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岡山種畜場移転の計画と現況

 戦後農業施営の改善と立体農業への移行を提唱され,その経営組織に於ける1要素としてこの畜産は,大きく取り上げられ,酪農経営と水田地帯との結びつき,果樹園と養鶏,酪農との結びつきや又桑園と畜産との共同経営,山間部への酪農の進出等に対する問題が喧しく検討されるようになったのである。種畜場の経営も従来通りの種畜種禽の配付,種付や試験研究のみではなく,その全能力を発揮して従来の業務を更に拡充し,経済農場的色彩を付与し,経営の部面に於ても更に進んだ研究を行う為,永年の懸案であった移転をこの際一気に実施することになり,御津郡牧石村三軒屋の地をとし,その工事を開始したのである。
 今回の移転地は岡山市に隣接し,その用地の一部は市内に有り,半田山と三野公園の間を北に入った谷で,旧陸軍東射的場のあった処で面積約93町歩(山林約55町歩,宅地約6町歩,雑地約21町歩,道路約6町歩,池約5町歩)建物約3,400坪でありましてその他に国有林を約50町歩借り受けることになって居る。
 移転後の経営の照準は大体次の様な処に置いている。

1.従来の種畜場の業務内容を拡充強化し,飼養基礎家畜は大体次の通りとする。

  乳用種牡牛  2頭
  和種々牡牛  2頭
  乳用種牝牛  20頭
  種 牡 豚  2頭
  種 牝 豚  20頭
  種   鶏  800羽
  検 定 鶏  150羽
  種   雛 100羽

2.畜産を主体とした農業経営の在り方を研究する。

3.畜産指導者並びに有畜農業経営(特に酪農に中心を置き)中心人物の養成に画期的な努力を注ぐ。

4.場に経済農場的的彩を濃くし,酪農,養鶏,養豚,加工等関係部門を活発に働かし場の経営的県費を最少限度に止める。

5.我が国農業の将来性に鑑み,水田酪農の経営,果樹園と畜産,養蚕と畜産との結合等につき実地研究を進める。

6.将来の山地と酪農経営との結合を研究する為,飼料木の植栽と利用の実地研究を進める。
(イ)山地の利用としては松喰虫被害の跡地の植林と畜産との結合の研究
(ロ)林間放牧の研究
(ハ)飼料樹草の増殖並改良の研究
(ニ)肥料木の植栽と草生改良の研究等を行う

7.食生活の改善に大なる関係のある,畜産加工,貯蔵等の研究をして農家の生活に直結した場とする。

8.場内の池沼,水田を利用し淡水魚を養殖し,水禽類等の研究を行う。

9.旧弾薬倉庫を利用しキュアリングによる甘藷の貯蔵を行う。

10.建物は畜舎,加工場,宿舎講堂,事務所その他に改造全部使用する。
  この計画により1ヶ年間の種畜種禽として

   種牡牛  6頭
   種牝牛  8頭
   種 豚  135頭(他に廃豚50頭)
   種 卵  52,000個(他に廃卵18,000個)
   種 雛  35,000羽

  この他牛乳,乳製品,肉製品等を払い下げる予定である。大略以上の様な計画により目下工事を進行中であって,乳牛舎,種牡牛舎,事務所,官舎の大部分,人工受精室,講堂等は殆んど完成し,一部は使用して居り,産室,育成牛舎,豚舎,鶏舎等主なる建物は10月中には完成の予定であるし,その他の建物も年内には完成させたいものと思って居る。
  耕地の方も本年2月より開墾を開始し,9月中には約4町歩位作付が出来る予定で進んで居る。その他場内の草生改良,土塁の取除き,果樹園,桑園の開墾等着々進行中であり,11月1日よりは鶏の産卵能力検定を新鶏舎で開始する予定である。
  以上大略乍ら事業の計画と工事の現況を御報告して皆様の御後援をお願い致す次第である。
(岡山種畜場より)