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「家畜の疾病とワクチンの正しい使い方(豚編)」

岡山県家畜畜産物衛生指導協会

 養豚経営の安定をはかるうえから疾病,特に感染症による損耗を防止することが重要です。
 豚の感染症は,ウイルス,細菌及び原虫等の病原微生物が感染し,体内で増殖することによって発症します。
 病気の発生状況,症状の程度,被害状況は微生物の病原性の強弱や日令,栄養状態,ストレスの有無等,病原体と宿主側のいろいろな条件,あるいは飼育密度等飼育環境の状況や衛生管理の良否等により非常に大きな差があります。
 こうした豚の感染病を予防するには,飼養衛生管理に十分留意しましょう。それぞれのワクチンには,それぞれ異なった使用方法があり,ワクチンを正しく使用することによって,その目的とする感染症を確実に予防することができます。
 使用にあたっては,次のことを必ず守ってください。

◎ ワクチンは必ず2〜3℃の冷暗所に保存しますが,凍結には注意してください。
◎ 使用前には使用説明書をよく読んでください。
◎ ワクチン接種の時期(生後日令,妊娠の有無,季節)を間違えないでください。
◎ 一度開封(溶解)したワクチンは,できるだけ速やかに使用してください。

1.豚コレラ
  豚コレラウイルスによって起こる豚の急性,熱性,全身性の感染病で,免疫のない豚が感染したときは通常100%発病死亡します。
  生ワクチンを子豚では生後30〜40日令に1pを皮下または筋肉,注射歴不明の豚には,導入2週間後に注射します。

2.豚丹毒
  豚丹毒は自然界に広く分布している豚丹毒菌の感染によっておこる感染病で,品種,年齢等に関係なく感染しますが,生後3〜6か月頃が最も感染性が高いようです。
  症状は敗血症型,蕁麻疹型,慢性型等があり,敗血症型,及び蕁麻疹型では50%以上の死亡率を示すことがあります。
  慢性型は通常発育不良をきたす保菌豚となります。
  生ワクチンを子豚では生後30〜60日令に1pを2回目を必要とする場合は3ヵ月令に皮下または筋肉注射します。

3.豚日本脳炎
  日本脳炎ウイルスの感染(コガタアカイエカが媒介)によっておこる感染病で,妊娠豚が異常分娩(死流産,黒子等)をおこす。
  この異常分娩による損消はわが国の子豚生産を阻害している一大要因です。
  ワクチンは不活化ワクチンと弱毒生ワクチンの2種類があります。
  生ワクチンを繁殖豚では1〜2pを1〜2回皮下に2回目は4週間間隔で注射します。

4.豚パルボウイルス感染症
  豚パルボウイルスによる死流産の特徴の一つは,豚日本脳炎と類似して夏に比較的多発するものの,季節に関係なく年間を通じてその発生が見られることです。
  また,経産豚に比べ初産豚の被害が大きいことです。
  ウイルスは,感染力が極めて強く,主として経口感染あるいは接触感染で伝播します。
  豚パルボウイルスによる死流産を予防するために,不活化と生ワクチンがあります。
  不活化ワクチンを繁殖豚に1pを皮下注射します。

5.豚異常産3種混合(豚日本脳炎・豚パルボウイルス感染症・豚ゲタウイルス感染症)
  このワクチンは繁殖用豚に用い,豚日本脳炎,豚パルボウイルス感染症及びゲタウイルス感染症による死流産予防のために使用しています。
  ウイルスが妊娠豚に感染して起こる豚の死流産といえば豚日本脳炎,豚パルボウイルス感染症がよく知られていますが,最近二つの病気に加えてゲタウイルスの感染によって重大な繁殖障害を起こすことがわかってきました。
  特に妊娠早期に蚊の媒介によって感染を受けた場合,ウイルスは胎盤を通じて胎児まで感染し,死に至らしめることがわかっています。
  豚の死流産はいずれの時期にも発生はあるが,秋から初冬にかけて多発するケースが多く,夏季の感染に起因しています。
  生ワクチン注射は原則として種付前に免疫を獲得するような時期を選定し1pを皮下注射します。

6.豚ゲタウイルス感染症
  ゲタウイルスが,妊娠初期の豚に感染すると異常産をおこし,原因不明で産子数の減少として本感染症の被害が見過ごされてきました。日脳,パルボと同様夏季に伝播します。
  前記の3種混合ワクチン接種により死流産を省力的かつ確実に予防できます。

7.豚伝染性胃腸炎(TGE)
  TGEウイルスによって起こる急性伝染病で,品種,性別,年齢を問わず感染し,若齢哺乳豚ではほとんどが死亡する恐ろしい病気です。
  また,日齢のすすんだ豚でも感染しますと激しい下痢が起こり,発育期にある豚では発育が停滞し,いわゆるヒネブタとなるため,飼料効率の低下,出荷日齢の遅延をまねき,生産性を著しく阻害します。

8.豚大腸菌症
  大腸菌による下痢症は,新生豚の場合,生後24〜48時間内にクリーム様あるいは水様性下痢の症状がみられます。
  また,同腹の子豚ではほとんどが罹患し,その死亡率は時として100%になることもあります。
  この様な症状がみられる子豚からは,菌の表面に定着因子(線毛)K88ab,K88ac,99.987Pを主成分とするコンポネントワクチンが開発されています。
  不活化ワクチンを同居妊娠豚全頭に2pを同時注射3〜6週間間隔で分娩2週間前第2回目2pを皮下注射または筋肉注射します。
  不活化コンポネントは妊娠豚では分娩4〜6週間前に第1回目,第2回目は分娩2週間前2pを皮下または筋肉注射します。

9.豚流行性下痢症(PED)
  PEDウイルスの感染によって起こる急性腸炎で,その症状は,哺乳豚は,生後日齢未満の子豚では激しい水様性下痢により死亡率が高く,生存しても予後不良となることが多い。
  肥育豚,成豚では一過性の下痢,食欲減退,泌乳減少がみられます。
  生ワクチンを2pずつを2〜8週間の間隔で妊娠豚の筋肉に2回,第2回の注射は,分娩予定日の約2週間前に筋肉注射します。

10.豚萎縮性鼻炎混合BP
  ボルデテラ・ブロンチセプチカ(Bb)及びパスツレラ・ムルトシダ(Pm)の関与するARと呼ぶ。症状としては,くしゃみ,鼻出血,鼻萎縮,鼻湾曲,発育遅延を伴う。
  不活化ワクチンを初産豚には分娩前2〜3ヵ月前第1回目,分娩前1ヵ月に2回目を5pを筋肉,子豚には1回1pずつを3〜5週間間隔で2回筋肉注射します。

11.豚のヘモフィルス感染症
  細菌によって起こる伝染病ですから,同じ豚舎に次々と移っていきます。症状は3〜4ヵ月令の豚が急に激しく咳込み,食欲がなくなり,2〜3日で死亡します。
  不活化単味ワクチン生後30日令に第1回目,第1回目から3週間後に2pを筋肉注射します。
  不活化2価ワクチンを生後約2週令第1回,更に4週間後に2pを筋肉注射します。