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〔共済便り〕

家畜診療日誌

農業共済連 真庭家畜診療所
谷   孝 介

 子牛の下痢……コクシジウム症
 Eimeria による本症については知識として頭の片隅へありましたが,毎日の家畜診療の中で私の感じていた子牛の下痢と言えば白痢や消化不良性下痢が代表的な存在で有りましたが,最近では Eimeria 単独か線虫,細菌などと混合感染したものが多くみられてきていると感じています。
 コクシジウム症の発生は年間を通してみられており,特に3月より徐々に増加し6月・7月に多発しています。
 また,生後30日から60日程度のものに重症のものが多くみられ。月齢が進むにつれて減少してきていますが1年未満の子牛にみられています。これは,Eimeria のオーシストの再生に12日~18日間を要するため生後直後の発症は少なく,生後30日から60日程度の子牛になると母乳よりの免疫も薄れ抵抗力が弱く,環境性ストレスが加わることにより罹患しやすいのではないかと思われます。
 症状には血液や粘液の混ざった下痢,または非出血性の下痢のものがありますが,これらは Eimeria の種類により症状が異なるためにおこるとされています。極度の体重減少がみられ,文献等によると「感染前の体重に復帰するのに約3カ月を要した。」場合もあるとしています。
 糞の検査をすることにより Eimeria のオーシストを検出することが確定診断となりますが,Eimeria が寄生し腸管内で再生されたオーシストが糞に現れる前に症状のみられる場合もあり再度の検査によりオーシストを多数みつけることがありますので下痢,軟便が続く場合は,もう一度検査をしています。しかし感染があっても症状のないものもいます。
 コクシジウム症の治療法としては,スルファモノメトキシンの経口投与を主軸に必要に応じて対症療法を加えています。経口投与の方法は5日間投与しての日から10日間休薬,また5日間投与を連続して行い,これを1クールとして治療します。
 適当な予防法がない現状では Eimeria 感染牛の早期発見と診断,治療が重要となり,オーシストが子牛の口より感染しないよう牛床を清潔に保つため敷料の交換などをしばしば行い環境性ストレスをあたえないよう注意することだと思います。
 いままさに,環境ストレスなどを受け下痢の多発する時期です。畜産農家への指導はもとより,関係団体のご協力をいただき的確な対応を行い事故防止に努めたいと考えます。
 畜産農家の皆様に儲けていただき,後継者が育つよう諸氏の協力のもと,その一助になればと重い車を走らせています。