ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和24年11月

カナリヤ往来

光を浴びて歌う
カナリヤの昨今

藤井技師

 歌を忘れたカナリヤでなく,カナリヤの歌に目を覚し,この歌に和し楽しく朝食をすまし,今日1日の仕事につく,楽しい爽やかな気分を皆んなで味わいましょう。
 此のカナリヤについては,戦前日よりアメリカに40,000〜50,000万羽輸出されていました。そのうち本県が約10,000羽を供給していましたが,戦争の勃発と共に輸出も途絶え,加えて飼料難と共にカナリヤ飼育者も心ならずもカナリヤを手離してしまい,終戦直後は本県には約1,000千羽の極少数となりましたが,熱心なるカナリヤ愛好者の努力により,漸く本年度に,於いて約50羽となりました。そのうち約1,000羽が来る10月末からパン・アメリカン航空会社の輸送機でニューヨークへ出発するはずです。こうして,カナリヤは趣味に始まり副業として輸出鳥を生産することの出来るもっとも好適なものではないでしょうか。
 では副業としてのカナリヤ飼育について一筆致しますと,
 先ず種鳥,一番現在3,000乃至5,000円位にて入手出来ます。一番の種鳥より年間5〜10羽の仔鳥を取ることが出来て,そのうち雄は(1羽当本年度は2ドル50セントにて輸出される事になっております)輸出鳥としてはるばる太平洋を越えてアメリカへお嫁入りすることが出来ます。アメリカは年500,000羽は引受けるそうです。ちなみに今年の日本の契約羽数は僅かに30,000羽位ですが,これはカナリヤの実羽数がありませんので到底契約を遂行することが不可能なのではないかと存じます。
 尚雌鳥は国内向として1羽当り1,500円乃至〜3,000円位にて取引されておりますので,今後相当羽数が増加するも輸出事情は益々好転して,過剰生産となって困る事は当分ないと思います。
 又飼育については,他の煉餌の小鳥と異なり,粟,稗,ナタネ等を粒餌にて飼育するので大変便利です。
 右の諸事情を総合すると趣味と副業を合わせて気楽に出来るものとして農家の皆様におすすめ致します。