ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和24年11月

かね

 「かね」と言えば金があり,鐘がある。前者には「金づまり」が当今の代名詞であるかのように深刻なひびきを持つ,後者には昔から春には「花ぐもり鐘は上野か浅草か」秋ともなれば「柿食えば鐘が鳴る鳴る法隆寺」と詩句の題材となり平和の象徴ともなっている。又聞く人により場所により或いは時期によって哀愁郷愁の音ともなり森厳な法悦を呼び起し或いは時代覚醒の暁鐘ともなる。
 筆者ここにかかげる「かね」の題意は後者にある。因習と旧慣から未だ抜け切れない人には「われがね」の如く目覚めぬ人には目覚しの如く,鐘はなり,正しく強く,いみじくもゆかしい人には余いんハーモニーしてメロデーとして鳴らんと思えども果してペンこの意に及ぶかは些さか疑わしい。