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〔共済連便り〕

「家畜診療日誌」

津山家畜診療所 松岡 猛司

 家畜の損害防止事業とは,特定の疾病を未然に防ぐため各種検査を実施し早目に指導並びに治療措置を行う特定損害防止事業とそれ以外の疾病で予め発生するであろうと考えられるものに対してそれらの原因を除去する目的で行う一般損害防止事業とに分けられます。家畜,特に牛について発生頻度の高い疾病群で大別し列挙してみました。順位は不同するものがあります。
(乳牛)
・繁殖阻害(卵巣及び子宮疾患)
・乳房炎
・ケトン症(第四胃変位を含む)
・蹄病  (蹄にかかわる疾患)
・産後起立不能症
・関節炎 (関節周囲炎を含む)
(肉牛)(繁殖,肥育牛両方含む)
・繁殖阻害(乳牛と同様)
・腸炎  (細菌性,原虫性など)
・肺炎  (細菌性,ウイルス性など)
・尿石性
 これらの病気は,年間を通して発生頻度の高いものです。このような事故を防止するためには,各疾病別に予防処置を取る必要が有ります。そこで次に主な予防方法を挙げて見ました。
繁殖阻害 飼料給与の指導及びビタミンAD3E剤の投与
     繁殖検診の実施(分娩後2ケ月を経過した空胎牛)
乳房炎 ビタミンAD3E剤の定期的投与
     搾乳器具・機械の点検
ケトン症 乾草乳期の飼料投与指導(ボディコンディションの適正状態の維持)
蹄  病 削蹄(年1〜2回)の実施
産後起立不能症 分娩予定日の1週間前にビタミンD3 1000の投与
     分娩直後のカルシウム剤の投与
関節炎 削蹄及び第一胃機能低下の防止
腸  炎 牛舎の徹底した消毒を繰り返す(消石灰散布など)
肺  炎 ビタミンAD3E剤の定期的投与
尿石性 ビタミンAD3E剤,尿石症治療薬の投与及び飼料給与改善
 以上の他の乳牛,肉牛ともに発生を認め頻度は少なくても予防せず放置しておくと廃用事故につながる病気もあります。
・金属異物性疾患
・肝蛭症
・ピロプラズマ病
・夏季に発生する熱射病
 これらの疾病の予防方法は,定期的に実施するものと発生前に対処するものとに別れます。
金属異物性疾患 磁石を1回に限り投与
肝蛭症    年1〜2回駆虫薬の投与
ピロプラズマ病 放牧前に原虫駆虫薬を投与し放牧期間中も定期的に投与
熱射病    牛舎の風通しを良好にし冷却に努める。
 疾病の種類も多く又廃用事故につながるケースも認められます。そこで徹底した事故防止をするためには,畜産農家の負担も増してきますので理解と協力が必要とされます。損害防止に力を注ぐことで少しでも事故を減らし畜産農家の財産(家畜)の損失を防ぎ経営を安定させていく訳です。どうして事故防止に重点を置く必要があるかという事を畜産農家に理解していただければ幸いかと思います。