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和牛登録の将来に就いて

英田郡 松本 結

 予備登録本登録と漸く畜産農民に馴染まれてきた和牛登録規程が改正されんとしている。先般広島県東條町に於て全国和牛登録協会主催のもとに黒毛和種の登録規程改正に就いての公聴会が開催された。
 羽部義孝博士の御意見では「大正8年以来実施してきた和牛の登録なるものは固定種を造成しようとする形式であって近年の如く予備登録牛本登録牛が多数に存在する状態となり一応ホモチゴシチイに到達した以上その個体の繁殖成績によってそれ自身の因子型を確めると共にその優良なる形質能力を改善普及してゆく方途を採用した登録組織に突入してゆくべきである」と言うのである。
 人は絶えず何か一つの目標希望を持たなければならない。希望なり夢のあるところに人生の意義があり社会の進歩があるのだと吾人は考える,現在本登録牛が相当に出現してきたが之れ等の牛を飼っている人達は次の目標を望んでいるであろうし亦より以上の目標を樹てることが和牛改良上必要であると信ずるが故に和牛登録規程の改正に吾人は賛成する。然し乍ら今回登録協会より提示された改正案には賛成し兼ねる。
 和牛登録協会より提示された改正案によると従来の予備登録をなくして唯だ単に登録ということにしてしまって其の中から次の4つの条件を具備しているものに対して高等登録を行うと言うのである。

一.審査得点数77点以上で乳徴肢蹄歩様の各得点率7割7分以上のもの。
二.その父母共に77点以上の登録であるもの。
三.蕃殖成績良好で牝にありては仔に77点以上のもの2頭以上,牡にありては其の仔に77点以上のもの10頭以上を有するもの。
四.高等登録審査の際77点以上得点したもの。

 一の条項は従来の本登録採点と同数であり乳徴肢蹄歩様に特に重点をおいて採点をするというのであるから格別難しい事ではない。
 二の条項は父母共に77点以上であるものと言うのであるから従来の予備登録牛の中にも之れに該当する牛がある筈であるから範囲は拡大されてくることになる。
 問題は三の条項で牝にありては仔が2頭以上夫々77点以上のものが生産されなければならないことである。勿論優秀なる仔を次々に生産する牛でなければ高等登録としての価値はないものと思われる,処が実際問題として仔が検査を受け得る日数は少なくとも生後18ヶ月即ち1ヶ年半2番目の仔が牡だったときは(特産地とされる地方の牡犢は特別だが)一般生産地に於てはどんどん売却処分されるからその成育の成績を見ることは出来ないし3番目が幸にして牝であった際18ヶ月育成し77点以上の点数を獲得して親が高等登録に合格するとすれば順調に行って6歳(74ヶ月)に成って初めて合格することになる。
 そうすると親が高等登録になる迄の仔は一般登録の牛の仔として犢登記を受け高等登録の仔として犢登記を受け得るのは4番目の仔からでないと受けられないことになる。
 尚亦た牛は経済的動物であるから高く評価をされた方へ流れてゆく事は当然であって如何に優秀だから地方に止め度いと思っても経済がゆるさねば他県の登録の必要でない地方へでも流れてゆくのである。
 折角優秀なる仔を産む優良なる牛も永久に高等登録にはなり得ない事になるのではなかろうか?もっとも特産地のみに少数に高等登録を造成する考えならそれでも良かろうが将来この高等登録を以って和牛の完成と考えようとするなら,之の選択方法は発展しないことを附言して置き度い。私は此処に別案を提出して県下の畜産農民諸氏の御批判を願う生産犢の成績を見て初めて合格せしめることを変えて祖父母が何れも77点以上のものの仔が成育して77点以上の得点を得た場合之れを高等登録に合格せしめるというのである。

註 畜産課 係より

 本意見は松本氏個人の意見であって県当局の一致した意向ではないことを御ことわりしておき度い。然し登録の問題は重要であり各方面からどしどし此の様な御意見を述べて頂き度い。