ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和24年11月

レッドクロバーの知識

藤井技師

1.飼料作物の重要性

  濃厚飼料の需供は極めて困難である現在において,粗飼料の増産利用が畜産増殖の基となり中でも野草を栄養価の高い牧草に置き換えこれを豊富に供給するところに重要なる意義がある。従来我が国の野草は殆ど改良されていないので,畦畔,堤塘,山裾,その他未利用地を利用して牧草の増産を計るのであるが,禾本科のものはその手入が,比較的容易であり,飼料事情からして特に豆科の牧草の増産利用が必要である。この意味からレッドクロバーは最も好適なものである。

2.組成について

  レッドクロバーは豆科に屬する半永年性の牧草でその乾草組成は次の通りである。 

  水分 灰分 粗蛋白質 粗脂肪 粗繊維 可溶無窒素
レッドクロバー 9.12 6.97 15.04 3.22 24.77 40.89
生米糠 12.00 8.00 15.00 18.00 7.00 40.00

  上の如くレッドクロバーは蛋白質において生米糠にひってきするものにて最も優良な牧草である。

3.栽培法

 1.適地

   適度に湿気をもつ比較的肥沃な土地であって砂質に過ぎない所が最も良く,又本牧草は酸性を特に嫌う植物であるので,酸度が5.8−6.5位が最適である。酸性の高い所は石灰を施用して中和すること。此の場合反当1俵乃至1俵半程度施用すれば大抵中和出来るようである。

 2.整地

   播種しようとする場所を全面雑草を短く刈る。次で播種の場所を鍬巾に耕し雑草を除去する。播種10日−2週間前に石灰を施用して酸度の適正化を図る。播種前に出来ない時は,播種時に石灰を施用する事なく発芽後2週間経って施用する方が良い。

 3.播種

   適期は9月下旬の彼岸前後が最も良く,春播とする時は春の彼岸前後即ち3月下旬である。豆科植物であるから根瘤菌を接種して播種すれば極めて好成績である。
   種子は極めて小さいものであるからそのまま播種すれば厚播となるので約同量の砂と混ぜて播種するがよい。   
   播種量は反当5合が適当である。厚播となると発芽後の成績が面白くない。播種後は軽く覆土をなす。

 4.発芽

   播種後3−4日にて降雨あることが最も良い。大体6日位にて発芽する。

 5.肥培

   翌年1月及び2月に施肥を行う。1月は稀釈した牛尿を2月には腐熟廁肥を施せば申分ない。
   レッドクロバーは耕地に栽培しないので草と言う観念で管理を怠り易いがこれは作物であってどこまでも栽培するものであるという考えで取扱うことが最も必要である。

 6.収穫

   レッドクロバーはよく育成すれば3尺程度となり普通でも2尺以上になり良く繁茂する。
   播種の翌年は年2回収穫する。刈取適期は開花期が最も良い。刈取る場合あまり根元から刈取らずに2−3寸を残して刈る。あまり下から刈取ると枯死することが多い。3年目からは年3回収穫することが出来る。収量は反当1,200貫以上に達する。刈取ったものは生草,乾草,エンシレージとして給与することが好適である。