家畜診療日誌

真庭家畜診療所 次長 山本 幹男

 今年の残暑は記録的でこの文を寄稿した十月上旬でも真夏日が続いている状態です。この駄文を読んで戴いている頃は初冬で膚寒く暑さのことを書いて何で今さらと思われるに違いありません。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という諺があります。冬が来て寒くなると,人にとっても牛にとってもつらかった夏の熱さを忘れてしまうのです。しかしながら夏の暑熱温度が牛にとって最も重大なストレスを与えていると私は考えています。初冬の今,夏の暑さについて再度考えて戴き来年の教訓として,事故を少しでも減らしていかなければ経営の安定につながらないと思います。
 気温の変化が及ぼす影響が,今年の夏の死廃事故頭数に端的に表れています。7月までの梅雨の頃は,朝夕の気温が低く過ごし易い状態で,梅雨が異常に長かった平成10年より死廃事故頭数が200頭以上,県下で少なかったのです。しかし,8月の気温の上昇,9月,10月の記録的な残暑の為事故頭数が急増しております。また,農業共済新聞の記事によると,今年の夏は東北・北海道で気温が極めて高いことによる熱射病の死廃事故が非常に多かったと報告していました。私も北海道に牛の買いつけに行った業者に情報を聞くと,真新しい扇風機が何台も回っており急場を凌いでいるとのことでした。その扇風機も品切れで暑熱対策を持たない冷涼地域ではこの異常気象になすすべがない状態です。しかし,気温・湿度の変化は自然現象であるといっても,何ら対応せず,手をこまねいている訳にもいきません。毎年訪れる変化に富んだ夏に対策を講じて対処していかなければなりません。特にホルスタイン種は暑さに弱く熱射病を多発します。直腸温が39.5℃をこえると心拍数と呼吸数の増加,流涎が臨床症状として現れます。最初落ち着かなくなり,やがて動作が緩慢となり歩くとよろめき,そして伏臥しがちになります。体温が41℃に達すると,用力呼吸となり全身疲労が明らかになります。この体温をこすと,呼吸は浅く不規則となり頻脈となります。41.5〜42.5℃になるとほとんどの動物が斃死します。残暑の頃廃用となる牛を見ると,熱射病は軽症ですが肺充血となっており,呼吸困難なため食欲回復せず,徐々に削痩していく例が多くみられます。また四肢端の腫脹,飛節周囲炎を発症し,起立困難,起立不能へ移行するものも少なくないと思います。
 冷夏であっても猛暑の夏であっても夏に変わりなく,例年このような症状を発現させ多くの乳用牛が死廃事故となっています。今年家畜診療所では県下の酪農家に「暑熱対策をしよう!」というリーフレットを配布しました。従来から言われている牛体または畜舎への暑熱対策を箇条書きにしております。畜舎面からは牛舎に熱を溜めないようにするには?体に熱をつくらないようにするには?というようなことを簡単に書いておりますので,今一度読んで戴き来年の夏に備えていただきたいと思います。