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〔特集〕

「安全・安心たまご」生産のためのサルモネラ対策

坂本産業株式会社 検査センター 上野 満弘

 食肉や鶏卵との係りが大きいサルモネラと云えば,エスイーの呼び名で通るSalmonella Enteritidis(以下SE)です。「速報菌等による食中毒等の発生状況」情報を見ると,相変わらずSEに関する事例が多く報告されています。
 ところで,私自身,ここ3年余にわたってSEを追っています。この度,表題の執筆機会を得ましたので,養鶏農場と養鶏施設におけるサルモネラ対策,特にSE対策の進めかたについて,ほんの概略程度ですが記述しました。
 SE対策を進めるためには,

 ・ まずは,飼育している鶏群や関連施設におけるSE存在の有無を知ること。
 ・ SE侵入を絶対に防ぐため,ヒナ餌付け時に,迅速なSE検査を行うこと。
 ・ SEフリーを続けるため,SE検査の継続と飼養環境の整備・改善に努めることです。

1.養鶏施設とSEの関係

  岡山県内の養鶏場でSEが存在することは家畜保健衛生所の調査で明らかになりました(1994年10月)。近県では1群が4万羽から10万羽の養鶏施設,6群の中4群からSEが確認されています(1995年3月家禽学会で報告)。だからSE対策を怠る事は出来ません。

2.実態調査の重要性

  SEが陰性であることが確認できれば,先々ともSEフリーに向けた取り組みができます。
  仮にSE陽性の場合は,条件さえ良ければSEのフリー化は可能です。清浄化に成功した事例は鶏病研究会報などに報告されています。

3.実態調査の進め方

  当所では,各鶏群や関連施設・機材,さらに直接鶏卵等について,1ヶ月約400検体のサルモネラ検査を行っています。
 1)サンプルは
   サンプルの収集に当たっては,出来るだけ多くの場所から,出来るだけ沢山のサンプルを採取するように努めています。
   特に重視してサンプリングする材料や場所は,
  (1) 初生ヒナ輸送に使用した輸送箱内の糞便,羽毛,埃。
  (2) 産卵期は50%産卵到達の時点。また絶食処理をした鶏群は,給餌再開から約60日経過した頃の,いずれも盲腸便と通路の埃と破損鶏卵の中身。
  (3) GPセンターでは,破損鶏卵の中身,原料卵と卵輸送コンテナーの洗浄水。
 2)サンプリングは
   主には,鶏病研究会専門委員会が示した検査法に準拠していますが,牽引スワブ法(DS)とヒナ輸送箱内の糞便,羽毛の採取では改良した方法で,より確実・正確なサンプリングが出来るよう工夫をしています。
  (1) DS法では,牽引材に直径5〜7oのめだけ(笹竹の1種で山野に自生)を80pの長さで切り,このめだけの先へ,長さ30pのステンレス針金(15番手程度)を5,6回巻き付け,残った針金の一端は5pの部分で折り曲げて,曲げた部分にガーゼパッド(10×20p)を引っかけて,目的の通路や集卵用ベルトを牽引・採材します。
    この方法では,短時間に広い範囲のサンプルを集めることが出来ます。
  (2) ヒナ輸送箱の糞便は乾燥しているため,敷料は予め減菌生理食塩水を噴霧し,湿らせてから採材します。
    採材する箱数は,1銘柄のヒナ当り15〜30箱から採材して,SE検出の確率を高めます。

 3)SEの検査
   当所では細菌学的検査を中心に,迅速・正確を心がけた検査を実行しています。
   特に,餌付けしたヒナは,一刻も早い結果が得られるよう努めています。
  (1) 仮にSE疑いのヒナがいたとすれば,
   @ 菌分離と凝集反応などの確認検査を55時間以内で完了させます。
   A すなわち,火曜日午前中に餌付けしたヒナ群は,木曜日の夕方にはSE有無の判定をします。
  (2) さらに,正確な判断を行うために,
   @ 遅延2次増菌培養を行います。
   A 分離培地には,DHL寒天培地,MLCB寒天培地,BGN寒天培地等のうち2種類以上の培地を使います。
 4)SEの判定作業を急ぐ理由
   鶏へのSE侵入源は高い確率でヒナに由来しています。SE保菌ヒナを入雛してしまうと,数日にして多くのヒナがSEに感染します。SEに対するヒナの感受性は高いのです。
   このようなヒナ群は,将来にわたって糞便や鶏卵を通してSEを排菌するため,早めに殺処分をすることが肝要です。入雛から殺処分までの時間は短いほど,SEの他へ及ぼす影響を少なくすることができます。

4.SEの侵入源
  SEの侵入源がヒナ以外にあるとすれば,ネズミはその対象になります。ネズミの行動範囲は5qにも及ぶそうです。この範囲内に他の養鶏施設があれば,SE感染の危険性がない訳ではありません。ネズミ駆除の徹底はSE以外の疾病防除にも貢献します。

5.SEフリーを続けるために
  養鶏農場の段階でSEが陰性であれば,ここで生産された鶏卵は当然SE陰性です。
  この状態を維持するためには,
 ・入雛ごとに迅速なSE検査を完了する。
 ・SEの実態調査を継続して行う。
 ・育成期,産卵期いずれもオールイン・オールアウト方式を実行する。
 ・さらに安全性を求めるなら,オリゴ糖,あるいは有機酸等を飼料へ添加する。
 ・強制休産はSE陰性の鶏群だけ採用する。

 海外の例では,上記対策だけでは,もはや間に合わない国があるようです。しかし,少なくとも岡山県内で生産される鶏卵については,上記5の項目等を採用することで「岡山産SEフリーの安全・安心たまご」が生産できると確信しています。
 書き足りないことも多々あるかと思いますが以上です。ご指導,ご意見等いただければ幸いです。

  Tel&Fax:0865-65-3922