ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和24年12月

岡山県へ赴任して

畜産課長 惣津律士

 今般図らずも当県畜産課へ御厄介になる事となりました。私はずっと農林省関係の畜産奨励にたずさわって参りましたために,地方の畜産行政は極めて初歩でありますし,押野前課長はもとより諸先輩の偉大なる業績を承継するにはあまりに浅学非才でありますが畜産農民各位の御努力によりきずき上げられた全国随一を誇る本県畜産の伝統を各位と共に熱と力に満ちた心からの親和によって更に一段と光輝あるものにして行きたい念願に燃えていますので,何分の御協力を切望する次第であります。
 本県は私の熱愛する郷土であります。私はここで働かして戴くことについて何人にも負けない感激にひたっておりますし,又終生の仕事としてなしとげたい熱意を持っております。併し何と申しましても本県の畜産の実情に極めてうといのでありますので,各位の正しい御意見を充分に拝聴して施策して行きたいと存じております。
 御承知の如く畜産は戦後農業進展に着々と実力を発揮して参りました。そして畜産の持ち味が一般に強く認識されて参ったことは喜ばしい限りでありますが,決して未だ充分とはいえません。
 と角,畜産は畜産,農事は農事という風にこまかくかたまる傾向がありますのは,ある意味では結構であって,それが技術の発達をもたらした例は少なくないのでありますが,私共は視野はどこまでも広く持って,日本農業更に産業の躍進へ真に貢献するという理想を保持して行きたいものと常に考えております。
 世相の変革に伴い本県畜産界にも相当苦難の道があるものと考えられますが,どこまでもお互いに誠心誠意に溢れた明朗なる融和によって突破したく各位の一段の奮起を願うものであります。
 いずれ各位に親しく御拝眉の栄を得る機会があるものと思われますが,取りあえず紙上をかりて一言御挨拶申し上げます。