ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和24年12月

さ迷う種鶏

KO生

●現在本県に於ける県指定種鶏場は約500戸,種鶏飼養羽数約5万羽であって,本年県指定を受けようとする申請者を含めると,その羽数は,8万数千羽となり飼養戸数は実に7百数10戸となる。

●この養鶏界の地方自治組織とも言うべき種鶏組合は,20数ヶ組合から成り,更に地方に於ける種鶏改良等の中核をなす扇の要的重要な役割を受け持つ孵卵場は,大小合わせて現在20数ヶ場あり,それが逐次増加の一途を辿る傾向にある。

●以上が本県養鶏界の概況であるが,凡ての基盤となる地方組織,即ち種鶏組合の動揺が目立って来たことはまことに憂慮すべき事である。

●最近数組合が分裂した。色々の事情もあることと思われるが,経営の合理化を叫ばれている今日,地方組織の分裂は時代に逆行し,何と考えても遺憾に思われる。

●勿論組合の分裂に依って地方組織の弱体化を意味するとの断定は早計であるが,組合が小さくなった事は断言出来よう。問題は組合員個々の自主性と批判力と,将来に対する大局的な活眼である,それが鶏に対する愛情である。

●自主性と批判力の無い軽率な雷同に依って「気の合う者は気の合う者同志で」と言う甘い単純な感情で,組合を組織すべきものではない。何故なら,こう言った組織に対しては常に策動的意企を持った指導者(?)がつけ入らんとしている現況なのである。「雷同」はその好個の条件であるからである。

●太平洋沿岸と地中海沿岸は世界での地シン地帯である。この小さい島国日本に於ても絶えず何処かで地シンがいっている。岡山県もその圏内にあるが,養鶏界も御多聞に洩れず絶えずゴタゴタ揺れている。さすがは地シンの国日本の何10分の1の岡山県だけあって,「また揺れている」の感無きにしもあらず。

●種鶏羽数の8万数千羽,飼養戸数の7百数10戸は,驚くべき数字ではないが,前述の現状に於ては,やっかいな数字である。
 昨日の友は,今日の敵−と言う甘いセンチな感情が本県に底流する限り……もっともこれは日本人共通の心理かも知れないが……。