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食品副産物を上手に利用していますか

井笠家保 長尾 伸一郎

 食品副産物は,畜産物の低コスト生産のため古くから利用されています。
 また,近年は,産業廃棄物として,その適正な処理,有効利用が社会的にも求められるようになりました。
 しかし,畜産での利用の実態やそれに伴う問題などは明らかではありません。そこで,管内の肥育牛農家を対象に調査しましたので,その概要を紹介します。

1.利用の実態

 調査対象農家数は,38戸,飼養頭数は,3,856頭でそのうち,食品副産物を利用している戸数は15戸(39%),その飼養頭数は,2,199頭(57%)でした。主として利用されていた食品副産物は,8種類で,トウフ粕(12戸),ビール粕(7戸),パン屑(3戸)等でした。
 食品副産物を多く給与している農家では,利用している食品副産物の種類によらず給与飼料の中の粗蛋白質(CP)割合が高い傾向がありました。

2.問 題 点

 食品副産物を利用している農家のうちトウフ粕を多給している農家は,事故率(年間死亡廃用頭数/常時飼養頭数)が高く,最も高い農家では,過去3年間の平均で7.4%でした。

3.利用の考え方

 なぜ,トウフ粕の多給が事故の原因となるのでしょうか。
 トウフ粕の飼料特性を示すためにビール粕と比較した飼料成分と炭水化物の消化率を表1に示しました。成分はNDFを除き非常によく似ています。どちらも粗蛋白質と粗脂肪が多いが,トウフ粕は,「繊維」が少ないことが特徴です。
 NDFとCFの消化率は,両者に大きな差があります。このことは,トウフ粕の炭水化物の消化性が非常に高いことを示しています。また,その消化速度も早いとされますので,「急激な発酵」をするといえます。これを制御できていないことが事故率の高さの一因だと考えられます。栄養面から見た改善策としては,粗飼料の給与量を増やすこと,TMRの導入,組み合わせる飼料の種類を変更すること等が考えられます。第一胃内の分解速度等から,穀類ならば大麦よりトウモロコシ,粗飼料であれば,牧乾草より稲わらが好ましいと考えられます。

表1 ビール粕とトウフ粕の乾物中飼料成分と消化率(%)

  CP(粗タンパク質) EE(粗脂肪) NFE(可溶無窒素物) CF(粗繊維) ADF(酸性デタージェント繊維) NDF(中性デタージェント繊維) DNFE(NFE消化率) DCF(CF消化率)
ビール粕 26.8 8.9 43.6 16.0 19.1 62.6 64 39
トウフ粕 26.1 11.1 42.5 15.9 22.2 36.7 78 89