス感染症
 細菌の感染によって起こる疾病で,髄膜脳炎,肺炎,関節炎などを主徴とする急性敗血症です。
 発病牛は発熱,跛行,起立不能,旋回運動,痙攣などの神経症状を示し,致死率が極めて高いのが本病の特徴です。
 不活化5pを3〜4週間隔で2回臀部に筋肉注射します。

9.牛アデノウイルス感染症
 ウイルスの感染によって起こる急性熱性伝染病で,呼吸器及び消化器症状を主徴とする疾病です。
 本病は季節に関係なく発生がみられ,特に導入直後あるいは放牧初期等の環境の急変により発生率が高くなり,発熱,食欲,元気の消失,流涙,鼻汁,下痢などの症状がみられます。
 生ワクチン1pを皮下または筋肉注射します。

10.クロストジウムの感染症
 嫌気性細菌によって起こる疾病で,気腫疸,悪性水腫,急性熱性のガス壊疸様疾病等の総称です。
 高熱,食欲廃絶,感染部位の腫張,患部皮膚の圧痛,皮下のガス貯留,跛行,起立不能,呼吸困難などの症状を示し,急速に死の転帰をとり,死亡率は90〜100%に達します。
 不活化2p臀部に筋肉注射します。

11.牛異常産
 アカバネウイルス,チュウザンウイスル,アイノウイルス等の感染により異常産が多発します。
 これらの病気は通常,秋から翌春にかけて発生します。
 4月〜6月にかけて繁殖牛にワクチン接種しますが,これらのウイルスを媒介する昆虫の発生時期が地域によって異なりますので,昆虫の発生時期までにワクチン接種を終えてください。
 不活化ワクチンは4月〜6月にかけて繁殖牛に初回牛は3pずつ4週間隔で2回,前年注射牛は3pを1回筋肉注射します。