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〔情報〕

簡単に作れて,よく捕れるアブ捕虫器

岡山県総合畜産センター 専門研究員 岡田 耕平

1.今年はアブが多い!
  牛の背に食らい付いた血膨れたアブは,見てるだけでも痛痒くなります。
  たかが「アブ」と思われがちですが,単に血を吸うのみでなく,強い吸血刺激により,牛は休息,採食を妨げられ,落ち着きがなくなります。
  餌を食べ,ゆったりとした気分で反芻し,それによって栄養を得ている牛本来の代謝活動が妨げられてしまいます。
  肥育牛では,増体重の低下,搾乳牛では泌乳量の減少,育成牛の乳房硬結損傷など,想像以上の被害を被っているようです。
  また,不治の難病,牛白血病を媒介するのもアブであることが知られています。
  そのうえ,今年はアブの当たり年とか,当畜産センターでも,7月初旬頃より,頻繁にアブを見るようになりましたし,「今年は,アブが多い」との声を,農家の方からもよく聞きます。

2.アブの吸血行動
  アブの吸血行動は,次のように考えられています。
  まず眼で見て,相手(牛)を発見します。
  ある程度の大きさがあり,興味をそそられる対象物を見つけるとまず飛んでゆき,その物体上の炭酸ガス濃度が,他よりも高いとその場に長く留まり,吸血しようと試みます。
  アブが関心を示すのは,視覚に入った物,及び炭酸ガスと考えられていますが,私たちの経験では,色,特に黒色に強く惹かれるようです。

3.アブ対策
  このようなアブですが,その対策となると決め手を欠くのが現状です。
  アブの幼虫は,草地や湿地の土中に生息し,成虫は草地やその周辺の広範な地域に分布しており,発生源や生息地などの拠点を攻撃するのが困難です。
  また,蝿,蚊に比べ殺虫剤に強く,薬剤を主とした対策も効果を上げにくいものです。
  そこで,現在当センターで使用している,簡単に作れて,アブのよく捕れる捕虫器(アブトラップ)とその使用状況を紹介します。

4.アブ捕虫器(アブトラップ)
  写真は,畜産センターで使用している捕虫器(東北農業試験場,白石氏考案)です。

アブ捕虫器 手前のホースは炭酸ガス吹込用
アブ捕虫器 手前のホースは炭酸ガス吹込用

  縦横90p,高さ35pの捕虫器本体を,地上60pに設置しています。
  捕虫器の構造は,図1のようになっていて,a−fの部分は,透明のアクリル板で,A,B,C,Eの部分はコンパネ板です。
  図1及び図2の見取り図のように,捕虫器本体を作り,コンパネ板部分をカラースプレーで黒く塗ります。
  黒く四角なこの捕虫器は,アブにとって興味深い物に見えるようです。
  飛んで来て,捕虫器表面に留まります。そして,図1の下部,Bの傾斜部分に飛来したアブは,上部の明るさに誘われて,捕虫器の中へと入っていきます。
  この捕虫器は,このままでも十分捕虫できますが,炭酸ガスを使用すると,さらに捕虫性能が向上します。(詳細後述)
 

 炭酸ガスを使用するときは,図1dのアクリル板上にホースをセットし,ガスを流します。
 〈制作に要する経費〉
  捕虫器本体
   コンパネ板( 900×1,800o,厚さ12o) 1,500円
   アクリル板(1,000×2,000o,厚さ1o)3,500円
   ラッカースプレー(黒)          300円
   炭酸ガス  30s           6,000円
   ガス調整器              20,000円
  (価格は,メーカーや販売店により異なりますので,一応の目安と考えてください。また,詳細は岡山県総合畜産センター和牛改良部にお問い合わせください。)

5.捕虫状況
  本捕虫器による捕虫成績は,@捕虫場所,A炭酸ガス使用の有無,で大きく異なります。捕虫場所は,草地の中など,捕虫器がよく目立つ場所が理想的で,牛舎より10mは離して置くことが大切です。
  牛舎に近いと,アブの目には,捕虫器が興味深い物体とは写らないようです。
  私たちの捕虫成績でも,牛舎の5m以内に設置したものでは,4−6匹/日しか捕虫できませんでした。
  表1は,牛舎より10mの距離に設置した捕虫器での捕虫状況です。

表1 捕虫成績
区分
平均捕虫数/日(最多−最少)
炭酸ガス使用
166匹(376−53)
炭酸ガス無し
 91匹(172−48)

  全く同じ構造の捕虫器ですが,炭酸ガスを使用した物では一日当たりの捕虫数が,最多376匹,最少53匹,平均166匹でした。一方,炭酸ガスを使用しなかった物では,一日平均91匹で,ガスを使用した場合の55%の捕虫数となっています。
  捕虫数が最多となった要因はよく解りませんが,最少となったのはいずれも雨の日です。

6.捕虫器の問題点
  このアブ捕虫器は,比較的安価で簡単に作れ,非常に優れた捕虫能力をもっています。この捕虫器2台(1台は,ガス無し)と,私たちの試作器1台で,1週間に,2,200匹のアブを捕虫しました。このペースで捕虫を続けると,来年夏のアブの発生は大幅に減少するものと思われます。
  しかし,本捕虫器で捕獲できるのは,ほとんどが小型のアブ(フタスジアブの類)で,大型のウシアカアブはほとんど捕れません。
  ウシアカアブは,牛の背中を目指して飛来するため,構造的に本器では捕獲しにくいようです。
  このため,現在本捕虫器の改造タイプと,私たちの試作器を用いて,捕虫試験を行っているところです。
  吸血するのはアブの雌で,吸血は産卵のためです。
  したがって,吸血を放置すれば,ネズミ算式に増えるアブの被害を覚悟しなければなりません。まず本捕虫器の設置をお奨めします。
  アブにお困りの方は,是非一度畜産センターにおいでください。センターのアブ対策を見ていただき,一緒にあなたの牧場でのアブ対策を考えましょう。