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〔地域情報〕

玉島弥高山の畜産とハエ対策

倉敷地方振興局農林水産事業部畜産係

 管内の畜産総生産額は約32億円で農業総生産額の12.5%であり,県内畜産総生産額の6.6%を占めるに過ぎない。
 しかしながらこの畜産の大半が倉敷市玉島陶地区の標高250m〜300mの弥高山山頂部の戦後開拓により開けた200ゥあまりのなだらかな丘陵地に集中している。
 この開拓地は純入植者のみでなく近隣の増反による入植もあった。弥高山は一部真備町矢掛町も含んでいる。
 この地域では,かってはタバコ,養蚕,スイカなども作られたが現在は酪農と養鶏が主体で一部野菜も作られている。
 まず酪農についてみると,昭和32年の2頭の乳牛導入に始まり昭和36年には国の寒冷地等貸与牛20頭の導入がなされ,以後補助事業等による導入を行い,昭和38年には22戸の酪農家で弥高酪農組合を設立した。昭和40から42年で小規模草地改良を20ゥあまり実施している。
 戸数は年々減少し,平成10年では11戸となっている。飼育頭数は平成8年に668頭であったが,平成10年度は,500頭に減少している。これら酪農家の所属は瀬戸内酪農協が9戸(入植者),水島酪農協が2戸(通勤酪農)となっている。
 養鶏は,昭和50年代の当初に相次いで開設され,60年までにすべての大型養鶏場がでそろい1万羽以上の養鶏場が11農場となった。これらの養鶏農家はすべて弥高地域以外からの通勤経営であり,4経営体は経営主体が交代している。平成10年度の飼育は9農場で約58万羽となっている。
 大型の養鶏場の進出と前後して,ハエの発生が増え,昭和60年代前半には大発生をみ,その対策に多大な費用と労力を費やしている。
 この地域のふん尿処理は,酪農ではバーンクリーナーで集ふんしてロータリー撹拌機を備えたビニール堆肥乾燥施設で処理するものが主体であるが堆肥舎を設置している農家もある。しかしながら飼養頭数の少ない農家では,これら施設を保有してない者も1戸ある。
 養鶏家はオートコンポ設置が5戸,ハウス乾燥施設が3戸,管外に搬出するもの1戸である。ハエの問題は,関係機関と畜産農家及び地区耕種農家で対策協議会を組織し意識の統一,啓蒙活動を行っている。ハエ対策として薬剤散布と電撃殺虫器設置(現在約50台)が積極的に行われている。鶏舎の鶏ふん除去が十分でないことが問題点として上げられており,ハエの発生は異常発生こそしないものの住民の許容範囲を越えたものである。平成8年度には,酪農家によるふん尿の素堀投棄,養鶏家2戸による鶏ふん等の大雨による池への大量流入等の環境問題が発生し,素堀池の埋め立て,池の浚渫及び鶏舎,ふん尿処理施設の新設により解決を見たが,酪農の廃業と養鶏経営の移譲という大きな代償を支払った。
 弥高山のような高密度畜産地域でハエの発生をゼロにすることはできないが住民の納得のできるレベルまで減らすことは経営継続の最低条件となっている。
 ハエを減らす第一は畜舎にふん尿を放置することなく,早期に処理施設に搬入することであり,消毒や殺虫器のみでは根本的な解決とはならない。このための施設設置に対しては,畜産農家の経営努力はもちろんであるが,国としても家畜ふん尿処理問題に対し緊急解決の必要性に関する認識を高めていることから,行政としての資金援助も今以上に行う必要があるのではないか。