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和牛子牛の保温と発育

岡山県総合畜産センター 木曽田 繁

(はじめに)
 これから,気温の低下に伴って子牛の損耗が危惧されます。子牛の損耗原因として,子牛を取り巻く環境が上げられます。
 外気温が零下に下がるような低温環境の下,子牛はその体温を維持するために多くのエネルギーを使うことになります。さらに,低温環境に加えて牛床の汚染(糞尿,飲水のこぼれ水等)や牛房(柱や柵,窓),牛体への結露はより一層子牛の体温を奪うことになります。
 子牛から奪われるエネルギーが増えることで子牛にストレスが加わり,やがて呼吸器や消火器の疾病が発生してきます。
 昔から「子牛の腹を冷やすな」と言われますが,まさに冬期間の子牛飼養のポイントを言い得ているといえます。畜産センターでは子牛を腹から温めるヒーターマット(以下マット)を用いて子牛の保温とその効果について調査を実施しましたので紹介します。
(子牛保温の効果)
 冬期間で最も子牛の損耗が多いとされるのは12月から2月にかけての厳冬期でこの期間に調査を行いました。
 生後間もない子牛を用いて次の二つのパターンで実施しました。

調査1:マット使用 (10日間)→ マット未使用(10日間)
調査2:マット未使用(10日間)→ マット使用 (10日間)

 両調査ともに分娩房内で親と同居のもと,子牛は自由に動くことができ,人為的にマットに座らせることはしませんでした。

結果1.子牛は自ら暖かい場所を求める。
 調査期間中1日4回(8時半,10時,13時,22時)子牛の行動を観察したところ,マット使用時は全観測の55%をマット上で過ごしていました(図1)。図は牛床を32等分して,子牛の位置を頻度で示しています。図中の色の濃い部分がマットの範囲で,一目でマット上に子牛がいることが見て取れます。子牛は自由に動いており,この分布の集中から子牛が自発的に暖かい場所を求める傾向が見られました。

結果2.子牛は乾いた場所で寝て過ごす。
 子牛の行動パターンはマット使用,未使用に関わらずほとんど同じで,観察回数の約6割は横になって休息していました(図2)。また,マット使用時は子牛が休息している場所の8割以上をマットが占めており(図3),子牛にとってマットの上が安心して休める場所になっていることが伺えました。
 マットはそれ自体が発熱しているため,濡れてもすぐに乾き,子牛の体が濡れることが少なく,子牛が一度マットで寝ると学習効果によりその後もマットで寝るようになりました。

結果3.マットによる保温は子牛の初期発育に有効 
 子牛の保温が発育にどう影響するかについて,開始時体重,入れ替え時体重,終了時体重について調べました。その結果,調査1では,初めのマット使用時の増体重は7.6s,その後のマット未使用時は6.8sとなり,マット使用時の増体重が上回りました。また,調査2においては最初がマット未使用で,期間増体重は4.7s,入れ替え後のマット使用時の期間増体重は5.5sで,やはりマット使用時の増体重が上回りました(図4)。両者のマット利用,未利用時をあわせると,マット利用時の期間日増体重は0.66s/日,未利用時の期間日増体重は0.57s/日となり,今回の試験ではマット利用時の発育が上回りました(図5)。

結果4.生後直後から使用することにより効果が大きくなる。
 調査1と調査2の期間を通した日増体重を比較すると,マット利用から始めた調査1では通算日増体重0.72s/日で,マット未利用から始めた調査2の通算日増体重0.51s/日よりも0.21s/日増体重が多く,マットの利用を生後より早く始めればそれだけ発育に効果があると考えられます(図6)。
 このことから,子牛が自分から座るのを待つのではなく,飼育者が介助し,出産後の子牛に速やかにマットを認識させることが必要と考えられます。

注意点:マットによる保温は適切な管理条件下において初めて効果があると言えるもので,衛生管理,フクチネーションと組み合わせての使用が大切です。マットを利用したからといって下痢や肺炎が防げるものではありません。あくまでもストレスを緩和する効果で,衛生管理を念頭においた利用が基本となります。