ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年1月

牛の結核をなくすには!

 脳炎と並んで最も人間に密接な関係がありしかも恐れられている病気は,結核病であろう。最近の多角経営化に相まって酪農熱が高まり農業経営の合理化をしつつある。従って,乳牛の頭数も増加の一途にある。然しこれに逆行して牛の結核は一向低下することなく増加の傾向がある。結核の病性からして最近人の結核と牛の結核との関に関連性のある点が非常にやかましく叫ばれ特に牛の結核検査が厳重に行われるようになった。そして検査方法も従前より変って皮内反応法を応用して厳重に昨年実施している。
 この検査の結果陽性及凝陽性に決定されたものは夫々厳重な隔離の下に陽性のものは早急に殺処分即ち淘汰し,これには国より最高12,000円の賠償金が交付される。(但し在庁家畜防疫委員の指揮によるものに限る。)
 殺処分による屠肉は精密なる,屠畜検査員の検査の結果合格したものは市販肉として食用肉に販売され,不合格のものは廃棄処分となる。
 この検査は食用として弊害の有無により合否が決定される。擬陽性のものは最低60日以上の後に再度検査して,陽性,擬陽性,陰性の区分により診定する。陽性及擬陽性に診定されたものは前述の方法により処置される。
 かくして人の世界は勿論,牛の世界から肺病なる結核を駈逐しようと人間に於ける結核予防に併行して国又県に於ても牛の結核検査に大いに力を入れて病牛絶滅に邁進しているのであります故,結核検査該当牛を御持ちの方は進んで受検され国家的結核撲滅方針に御協力を御願いする。
 昭和24年度に於ける検査は25年1月頃より県下一斉に実施する予定であるから,進んで受検されるようお願いする。なお乳牛,種牡牛及びこれと同一構内で繁養している牛は受検義務が法律で負わされているから御注意願いたい。
 予防,治療的の面から言えばこのように検査が厳重に行われるわけは,予防治療共に適切なる方法がないため病牛淘汰により伝染源を絶滅する方法を採用しているのである。各畜主の方はこの点をよく理解されて御互いの貴重な乳牛の健康保持の為に御協力をお願いする。
 又療法も各方面に於て種々研究されているが,適切なるものなく伝染防止及栄養による強健化が現在では唯一の方法である。そこで再び繰返すが前述の検査及淘汰が予防的方法として絶対必要な為法律で定められているわけである。
 恐しい例として一例をあげると或る牛乳屋で1頭の病牛がもとで翌年には3頭となり翌々年には7頭繁養の乳牛が全部病牛となり全滅した例もあり病源の淘汰が遅いと如何に恐しいものであるかは論をまたないのである。
 以上駄文をろうしたが,伝染力旺盛にして予防,治療共に適確なものがなくしかも人間に迄類を及ぼす牛の結核を駆逐するため畜主の方の御協力を望んで止まない。