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〔普及活動現場からの報告〕

“活性水”は畜産環境改善の切り札となるか?

東備農業改良普及センター
安 永 勝 行   

はじめに
 畜産環境苦情実態調査による汚染の種類別では悪臭が常に上位を占めており,この悪臭対策が緊急かつ重要な課題です。そこで,低コストで簡便な方法として「活性水」使用による環境改善効果を酪農家の協力により検討しました。

1.活性水への取り組み
(1) 試作場所:赤磐郡熊山町 Y酪農家
(2) 経営規模:経産牛34頭 育成牛4頭
(3) 活性水プラントの概要
① 概略図(図-1)

② 活性水作製手順
 第1槽に水500r,元菌(茨城県養鶏農家の堆肥)5㎏を混入し,花崗岩30㎏.火山岩5㎏を吊るして1ケ月間エアレーションする。
 

 第2槽に花崗岩15㎏,火山岩5㎏吊るす。第1槽から第2槽へ250r移して1週間エアレーションする。(第1槽に元菌1.5㎏混入)
 

 第3槽に花崗岩15㎏,火山岩5㎏吊るす。第2槽から第3槽へ250r移して1週間エアレーションする。(第1槽に元菌1.5㎏混入)
 

 第4槽に花崗岩15㎏,火山岩5㎏吊るす。第3槽から第4槽へ250r移して1週間エアレーションする。(第1槽に元菌1.5㎏混入)
 

 上記イ~エを繰り返す。(その都度第1槽に水250rを混入)
 

 第4槽で1週間エアレーション後に使用する。

③ 使用方法
 約70日後に使用可能となるが,その活性水は紅茶又はアメリカンコーヒーの色で,透き通っており,臭いはほとんどありません。
 使用方法はバーンクリーナーに1日朝夕2回ジョロで約30r散布しています。

④ 製造開始及び使用開始年月日
 ・製造開始年月日 平成9年10月8日
 ・使用開始年月日 平成9年12月19日

2.効  果
(1) 消臭効果
 消臭効果判定として平成6年度から毎月1回アンモニア濃度を測定しています。活性水を使用する以前はふん上のアンモニア濃度平均13ppm(8~22ppm)でしたが,使用後は平均9ppm(4~16ppm)と下がりました。,使用後は平均31ppmとなり,効果が見られました。また,尿溜でのツンとくる刺激臭が使用後は無くなっています。
(2) 発酵促進
 酪農家は牛糞はモミガラとの混合により堆肥化を行っていますが,活性水使用後は発酵温度が上昇し,発酵期間の短縮化が図られつつあります。また,発酵温度の上昇のためハエの発生も減少しました。
(3) 低コスト
 プラント施設設置費は35万円かかりましたが,ランニングコストは1ケ月当たり元菌6㎏(250円/㎏)と電気代(5,000~6,000円)の計6,500~7,000円でした。
(4) 経営者の意識改革
 定期的なアンモニア測定や活性水使用等により,経営者の環境改善に対する意識(関心)が高まりました。

3.今後の課題
(1) より低コスト化へ
 既存のタンクや最正な馬力数のモーター使用,安価な電力利用等によりさらに低コスト化は可能と思われます。
(2) 使用方法の検討
 今回はバーンクリーナーへの散布を行いましたが,その他に牛舎への細霧,散水への混合,飼料畑への散布等多方面への利用が考えられ,今後検討の余地は十分あります。
(3) 地元に適した元菌の利用
 今回は気象条件土地条件等が異なる他県から元菌を購入し使用しましたが,やはり牛周辺の環境に適応した元菌を利用するほうが有利であります。

おわりに
 今回は活性水利用による畜産環境改善を試作的に行い,効果は認められたものと思われます。しかし,畜産環境改善は地域での調和と経営者の意識・意欲,日常の清掃管理がやはり基本であり,その手段の1つとして発酵促進菌や消臭菌等があることを忘れてはなりません。