〔共済連便り〕

家畜診療日誌

農業共済連 岡山西南家畜診療所 大屋 卓志

 現在,県内においてフリーストール,フリーバーン形態の酪農家が増加している。私事ではあるが,診療所勤務も早5年。このたび西南家畜診療所へ転勤となり,笠岡干拓地に診療に行く毎日である。私の診療担当地区に,フリーバーンにより乳牛を200頭程飼育するK牧場があるが,今までに対応したことのない酪農形態で,色々と驚く毎日である。まずK牧場では,コンピューターによる牛群の管理をしている。各個体の最終分娩,種付,種付からの日数,前回の分娩からの空胎日数,乳量偏差をインプットしている。ここで乳量偏差であるが,当牧場においては,朝・昼・晩の3回搾乳であるが,この乳量を各日ごとにインプットしており,これに一定の差が出た場合にコンピューターが搾乳偏差(以下,乳偏)を提示するものである。
 これらのデーターは,ごく簡単な操作で引き出すことができ,繁殖検診,家畜の診療には必要不可欠なものである。
 フリーストールにおける繁殖検診は,各診療所で様々な問題点を抱えているようであるが,K牧場においては9頭を繋げるキャッチペンがあり,各個体ごとの子宮,卵巣の状態を記載するカードが準備されている。繁殖検診様式は,午前・午後と毎日行っている。
 これにより子宮,卵巣の状態を毎日経過を追って把握できるため,より有効な処置が可能である。キャッチ,保定が容易なため処置が比較的容易で子宮内膜炎等の早期発見が可能である。他の診療所の管内では繁殖検診において様々な問題点があるが,この様式では1名の獣医師による検診が可能であり,検診時間も1時間程である。このため毎日の診療の合間に繁殖検診が可能である。また,乳偏のデーターにより発情時の乳量の減少をキャッチ可能であるために,発情の見逃しも比較的少ないと感じられる。
 しかしながらK牧場においても様々な問題点があると思われる。例えば,乳偏により発情できない場合に何らかの疫病により乳量低下が起こっていると考えられる場合において,畜主からの稟告聴取により様々な情報が得られず,牛の状態が把握しづらい。また,治療により段々と好転に向かうも,食欲等の正確な情報が得られず,治療の終了の判断が難しいと感じる。
 また,飼料管理面においてもいくつかの問題点があるように思える。当牧場では,乾乳牛と泌乳牛といった群分けであり,飼料は独自で調合したTMRが主体である。これにより,個体別の乳偏や繁殖管理の貴重なデーターが有効活用されていないと感じる。
 各ステージ別の飼養管理がなされず,乳量に対応した飼料の量,飼料の質を変えることができないため分娩後空胎日数が長く,乳量の少ない牛が飼料を食べ,過肥気味となることや,逆に泌乳ピークの牛が充分な餌を食べ込めず,エネルギー不足となり発情の回帰が遅れてリピードブリーティグの原因となり得ると考えられる。
 現在岡山県下では,酪農家戸数が減少する一方でフリーストール,フリーバーン形式の酪農家が増えてきており,今後もその傾向に向かうと考えられる。またこのような形態では有効なコンピューターシステムの導入が必要不可欠であると感じる。その一方で,先に述べた様々な問題点もあるように思われる。
 その様なことから我々獣医師も,つなぎ牛舎において稟告を聴取しながら個体処置する時代から,コンピューターシステムと対応した繁殖管理,飼養管理,疫病予防を総合的に含めた診療体制を確立していかなければならない時代にさしかかったと感じる。