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〔地域情報〕

「ここ蒜山にジャージー酪農あり」
〜第 3 回全日本ジャージー共進会に向けて〜

真庭地方振興局畜産係 水野 淑子

 某日,ある資料を探して事務所の棚を探っていると,少し黄ばんだ小冊子が目に留まった。背には黒ペンで「ジャージー」,表紙には「蒜山地区ジャージー酪農の歩み」との印刷。目的の資料と一緒に棚から抜き出し,後日持ち帰ってページを開いてみた。
 蒜山のジャージー酪農の歩みは,昭和27年暮れの三木行治元県知事による岡山県酪農振興計画の検討に始まり,蒜山地区酪農振興計画の樹立,事前講習会,ジャージ牛導入,農協等の組織化…。当初からこの計画に参加されていた著者の浅羽昌次氏による年譜は,詳細な日付け,関係人物名とともに当事者ならではのコメントも加えられ,当時の様子が生き生きと伝わってくる。いかにして蒜山地区に酪農を興そうとしたか,その先輩方の活躍談や苦労話に,時間を忘れて読みふけってしまった。
 折しも,この4月5日に,蒜山酪農農業協同組合育成牧場で第1回ホクラクジャージージュニアスプリングショウ in 蒜山が開催された。これは,平成12年の第11回全日本ホルスタイン共進会と同時に開催される第3回全日本ジャージー共進会に向けて,ホクラクジャージー改良同志会(会長 入沢三郎氏)の働きかけにより行われたものである。
 昭和59年に蒜山地域で開かれた第2回全共から16年,来る全共は「ここ蒜山にジャージー酪農あり」を県内外にアピールして更なる生産振興を図ると共に,酪農家のみならず蒜山地域全体の意気高揚につながる一大イベントである。
 今回のスプリングショウは未経産39頭の出品で,岡山種雄牛センターの松原聡氏が審査を行った。途中,川上村の長恒泰治氏によるワンポイントアドバイスがあった。牛が最も美しく見える頭部の保定位置を探すことの大切さ等の説明に加え,氏が最も協調したのは,審査中は常に自分の牛と審査員から目を離さないこと,共進会は審査員との戦いであるということであった。グランドチャンピオンにはクイック・シルバー・バーバー・ノーブル号(蒜山酪農育成牧場)が選ばれたが,数日前から職員が特訓していたとのことで,立派な体格もさることながら,よく調教されており歩様の良さが群を抜いていた。
 来年11月の本番に向け,授精・分娩時期の調整が目下の重要課題であるが,ホルスタインに比べて共進会に慣れていないジャージー農家の意気をいかにして高めていくかが問われている。短期決戦では実行あるのみと,定期削蹄やトレーニングマシンの設置を積極的に推進し,また来年春には未経・経産を合わせた前哨戦も予定されており,改良同志会を中心とした全共対策が進められているところである。
 最後に,「蒜山地区ジャージー酪農の歩み」の中で筆者が最も感銘を受けた部分を引用したい。これは,元畜産課長惣津律士氏による昭和29年12月号「岡山畜産だより」巻頭言の一部である。ジャージー牛導入初年に蒜山酪農の進むべき道を予見し,その実現に情熱と英知を傾けた先人の言葉は,現在の畜産情勢の中で,私達畜産関係者の取り組むべき姿勢,あり方をも示唆しているように感じられた。
 「…ジャージー種牛が入ったかと云って,其の地帯の農家の経営,経済が直ぐに良くなるものではない。然し此の牛の特徴を十分に把握して能力を最大限に発揮せしめると共に,其の生産物を最高度に活用して他の家畜家禽の普及増殖をも企図し,かくして此の牛を中心として農業経営全般の思い切った改革を行うことに於いて,始めて其の導入の意義が有ることを私共は確認しなければならない。(中略)其の経営面に於いて有畜農民自らが,もっともっと掘り下げて研究しなければならないことを本年ほど痛感したことはない。そして又団結の力の必要を本年ほど痛感した事もない。…」