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〔地域情報〕

“先手必勝”

東備地方振興局農林水産事業部農業振興課畜産係

 近年,畜産農家は経営安定のため,家畜の飼養規模は拡大傾向にあり,一方では,一般住民との混住化の進展に伴い,家畜の糞尿に起因する悪臭やハエ,水質汚染問題等が深刻化しています。
 悪臭等の苦情が発生したり,排水等の基準値等を超えた場合,なんらかの方法での改善が必要となりますが,直接的には生産性に関係ない部門だけに,後手になるケースが多々みられています。
 そこで当振興局では,苦情を未然に解消することを目的に,平成6年度から家畜保健衛生所及び農業改良普及センターの協力を得て,月1回定期的に畜産農家を巡回し,家畜の糞尿から発生する臭気検査やハエ等衛生害虫の発生状況調査,畜舎等からの排水の水質検査を実施し,検査結果が悪い場合は,これらのデータを基に改善指導を行うとともに,局事業調整費により以下の対策を講じておりますので,その概要を紹介します。
1.悪臭及び汚水対策
(1) 市販微生物資材菌の実証展示
 悪臭を抑制する一手段として,EM菌等微生物資材菌が各種市販されていますが,どのような種類の微生物資材菌をどのように使えばどのくらいの効果が期待できるか,残念ながらデータに乏しく,また,コストもかかるので,指導する側も苦慮するところです。
 平成6年度から過去悪臭等で問題のあった8戸の農家に,市販されている4種類の微生物資材菌を,それぞれの農家に1種類づつ配布し,飼料に添加して使用してもらっています。
 なお,これらの菌の効果確認は,毎月の農家巡回で各農家ごとに畜舎内,糞の上,尿だめのアンモニア濃度を測定しており,畜舎環境にもよりますが,どの菌ともおおむね消臭効果が認められています。
 しかし,コスト的に問題があり,現在では以下③の光合成菌等の普及に力をいれています。
(2) 活性水作成プラントの実証展示
 平成9年度,熊山町の1酪農家に悪臭抑制に効果があるといわれている活性水(二本松方式)プラントを設置しました。この装置から活性水を作成し毎日除糞前のバンクリーナー内の糞尿に散布しています。
 詳細については岡山畜産便り当号「活性水で経営改善に取り組む」を参照してください。
(3) 光合成菌及びバチルス菌の実証展示
 平成10年度,汚水処理や悪臭抑制に効果があるとされる光合成菌,堆肥の発酵促進等に効果があるとされるバチルス菌を愛知県西三河家畜保健衛生所から種菌を譲り受け,低コストで拡大培養できるよう,岡山家畜保健衛生所にプラントを設置してもらいました。
 プラントで培養した光合成菌は,主に排水等の基準をオーバーしている農家の尿だめや浄化槽に投入し,また,バチルス菌は堆肥舎等に散布してもらっています。
 光合成菌の効果については,畜舎等からの排水の水質検査(BOD,COD,SS,pH,大腸菌数,窒素,燐)を局環境対策室の協力を得て県環境保健センターにお願いしております。今回は,肥育豚を約800頭飼育する養豚家の浄化槽に菌を投入し,約2カ月後検査を行ったところ,投入前に比べ,特にBODの数値が1/3以下となり,また,浄化槽に溜まっていたスカムがほとんど消失する等の効果がありました。
 なお,水質検査は継続して定期的に実施し,効果判定を行う予定にしております。
 また,バチルス菌については,採卵鶏を約11万羽飼育する農家の堆肥舎において,鶏糞に散布後,発酵温度が従来に比べ約10℃上昇し,完熟化までの期間短縮が図られています。
 しかし,農家への普及に当たっては,もう少し例数及び時間が必要なことから,地元農業高校に,朝夕毎日堆肥の発酵温度等の測定を依頼し,効果判定を行っています。
 効果がさらに確認できれば,元菌の保存・継代や培養液の調整は岡山家畜保健衛生所に引き続きお願いしなければなりませんが,比較的簡単に菌の培養が行えることから,培養は,農家段階で行ってもらうよう指導し,普及を図っていきたいと考えています。
2.ハエ対策
 すだれ式ハエ防除装置の実証展示
 平成8年度,ハエ対策で苦慮していた熊山町の1採卵鶏農家に,ハエを誘引する成分を含む殺虫剤が,綿紐のすだれ(ハエは白い紐に好んで集まる習性がある)に自動的に薬剤が常時浸透する装置(薬剤循環式)を作成し,ハエが出入りする畜舎の側面に設置したところ,薬剤が綿紐とパイプから漏れ出す等の対策には苦慮しましたが,殺虫効果は期待どおりのものが得られました。
 このことから,ハエの発生時期には,大規模な農家には,循環式を,小規模な農家には,すだれを薬剤に浸し畜舎に吊るす方式を推奨しています。