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〔地域情報〕

平成10年度の畜産活動を振り返って

阿新地方振興局農林水産事業部畜産係

・はじめに
 阿新地域は千屋牛の名で知られる,県内随一の和牛繁殖地帯です。ところが平成10年8月現在,管内の和牛繁殖農家の戸数は372戸,飼養頭数は1,203頭と前年に比べほぼ10%減,10年前と比べると約50%にまで落ち込んでおります。しかし,大型の堆肥処理施設が2つの町で建設されるなど,各地ではまだまだ盛んな畜産活動が行われています。
 そこで,今回は平成10年度の畜産,特に和牛についての取り組みを中心に管内の現状を振り返ってみようと思います。

・堆肥センター
 哲多町,大佐町と相次いで大規模堆肥処理施設が完成し,地元の耕種農家に良質な完熟堆肥を供給しています。哲多町の堆肥センターは年間約4,900t,大佐町では約1,200tの製品生産が見込まれ,有機農業が注目されるなか,堆肥活用による地域農業全体の活性化が期待されています。

・岡山県共進会
 10月に開催された県共進会では管内から16頭の出品があり,若雌2区では哲多町の藤岡勲氏が優等主席,繁殖牛群1区では哲西町の高木政美,上田勝士氏が優等主席を受賞,大佐町が団体優勝(和牛の部)を飾るなど牛どころ阿新の面目を保った形にはなりましたが,より多くの期待を持つ関係者にとっては多少物足りない結果となりました。他地域での飼養技術も進んだ今日,牛どころ阿新の名前が確実に脅かされている証拠であり,今以上に危機感を持って和牛の改良に取り組むことが今後必要ではないでしょうか。

・自給飼料調整技術共励会への出品
 昨年の6岡山県畜産会主催の同共励会では管内からイタリアンライグラス・サイレージの部に2点,同乾草の部に5点を出品したところ,サイレージの部から1点,乾草の部からは4点の入賞がありました。中でも乾草の部に出品した哲多町の江田一成氏が最優秀賞,大佐町の柴田勉氏が優秀賞を受賞し,管内の自給飼料調整技術の高さを示す結果となりました。両氏には今後も地域の核となって良質な自給飼料の生産に励んでいただきたいと思います。

・和牛ヘルパー組織
 平成4年に阿新肉用牛ヘルパー組合が結成され,今年で8年目を迎えています。34人の組合員が子牛の市場出荷,日常的な飼養管理,堆肥の運搬等,要望のあった農家の助っ人をしておりますが,昨年の利用件数は11件と多くありませんでした。農家の高齢化が進んでいるなかで,高齢者の方が安心して牛飼いを続けられるよう,この組織が有効に利用されていくことが望まれます。

・おわりに ─岐阜和牛全共に向けて─
 平成14年に岐阜県で開催予定の第8回全国和牛能力共進会に向けた取り組みが,管内でも本格化してまいりました。前回の岩手全共では出品農家の日々の努力と関係者の惜しみない協力により,阿新地域からの出品牛13頭のうち10頭が優等賞を受賞するなど輝かしい成績を収めることができました。
 管内和牛飼養者の平均年齢は65才を超えているのが現状であり,飼養農家数は今後更に減少していくことが懸念されます。これまでの苦労をどう生かすか,新しい風をどう吹き込むか,まだ様々な課題が残っております。しかしこの後,阿新地域が和牛地帯として復活及び更なる発展を遂げるには,まず岐阜全共での成功が不可欠ではないかと思います。そのためにも地域が一体となって全共対策に取り組むことが重要であり,その姿勢こそが地域の復興に結びついていくものと信じています。