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〔共済連便り〕

頭角をあらわした疣状皮膚炎の脅威

NOSAI家畜臨床研修所  大竹 修

 イヌやネコが肢にケガをした場合,3本肢になっても走り回っています。ところが象の場合では,あの巨体を支え切れなくなり死につながります。
 体重が重い動物ほど肢の健康は重要で,野生の世界において弱い草食動物では絶対と言っていい程,肢の病気は寿命を縮めます。牛は巨体ですが,弱い動物の仲間に入ります。それが家畜となった現在,特に乳牛では高泌乳が求められており,エサ(栄養)のアンバランスが生じやすく,代謝に支障をきたした“生産病”が現在増加しているのです。またコンクリート牛床上で繋がれたままでの寝起きはすこぶる不自由で,そのために特に後肢の関節(飛節)が牛床での打撲や擦過によって傷つくことが多いのです。それが廃用のトップを占め続けている関節炎なのです。牛の肢の先端は固い“二股の蹄”で護られています。野生では常時,草地や岩場を走っているので適度に摩耗し,正常な形を保っていますが,固い牛床上での生活を強いられ,おまけに長期間削蹄をしなければ当然,過長蹄や変形蹄となります。また濃厚飼料偏重は蹄の質をも劣化させるので,蹄病が発生しがちです。持続する疼痛のために寝起きが下手になり,関節炎も悪化し,次第に痩せてきます。近年は関節炎や蹄病などの肢蹄疾患が全国的に多発し,酪農家や獣医師の悩みの種となっておりますが,定期的な削蹄が如何に大切であるかはよく御存知ですね。このように関節炎はエサや泌乳量や牛床や蹄異常が複雑にからみあった“複合汚染”の結果つくられますが,そんな中で最近「疣状皮膚炎」という聞き慣れない病名を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。肢の付け根の蹄球のあたりにイチゴ状やイソギンチャク様の病変が発生し,著しい疼痛を伴うので,当然食欲や泌乳量は低下して痩せてきます。しかし病変部が最下位でしかも糞尿で汚染されていることが多いので発見が遅れがちになるのです。この病気が他の蹄病と異なっているのは伝染性の強い病原体(螺旋菌)の感染が原因で牛群に広く蔓延し,大被害にもつながることです。わが国では欧米からの輸入牛が発生源になっている場合が多く,糞尿で汚染された湿潤不潔な蹄が罹患するので,つなぎ飼い牛舎では後肢蹄に,フリーストール牛舎では前後肢ともに罹患します。獣医師の的確な診断のもとに抗生物質や消毒剤による治療をすれば,翌日には著しい疼痛も嘘のように消え去る“たかが皮膚炎”ですが,現在のように多頭飼育になれば感染牛や罹患牛の発見や治療も困難な“されど皮膚炎”となりがちで,このままでは近い将来アメリカのように最もポピュラーな蹄病になる恐れがあります。汚染牛舎のクリーン化はやっかいですが,導入牛は詳細な趾蹄調査と消毒で予防するとともに,牛群の蹄浴や個体治療をこまめに続けることで蔓延防止を図ってください。