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「今後の肉豚出荷動向と肉豚価格安定対策について」

岡山県農林水産部畜産課

1 はじめに

  最近の養豚界は,昨年からの豚価低迷で地域肉豚生産安定基金造成事業による補填金の交付,豚コレラ撲滅対策に係る互助制度の創設,食肉小売品質基準に規定する「黒豚」定義の明確化,「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」など環境三法の成立等,生産から流通までを通して変革の時期をむかえています。
  特に,環境三法の成立は,ふん尿処理について畜産農家の責任が明確化されたことから,経営の継続を行う上で益々重要な課題といえるでしょう。

  また,豚肉の輸入状況を見てみますと,韓国産が近年急増していますが,韓国は国策として日本をターゲットに豚肉輸出に取り組んでおり,我が国と比較して生産コストや現地価格が安いこと,輸送期間が短いことなどを考えると,国内生産にとって脅威となることが予想されます。
  豚コレラ汚染国である韓国は,我が国の豚コレラ対策に高い関心を示し,同様な撲滅対策を強力に推進しており,日本がいかに早く豚コレラフリー宣言ができるかが養豚経営上大きな意味を持つことになります。

2 肉豚の生産出荷状況

  豚肉の輸入量と同様に豚価に大きく影響する国内の出荷状況についてですが,国内生産をみると,猛暑の影響で夏期の出荷は減少しましたが秋以降は前年同月比99〜101%前後で推移するとの見通しがおおかたで,また例年通り出荷が増加する時期でもあり,卸売価格は昨年並みで推移することが予想されます。

 

 豚肉の持つ栄養価の再評価等により消費量は微増しているものの,牛肉の消費回復などから,今後豚価高値での安定は期待できない状況にあります。
  いずれにしても,消費の低迷や輸入量の増加等厳しい状況のなかで,経営の安定を図るためには,高品質な肉豚の安定性産とコスト削減が生産者の大きな課題ではないでしょうか。

3 肉豚の価格安定対策事業

  地域肉豚生産安定基金造成事業(全国事業)は岡山県では6岡山県肉畜価格安定基金協会が事業主体として取り組んでおり,従来県の単独事業として実施されてきた肉豚価格安定事業(県事業)に対して,農畜産業振興事業団の助成がなされているものです。

  これは豚価が安定基金発動基準価格を下回り,かつ県事業での生産者積立金が不足した場合に,全国事業の安定基金から補填金交付の資金を供給するもので,既存の県事業を補完する仕組みとなっております。
  全国事業は平成7年度から始まりましたが,平成9年度末までの3年間は豚価が高騰したことから基金の発動は全くありませんでした。
  しかし,昨年度末の価格低落で初めての発動があり,本事業の重要性と必要性を再認識する格好になりました。
  本年度の県事業については5月に発動がありましたが,出荷動向も例年並と予想され,特に物価上昇の要因も考えられないことから,年明けには生産者積立金の不足が予測され,全国基金から補填金が交付されることも十分に考えられるなど,今後とも楽観を許さない状況にあります。

  全国事業は,各都道府県での補填金の交付についての条件がまちまちなこともあり,現在国において事業の見直しのための検討がなされています。
  県事業と全国事業は連動していることが望ましく,県内養豚農家の経営安定に直結した効果的な事業になるよう,国に対して発動基準価格の引き上げや,1頭当たり基金助成単価の増額を強く要望していきたいと考えております。

4 おわりに

  養豚経営については,関税率の引き下げによる輸入量の増大や価格の低迷が予測されるなか,生産性の高い企業的経営を育成するため,県としては優良種豚の導入による肉質の向上と斉一化をはじめ,人工受精の普及定着や省力的な飼育管理等による低コスト生産,適切なふん尿処理利用,さらには「おかやま黒豚」の産地化と銘柄確立等の推進に努めて参りたいと考えておりますので,生産者をはじめ関係者の皆様の一層のご理解をお願いいたします。