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水田転作における飼料作物栽培・調整のポイント

岡山県総合畜産センター 串田 晴彦

 米の過剰生産にともない水田転作がにわかに拡大しており,安定的な畜産経営や農地保全等の観点から,水田の有効利用による自給粗飼料生産が見直されてきています。
 そこで,水田転作における飼料作物栽培と調整のポイントを紹介します。

1.排水対策・品種選定

 一般的に水田転作における飼料作物の収量は,普通畑より低いといわれていますが,その主な原因としては,圃場条件や生産技術レベル(適期作業,肥培管理など)があげられます。そこで,調製が安易で栄養価の高い草種の選定や機械利用による生産性の向上を行うとともに,明きょや暗きょなどによる排水対策を十分に行ってください。(排水の良否は土壌条件によって異なりますが,降雨後2〜3日の地下水位の高さを目安にします。)また,水田転作の中には周囲の状況によって排水対策が十分に取れない所があります。この場合,排水の良否によって草種を選定しなければなりません。現在,イタリアンライグラスは水田転作や水田裏作で栽培されていますが,ここでは,その栽培・調製のポイントについて紹介します。また,最近ロールベールサイレージの普及に伴い夏作として注目されているスーダングラスについても栽培・調製のポイントを紹介します。

2.栽培・利用のポイント

(1)イタリアンライグラス
  ア 播種期:8月下旬から11月上旬
  イ 播種量:2〜3(s/10a)
  ウ 追肥時期:早春および各刈取後
  エ 収穫適期:出穂期
  オ サイレージ調製:ロールベールサイレージでは水分を50〜60%に予乾する。
            サイロ等への詰込みでは水分を70〜75%に調製し,細切,踏圧および密封をきちんとおこなう。
(2)スーダングラス
  ア 播種期:平均気温が15℃以上になったときの早播きを心がける。
       (トウモロコシよりも15〜30日遅い頃)
  イ 播種量:スーダングラスの茎を細くするためには,5〜7s/10a(通常3〜4s/10a)を播種する。播種量を多くしても茎は細くなりますが,倒伏などによる収量の低下および種子代がかかりすぎるなどデメリットが多くなります。
  ウ 雑草対策:播種後にきちんと鎮圧をして,除草剤散布を行う。(ソルガムは薬害を受けやすいので,高濃度での使用は避ける。)
  エ 追肥時期:1番草6葉期および1番草刈り取り後
  オ 収穫適期
  (ア)ロールベールサイレージ:出穂前期
  (イ)乾 草:出穂前期
   ※ 硝酸態窒素中毒を避けるために若刈り(穂ばらみ期より前)の刈取りは避ける。
  カ サイレージ調製:50〜60%に水分調整する。

3.肥培管理のポイント

 水田転作では,畑地化に伴って土壌中の有機物が急激に分解されるため,転作後1〜2年は肥効が大きく高収量となります。しかし,トウモロコシやソルガムなどの長大作物栽培では肥料分の持ち出しが多く,収量に見合った施肥と土壌改良のための堆肥などの施用が必要となってきます。しかし,未熟な堆肥を多用すると作物の初期生育不良や圃場への雑草の侵入などといった問題が起こってくるので注意してください。

4.おわりに

 以上,水田転作における飼料作物栽培・調製のポイントということでイタリアンライグラス及びスーダングラスについて述べましたが,飼料自給率の向上が求められており,また家畜糞の処理に頭を抱えている農家が多い今,水田転作を有効に活用していこうとする意識は非常に重要だと思います。畜産センターにおいても飼料作物の優良品種選定および高品質粗飼料の生産など畜産農家の方々に役立つ情報提供・技術開発につとめていきたいと思っております。