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種子豚(黒豚)の供給

岡山県総合畜産センター      

中小家畜部養豚科 河 原 宏 一

総合畜産センター(養豚ゾーン)1.はじめに
 岡山県がバークシャー種(黒豚)の飼養を始めたのは,昭和53年度で,当時の酪農試験場へ雄1頭と雌2頭を鹿児島県から導入しました。現在では,総合畜産センターから,「おかやま黒豚」生産用として,純粋の黒豚種子豚を供給しています。
 岡山県が所有している黒豚は,一般の系統造成された種豚と異なり在来種です。一層の肉質の向上を目的として,平成8〜10年度に英国から種豚を導入しました。
 原産国である英国の黒豚の肉質は,肉のきめが細やかでおいしいとされており,現在では,総合畜産センターからの供給は全て英国系の種子豚です。
 つまり,現在の「おかやま黒豚」は,英国系の黒豚ということです。

  総合畜産センター(養豚ゾーン)

2.「おかやま黒豚」の源を訪ねて
 英国から種子豚を導入するにあたって,岡山県は,種豚の選畜のため職員を毎年1人づつ英国へ派遣しましたが,黒豚飼養農家もこの派遣に自費で参加しました。平成8年度には奈義町の黒薮忠章氏,平成9年度には同じく奈義町の森渕英昭氏が同行して種畜を選定しました。
 つまり,「おかやま黒豚」は,種豚の生産段階から養豚農家と岡山県が一致協力して作り出しているブランドなのです。

 

              英国の黒豚飼養状況               大豚(B1599)

3.種子豚の衛生管理
 総合畜産センターの種豚や農家へ出荷する種子豚の管理は,家畜畜産物衛生指導協会のワクチン接種や津山家畜保健衛生所の抗体検査を行って,衛生的かつ健康に発育するよう気をつけて管理しています。
 ワクチン接種は,豚コレラ,豚丹毒,日本脳炎,豚パルボウイルス病,ゲタウイルス感染症の5疾病について,抗体検査は,オーエスキー病,萎縮性鼻炎,コリネバクテリア感染症,トキソプラズマ症の4疾病について実施しています。また,出荷時には駆虫薬による消化管内寄生虫の駆除を行って,種子豚の出荷には万全を期しています。

                                          種子豚候補の子豚

4.生産状況と供給実績
 現在,総合畜産センターの黒豚の種雄豚は7頭,繁殖用母豚は17頭です。
 分娩された子豚は,生時体重及び60日齢での発育を中心に選抜を行い,年間約60頭の雄と,約100頭の雌を種子豚候補として育成しています。さらに6ケ月齢までには,豚生産能力検定規定や,バークシャー種豚登録審査基準等を参考としながら最終選抜を行い,より能力の高い種子豚の供給に努力しています。

 種子豚の出荷数は表1のとおりです。

表1 黒豚種子豚出荷実績

(H11.1現在)
年度 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10
雄(頭) 10 3 5 1 6 6 7
雌(頭) 5 3 10 11 28 28 21
合計 15 6 15 12 34 34 28

5.黒豚導入方法
 黒豚に限らず全ての種子豚は,岡山県経済連との委託契約で系統農協へ供給していますので,導入希望は,最寄りの農協へ申し込んでください。価格は,雄雌とも体重80sの場合82,000円で,体重が1sごとに500円加算されます。(消費税等別)
 なお,60日齢以上の種子豚候補リストは,毎月主要な農協へFAXで送っていますので,農家の方々は,早めに更新豚を選定して計画的な導入をお願いします。
 また,液状精液も1本1,600円(消費税等別)で供給しています。

6.おわりに
 優秀な種豚生産はブランド確立の原点です。総合畜産センターは,今後も優秀な種子豚の生産に努めていきたいと考えています。
 しかし,県内には「おかやま黒豚」肉を購入できる販売店が少なく,県民のみなさんにブランド名やおいしさが十分伝わっていないようです。行政と生産農家,さらに流通業者の方々の協力によって「おかやま黒豚」のさらなる生産向上と消費の拡大を期待しています。